法的な問題【統計解析講義応用】

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法的な問題|【統計学・統計解析講義応用】

法的な問題【統計解析講義応用】


目次  法的な問題【統計解析講義応用】

 

 

法的な問題

 

標準治療と試験治療に関するインフォームド・コンセント

 

おそらく臨床研究に関わる最も重要な法的な責任問題は,適切なインフォームド・コンセントを行っているかどうかに関連する.

 

今日の米国においては,我々は患者が十分に情報を知らされ,健康管理に関して自らが決定に関与する権利を持つという観念を当然のことと思っているが.これは必ずしもそうだとは限らない.

 

十分な情報提供を得て,同意するという患者の権利は全世界で行われているわけではない.

 

例えば,医師や家族が主要な意思決定者として振る舞い,患者自身は意思決定プロセスに関わっても関わらなくても良いとする国や文化,民族が存在する.

 

米国におけるインフォームド・コンセントの必要条件の基礎は,暴行(battery)に対するコモン・ロー公訴(common law action. すなわち,個人が同意なしに触れられることから保護される権利)から発展した.

 

損害賠償は,傷害(injury)が生じたかどうかにかかわらず,同意なしに触れられたこと自体に基づいた.

 

1950年代より,法廷は「適切な同意(proper consent)」を得ていないという訴訟を暴行の問題ではなく,過失(negligence)の問題として扱い始めた.

 

法廷が同意の有無よりも同意の質と実際の傷害に対する補償に集中するにつれ,暴行に関するコモン・ローの要素は曲解された.

 

過失は,以下のようないくつかの要素が証明されなければならない点で傷害とは異なる.

 

(1)医療提供者(health care provider)は患者に対し責務を負っていること. (2)その責務が履行されなかったこと. (3)傷害が生じたこと. (4)その傷害が責務の不履行より生じたこと,である.

 

法廷は同意の「質(quality)」を注視しており.その患者がその手技/介入を理解し.その治療/介入に伴うリスクを理解していない限り法的に有効な同意とは見なさない.

 

患者の決定に関するすべての情報は開示されなければならない.

 

一般的に臨床研究に対する同意に必要な法的基準と標準治療に必要な法的基準は,大きくは異ならない.

 

標準治療に関する法的に有効な同意のために開示されるべき項目は,米国保健福祉省(Department of Health and Human Services. DHHS)のヒト被験者の保護に関する連邦規則OK (Code of Federal Regulations,CFR)の45 CFR Part 46 のSection 46.116と食品医薬品局(Food and Drug Administration. FDA)のヒト被験者の保護に関する21 CFR Part 50 のSection 50.25に規定される臨床試験に参加するための同意に必要な要素とほぽ類似したものであり,後に詳しく述べる.

 

インフォームド・コンセントの要素とはどのようなものであろうか.法律上は一般的な治療に関するインフォームド・コンセントでは次に述べるような項目を開示するよう求めている.

 

1.診断(患者の状態や問題点)
2.提案された治療法の性質とその目的
3.提案された治療法のリスクとその結果
4.成功する確率
5.実行可能な代替手段
6.提案されている治療法を行わなかった場合の予後.

 

対照的に. DHHSのヒト被験者の保護に関する連邦規則45 CFR Part 46 のSection 46.116と21 CFRPart 50 におけるFDAのヒト被験者の保護に関するSection 50.25では臨床試験に際しての同意の必要な要素として以下を挙げている.

 

1.臨床試験は研究的要素があること,研究の目的.被験者の参加予定期間,同意した際行われる治療の説明,どの治療が試験的であるかの明示
2.あらゆる合理的に予想されるリスクや不快の説明
3.被験者または他の人に対するあらゆる合理的に予想される便益の説明
4.もしあれば.被験者にとって有用と思われる適切な代替手段の開示
5.個人情報を特定可能な記録の機密性がどの程度保持されるかの明示(そして, FDA規則が適応される研究では,明示はFDAが記録を調査する可能性について書きとめるべきである)
6.最小限以上のリスクを伴う研究の場合,もし損傷が生じた場合,治療や補償がどのようになされるか.追加の情報はどのように得られるかの説明
7.研究に関連した損傷が生じた場合の疑問および情報の問い合わせ先
8.参加は自主的なものであること,参加を拒否してもそれによる不利益はないこと,また同意は任意の時点で取り下げることができ.そのことにより不利益を受けないことの明示.

 

標準治療または研究同意の要素にかかわらず.個々の点でどれほど,またどのように情報は伝えられるべきだろうか.

 

研究の場において,同意書の長さへの懸念や.すべてのリスクや予想される結果,科学的根拠や薬理作用,等々についてどこまで被験者と議論すればよいのかという心配はますます高まっている。

 

Plato (プラトン)は「患者というものは,医師と話をする時は,ただ単に病気を良くしたいだけで,病気のことを詳しく聞きたいわけではない」というジレンマのあることを認識していた.

 

患者には何らかの教育が必要であり,どのようなコミュニケーションも患者にわかりやすいものでなければならない.

