エビデンスに関する情報の使用・作成・発信|【統計学・統計解析講義応用】
エビデンスに関する情報の使用
収集した情報は、生活用品・衛生用品の販売、一般用医薬品の販売、健康食品等に関する相談、処方箋の監査・疑義照会・服薬指導、生活指導、薬歴作成など、全ての場面において使用する可能性があります。
その中で、どの程度の信頼性がある情報なのか、あるいか、どの程度不特定多数に応用できる情報なのかを判断しなければ誤った判断をしてしまう危険性があります。
その代表的な例が健康食品などに関する使用者の個人的な感想です。
健康食品のインターネット販売を行っているWebサイトの中には、「常勤の薬剤師スタッフがおり、スタッフ自らが使用して安全性を確認しています」などとアピールしているものもあります。
これはいかにも信頼できそうな話ですが、実はとんでもない話で、薬剤師が数人で使用して安全であれば不特定多数にも安全という根拠にはなりません。
しかも、使用して安全という根拠が主観的な印象であって、血液検査などの異常を確認したものでもありません。
もし、健康食品の使用について相談を受けた場合、メーカーのパンフレットだけを見て判断した内容を説明することは非常に危険であり、論文などを収集し、相談者の希望に合っているかどうか、有用かどうか、安全かどうかを客観的に判断したうえで、その内容を説明する必要があります。
エビデンスに関する情報の作成・発信
現在、薬剤師を取り巻く環境は劇的に変化し、がん、感染制御、妊婦・授乳婦など様々な分野の認定薬剤師・専門薬剤師が制度化されています。
それらの資格を取得するためにはそれぞれの分野で臨床経験を積むだけでなく、それぞれの分野に関係する内容で研究を行い、学会発表や論文執筆を行うことが要件となっているものも多くなっています。
しかし、学会等での発表を見る限りにおいて、統計手法の選択の根拠として、p値を理由とし、有意差がついた検定方法だから選択したというものも少なくありません。
これはデータの改ざんと同じ意味を持ちますが、そのことを認識しているとは到底思えません。
また、研究デザインと発表者の結論が乖離しているものもよくあります。
研究結果からどの程度のところまで言及できるかどうかは研究デザインによって大きく影響を受けます。
臨床研究の結果は、そのまま、医療現場で参考となることもあり、仮に意図的ではなかったとしても誤った結果を公表することは、社会や医療全体に対して悪い影響を及ぼしてしまうのです。
病院・薬局だけでなく、家庭でもパソコンが普及し、統計解析に関するソフトウェアも、統計に関する本の付録になっているものやインターネット上に無料で公開しているものも多くなってきたため、使いやすい状況になっています。
逆に、そのことが誤った研究結果を生じさせる要因にもなっています。
つまり、基本的な理論を理解していなくても、本の内容に沿ってソフトウェアにデータを入力すれば結果を求めることができます。
しかし、統計解析ソフトウェアは、入力されたデータがその解析方法に適しているかどうかまでは判断できないものがほとんどであるため、誤った解析方法を選択しても結果を表示してしまうのです。
そのため、自分で複雑な計算式を駆使して計算できるようになる必要はありませんが、解析手法を正しく選択できるようになる必要があります。
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