臨床試験デザインにおける課題|【統計学・統計解析講義応用】
臨床試験デザインにおける課題
試験実施者が臨床試験のために臨床試験デザインを選択して対照群をデザインすることで対処しなければならない課題の概要を述べることであった.
それらの課題の最も基本的なことは,対処すべき試験の課題に関して,その試験固有の目的を注意深く検討することである.
有効であると考えられる新しい治療法あるいは介入の要素を理解すること,特に興味のあるアウトカムを特定すること,およびその試験がその分野の既存の知識体系のコンテクストにどのように適合するかを注意深く検討することが臨床研究デザインとエビデンスに基づく調査研究の基本要素である.
ランダム化における課題
まず.ランダム割付(random allocation)の意味するところを考察する. Altmanは有益な定義を示した.
「ランダム割付によって.それぞれの治療が実施される間に,個々の患者は既知の可能性(chance)通常等しい可能性を持っているが,与えられる治療を予測することはできない.」被験者を異なる治療群へ割付けるための適切なランダム化の手順を用いることによって,ベースラインで比較可能な被験者の試験群をつくる.登録被験者の数が増加するにつれて,試験群間の重要な被験者特性に関して大きな系統的な違いを得る可能性が減少する.
比較可能な試験群間によって,適切に実施された臨床試験の終了時の結果(アウトカム)の違いを治療効果の差として見出せる.
ランダム化の考え方は,可能性と確率の我々の直観的な考え方と一致するが.無計画や恣意的な割付とは異なる.
最も簡単で,一般的なランダム化された試験デザインは,2群比較試験で,半分の被験者がランダム割付によって試験治療を受け,残り半分の被験者が対照治療群(一般的には標準治療またはプラセボ)に割付ける.
したがって,すべての被験者は,どちらかの治療群に割付けられる等しい機会がある.
典型的なクロスオーバー試験において,被験者はすべての治療を受ける.
そして被験者が治療を受ける順序を決めるためにランダム化は用いられる.
ランダム化された治療割付の倫理の基礎となる基本的原則は均衡(equipoise)をとることである.
理にかなった臨床的,および科学的不確実性(uncertainty)は,研究中の治療の相対的な効果について存在しなければならない.
ランダム化の重要性
ランダム化は臨床試験の基盤である.
少なくとも2つの主要な利点を提供する.
第一に,研究者が,意図的または無意識的に系統的な方法で相互に異なる被験者群をつくることを防ぐ.
第二に,試験群を結果と関連した既知の,または未知のベースライン特性に関して比較できる傾向がある.
異なる試験群に被験者をランダムに割付ける重要な理由は,治療割付のバイアス(bias)をなくすことにある.
バイアスは.善意の(well-meaning)研究者によって非ランダム化治療割付によって容易にもたらされることがある.
例えば,彼らが次の治療割付が対照でなく先進的な治療と知っている.
または考えているならば,その治療の群に脆弱な患者を登録する.
これは選択バイアス(selection bias)である.
患者がランダム化試験の1つ以上の治療群に割付けることができないか,または不本意なとき,(自己)選択バイアス((self)-selection bias)のもう一つ形態が起こる.
うまくデザインされた試験では,そのような患者は,系統的に適用された組み入れ/除外基準(inclusion/exclusion criteria)に基づいてランダム化する前に除外される.
ランダム化は,どんな治療が,試験被験者に与えられたかの情報を被験者本人および試験スタッフに隠した状態を保持するマスキング手順の重要部分(vital part)である.
治療割付を隠蔽するこの行為は,一般に治療のマスキング(masking).または試験の研究者および被験者を盲検化する(blinding)と呼ばれている.
研究者がどんな治療を受けているか知っているならば,彼らは新しい治療を受けている被験者に効果があると無意識のうちに考えがちである,
評価におけるこの種類の主観性は,研究者バイアス(investigator bias)と呼ばれる.
患者反応バイアス(patient response bias)は,被験者が「実薬治療active treatment」を受けていることを知っているという理由によって,治療に反応する可能性がある場合を述べる用語である.
うつ病の治療を評価する試験における状態改善のような主観的評価基準をもつ治験では,特にこの種のバイアスが起こりやすい.
ランダム化しなかったり,対照群(control group)または比較群(comparison group)なしでは.我々はこれらの潜在性バイアス(potential bias)を真実の治療効果と誤って評価するかもしれない.
最適には,研究は二重盲検(double・blinded)化されるべきである.
すなわち.研究者も被験者も,どの被験者がどの治療を受けたかについて知らないことである.
治療割付をマスキングすることにより,試験結果への研究者バイアスおよび患者反応バイアスを防ぐ.
ランダム治療割付はまた,治療群での主要な被験者背景のベースラインにおける違いがただ偶然で起こることを確かめる方法である,
にもかかわらず,ランダム化を用いたとしても,ベースラインの差は偶然に起こることは確かにありうる.
例えば. University Group Diabetes Program (UGDP,糖尿病研究大学グループ)による研究の解析は疑問視された.
なぜなら,ベースラインの心血管疾患(CVD)の有病率が,他に比べて1つの治療群で高かったからである.
治療割付よりもむしろ心血管疾患の高いベースライン有病率が,その治療群においてフォローアップ期間に心血管イベントの発生率を増加させたと説明できると批評家は議論した.
感知できるほどの不均衡(imbalance)は被験者数の増加によって減少する.
そして事実.ランダム化による確率論はそのような不均衡が起こる確率を計算することができる.
ランダムに割り付けられた群における観察されたベースラインの違いは(例えば,回帰モデルで共変量を用いることによって)しばしば調整できる.
したがって,研究者が,被験者のアウトカムに重要であると考えているベースラインの特徴に関するデータを収集することが重要である.
研究者は,要因を観察しないか,観察不可能なとき,治療効果に影響を与える要因のベースラインの違いを調整することはできない.
ランダム割付は,既知の交絡因子(confounder,すなわち,治療に影響されない結果と関連すると知られているベースラインの特徴)に関してだけではなく,未知の交絡因子についても,試験群の比較可能性(それは保証するものではないが)を増大させるのに役立っている.
例えば,今から20年間,我々は主要な結果に関連する遺伝子を見つけるかもしれない.
遺伝子がまだ発見されていなかったという事実によって,遺伝子の存在に関して2つの試験群のバランスをとるランダム化の厳然たる傾向をとめることはできない.
ランダム化はまた,ベースライン構成に関して特定の統計的特性を試験群に与える.
これは,ある種の有意性検定および不確実性の評価のための統計学的な基礎を提供する.
事実,治療は全く効果がないという帰無仮説を検定することは,被験者は治療群にランダム割付されたことに基づいて簡単に行うことができる.
適切なランダム化は,試験群間における統計的な有意差は外的要因よりむしろ実際の治療効果によるものであると導くことができる.
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