 

最も重要な原則は,意思決定とあらゆる合理的に予見しうるリスクに対するいかなる情報資料も開示される必要があるということである.

 

過去においては,重要な情報の基準は医師に対して重要な情報であった.

 

近年では,法律が進化し,患者の合理的な意思決定に重要な情報が明らかにされなければならないとされている.

 

医師がインフォームド・コンセントを得る際の言葉には慎重にならなければならない.

 

しばしば,医師には「明らか」と思える情報が,患者にとってはそうではない場合があるからである.

 

インフォームド・コンセント文書(特に有害事象の発生する可能性)の中でリスクに関する議論をする際には様々な同意書では「わずかなリスク」「最小限のリスク」,「少ないリスク」と様々な表現がされる.

 

このような用語は,しかしながら,主観的なので,人によって異なる意味を持つ可能性がある.

 

リスクは必ずしも(1/100や4/1,000など)数字的に定量化可能ではないが,私の意見ではあるが,およその数字で表わされたリスクは誤解される可能性が少ないと考えられる.

 

もちろん,そのような数字で表されたリスクを自分自身の状況に当てはめる能力は必ずしも共通理解を得られない場合がある.

 

臨床の場において,同意を試験開始時の単なる説明や行為と捉えるのではなく,過程と考えることが重要である,

 

研究に登録する前に,同意書の書式を前もって被験者に送付し,被験者が質問を考えたり,他に相談する時間を与えることは有用である.

 

被験者が登録された後でも.研究の進行に応じて新たな情報があれば伝えた上で,文書化はしなくても,研究への参加を継続する意志があるかどうか評価する必要がしばしば生じる.

 

誰が同意を与えることができるだろう.責任能力のある成人または法的に権限を与えられた代理人である必要がある.

 

患者が責任能力のない状態ならば,州法は救急医療(emergency care)の提供は合法としている.

 

その他の治療や介入は,特にそれが研究である時に,次項ではその問題を扱う法的に問題になる.

 

事前指示書/代理人同意

 

今日では,個人が治療に同意する権利を持っている場合,その同じ個人が特定の手続きや治療を拒否する権利を持っていることは明らかである.

 

しかしこの見解は一般的に20世紀の初めまでは受け入れられなかった.

 

Benjamin Cardozo判事は1914年に患者の外科手術(下肢切断)を拒否する権利を支持する判決を下して言った,

 

「成人年齢に達し,健全な精神を持つあらゆる人は.白身の体で行われることを決める権利を有する」.

 

 

しかし,もしその個人が同意する(あるいは拒否する)能力を欠いているとしたら,どんなことが生じるだろうか.

 

誰が決定することができて,決定するのか.そして.個々の患者の希望がどのように考慮されるのか,という疑問が生じる.

 

多くの人々は,書面による事前指示轡がなく遷延性植物状態で亡くなった若い女性, Karen Ann Quinlan , Nancy Cruzan とTern Schiavo の裁判をよく知っている.

 

1976年の「Quinlan裁判」の判決以来.いくつかの裁判所が元々は責任能力のあった患者が治療を拒否する権利を.たとえその治療が生命維持のためだとしても支持する決定を下してきた.

 

また精神的に十分な意思決定を下す能力のない患者に関しては,法廷または州の法律により,家族または指定された個人に代理の意思決定者として行使する権限を与えてきた.

 

しかしながら,「Cruzanの事件」に関しては,連邦最高裁判所はミズーリ州で下された決定,すなわち延命治療に関する治療を拒否または取りやめる決定を代理で行うためには明らかで確信に足る本人の意思表明の証拠が必要である.とする決定を支持した.

 

Schiavo事件の家族問の公的記述や他の不一致だけでなく,判例法と関連する法制の整備により,現在では事前指示書の使用と,患者の意思を明らかに反映し,かつ,または,代理の意思決定者を指名し文書化しているかということに関心が集中している,

 

議会は1990年の患者の自己決定権法(Patient Self-Determination Act in 1990)の制定に問題があることを認識した.

 

この法律はメディケアあるいはメディケイドから資金を受けている医療施設に対して,患者には州法の下,医療行為を受けるか受けないか決定する権利があること,また事前指示書を作成する権利があることを伝えるように要求している.

 

この法律はまた診療記録の中に事前指示書の有無を記録すること,および患者教育を行うことを医療施設に要求している.

 

法的には事前指示書には2つの種類がある.

 

すなわちリビングウィル(living will)と医療に関する永続的委任状(durable power of attorney. DPA)である.

 

これらの2つのタイプの事前指示書を組み合わせた混合型も時折見られる.

 

「リビングウィル」は個人がもし「終末期状態」になり.自ら意思決定する能力がないならば,個人が特定の生命維持行為を受け入れるか受け入れないかを書面で指示することを許可する文書である.

 

どのような状態をもって「終末期状態」とするかは州により異なる.

 

一般には回復する可能性がなく,死が差し迫った(6ヵ月以内に死亡することが医学的にある程度確かな)状態を意味する.

 

州によっては,遷延性植物状態にある場合,リビングウィルの適用を許可するところも増えてきている.

 

医療に関する「永続的委任状(DPA)」(「医療委任状(health care proxy)」としても知られる)は,自ら意思決定できない状態になったときに,代理で意思決定を下す個人を前もって指名する文書である.

 

DPAは代理人の参考になるような患者の希望に関する文章を含むことも含まないこともある.

 

一部の州は,代理人が患者の希望と一致している決定だけをするのを許可している.

 

メリーランド州のような他の州は,患者の希望が不明な場合には,代理の意思決定者が患者の最大の利益に決定をすることを認めている.

 

事前指示書の実行と実施に関し個々の州はそれぞれ独自の要件を設けている.

 

証人は何人立ち会ったか,どのような人物が証人になれるか,文書は何時発効するのか(患者が末期や意思決定不能状態だと認定する作業をどの時点で開始するのか),文書はどのようにして無効化または変更するのか,患者が妊娠していたらどうするのか,文書が公証される必要はあるか,などである.

 

いくつかの共通の一般的要求事項を示す.

 

例えば,事前指示書は自発的に書かれたものでなければならず,証人が必要である.

 

事前指示書の証人に関しては,代理意思決定者になるべく依頼されておらず.血族関係または婚姻関係がなく,債権者や資産相続予定者でなく,医療に関する経済的な責任者やその従業員でなければ通常問題は起きない.

 

そのような要件が存在する場合は,事前指示書を実行する個人が,強制や強要によるものでないことを保証するために適応されている.

 

最後に,各州は,一般的に個人が住む他の州で合法的に作成された文書を有効であると見なす.

 

リビングウィルと対照的に, DPAの利点は,特に研究の場合に明らかである.

 

終末期でなくても精神的に責任能力のない個人のDPAはいつでも有効である.

 

DPAは終末期の決定に関するだけでなく,あらゆる問題に関して代理人の意思決定を可能にする.

 

DPAに研究への参加に関する文言を入れることについては多くの人が賛成している.

 

NIHクリニカルセンターには,独自のDPA書式があり,患者がNIHにいる間の医療行為と研究への参加に関して代理人にインフォームド・コンセントを与える権限を与えるものである(書式のコピーは本章の付録にある).

 

NIHクリニカルセンターは患者によって正当に書かれた他の事前指示書も認めている.

 

DPAで代理人を指名して,患者のために医学上の意思決定を行う際には,研究に関する意思決定も含まれると見なされてきた.

 

代理人が研究への参加を承諾するためには. DPAに作成者本人の承諾が記されていなければならないとする法的要件が加われば,参加するかどうか熟考もできず,または参加したいと意思表示できずに多くの患者が研究へのアクセスから遠ざけられたままになるだろう.

 

このような法的な要求が本当に必要なのかどうか疑問視する者もおり,もしDPAが代理人をして患者の生死を左右する決定(治療を受け入れるかあるいは拒否するかなど)を下す権限を有する存在にしているのなら,その決定の多くは前もって患者本人は具体的には予想も熟考もしていないのに,なぜこれらは研究に参加するかどうかとは違う扱いを受けるのだろう.

 

私の意見ではあるが,悪意のある代理人から患者を守るための十分な機構であると考える.

 

研究者とIRBは研究の性質,あるいは病気の進行により, DPAの遂行が研究への参加の必要条件かどうかを議論するべきである.

 

研究に参加している被験者が研究の進行につれ意思決定能力を失いそうなとき, DPAの遂行が検討されるべきである.

 

アルツハイマー病やHW/AIDS感染症の神経学的続発症に関する研究において, IRBからそのような指示が出たことがある.

 

薬剤の投与,および中止に伴い起こりうる重度の神経学的/精神医学的な副作用の可能性も考慮に入れられるべきものとして挙げられる.

 

医療従事者(health practitioner)は,多くの場合,医療提供者による事前指示書に伴う法的責任に対して関与している.

 

州法では.合理的な医学的基準に従い,誠意をもって事前指示書に従う限り,通常は刑法上も民法上も医療従事者に責任は生じない.

 

適切に作成された文書で患者の希望に従わない医療従事者は,訴えられ,損害賠償を求められるであろう.

 

患者が事前指示書を作成していないか,あるいは事前指示書が不十分な状態で,精神的に責任能力を失ったときは何が起こるだろうか.

 

もし患者が標準的な治療に関する自身の希望を表明していたのならば.その希望は叶えられるだろう.

 

もしそのような希望が以前に診療記録に記録されていたり,証人がいる場合は有効である.

 

さらに, DPAまたは司法上の保護者が存在しない場合,州法により,特定の個人が医療行為または歯科行為を提供する(中止とは反対の)代理の同意を行うことができる.

 

このような個人は.研究参加に同意を与えることはできる場合とできない場合がある.

 

これらの個人が「代理の同意」を行うことができる事例は,特定の種類の研究(例えば,ほぼ最小限のリスクの研究や試験に参加することで患者自身が直接利益を受ける可能性のあるもの)に限られる.

 

 

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