仮説の検定【統計解析講義応用】

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仮説の検定|【統計学・統計解析講義応用】

仮説の検定【統計解析講義応用】


目次  仮説の検定【統計解析講義応用】

 

 

仮説の検定

 

仮説は,統計学的手順をとおして正式に検定する.

 

つまり,研究者は統計によって,仮説が正しいという確率が高いかどうかを判断する.

 

しかし,仮説の検定によって仮説が立証されるのではなく,採択される,または支持されるのである.

 

研究結果は常に暫定的である.

 

確かに,何回もの研究で同じ結果が反復される場合は,結論はより信頼できるものとなる.

 

証拠を積み重ねることで,仮説はさらに支持されるようになる.

 

なぜそうなるかをもっと詳しくみてみよう.

 

たとえば,「身長と体重には関係がある」という仮説を立てたとしよう.

 

「背の高い人は低い人よりも平均して体重が重い」と予測する.

 

次に,標本を選んで身長と体重を測定し,データを分析する.

 

さて,ここで,たまたま背が低く体重が重い人からなる標本と,背が高くやせた人からなる標本を選んだとしよう.

 

そうすると,「個人の身長と体重には関係がない」という結果になるかもしれない.

 

その場合に,この研究は,人間の身長と体重には関係がないと立証された,または示された,と述べることは正しいといえるだろうか.

 

次の例では,「背の高いナースは,背の低いナースよりも有能である」という仮説を立てたとしよう.

 

実際には,身長と看護能力とに関係はなく,あくまで説明をわかりやすくするための仮説である.

 

さて,ここでも背の高いナースの標本が背の低いナースの標本よりも高い評価を得る,ということがたまたま起きたとしよう.

 

われわれは,これによって,「身長がナースの能力に関係がある」と断定的に結論できるだろうか.

 

この2つの例は,標本から得た観察を母集団に一般化することのむずかしさ奇示すものである.

 

ほかにも,測定の正確さや,コントロールしていない外生変数の影響,もとになる前提の妥当性などの問題を考えれば,研究者の仮説が立証されたと最終的に結論づけることはできない.

 

統計学的検定は,仮説を検定するためにデザインされているので,研究者が統計学的検定する場合(大部分の量的研究で行われているが):研究者がはっきりと仮説を陳述していなくても:必ずそこには仮説がある.

 

研究を計画する場合,予測つまり仮説を陳述することを恐れてはならない,

 

量的研究の例

 

ヴァン・サーヴレン,アギール,サルナ,ブレッド〔Van Servellen, Aguirre, Sarna, & Brecht, 2002〕は,HIVに感染した男性と女性における情緒的苦痛を研究した.

 

AIDS男性の比率は減少し,女性の比率は増加しているにもかかわらず, HIVに感染した女性の健康上の体験について記述した研究が,男性のそれに比べてわずかしかないことに,研究者は注目した.

 

ひとたびHIVに感染すると,女性のほうが男性よりも関連疾患の罹患率が高く,深刻な結果となる危険が高いという確かな証拠があるため,研究が少ないことにはとくに問題があった.

 

研究目的は,「地域を基盤とする治療センターでのケアを求めている,HIV症状のある男性と女性の情緒的苦痛を記述し,そのパターンを比較すること」である,と研究者は陳述した.

 

研究者は,社会人口学的特質,健康状態,ストレス抵抗資源などについて,性別による相違点や類似点を理解することによって,「HIV感染クライエントの生活の質を改善し,情緒的苦痛を軽減するための,性別に対応したプログラムをデザインする際に役立つ重要な情報を提供すること」ができたと記した.

 

この研究の概念的枠組みは,帰属理論である.

 

これは,生活ストレスと情緒的苦痛とのつながりを説明する.

 

この枠組みによって,次の4つの研究仮説が導かれた.

 

仮説1:社会人口学的脆弱性(例:高等学校卒業に満たない教育程度)は,男性,女性双方の情緒的苦痛に関連している.

 

仮説2:身体的,機能的に低い健康状態が,男性,女性双方の情緒的苦痛に関連している.

 

仮説3:楽観性と社会的支援が,男性,女性双方のポジティブな精神的健康状態と関連している.

 

仮説4:女性は,男性よりも情緒的苦痛が高いレベルにある.

 

研究データは,ロサンゼルスに住む82人の男性HIV患者,44人の女性HIV患者から収集した.

 

男性よりも女性のほうが,身体的,心理社会的に良好な状態が阻害されているという結果が示され,これは仮説4と一致していた.

 

身体的健康と楽観性は,男性と女性ともに,情緒的苦痛の主要な予測因子であり,仮説2および3が支持された.

 

しかし,低所得層からなるこの標本では,仮説1は支持されなかった.

 

つまり,社会人口学的脆弱性の指標と,対象の不安や抑うつレベルとのあいだには有意の関係はなかった.

 

 

質的研究の例

 

べーリ,ソマーズ,ホール〔Beery, Sommers, &Hall, 2002〕は,恒久的心臓ペースメーカーを装着している女性の体験を研究した.

 

ペースメーカーのような生物工学的器具を,身体の不調管理のため装着するケースが増えているが,このような体験の情緒的影響はあまり研究されていない,と研究者は陳述している.

 

さらに,テクノロジーがもつ男性という文化的メッセージゆえ,女性がペースメーカーの装着に独特の反応を示すにもかかわらず,恒久的心臓ペースメーカーへの女性特有の反応がほとんど知られていないと記している.

 

ベーリらの研究の目的は,徹底的な面接から女性のライフ・ストーリーを明らかにすることで,ペースメーカー装着への女性の反応を探索することだった.
研究者は,「恒久的心臓ペースメーカーとともに暮らす女性の体験とはどのようなものか」,

 

「どのように女性は恒久的心臓ペースメーカーの存在を自分の生活や身体になじませていくのか」という,2つの研究設問を明記した.

 

大病院の心臓科に通院する11人の女性が標本となって,研究に参加した.

 

面接では,ペースメーカー装着前,装着の施術中,装着後の生活上のできごとについて,一連の質問がなされた.

 

各女性が,2つの面接を受けた.最初の面接における質問の一例は,「あなたにとって,ペースメーカーをつけて生活するというのはどのようなものか」である.

 

次の面接では,「ペースメーカーのことを,どれくらいの頻度で考えるか」とか「どんなときにペースメーカーをつけていることを思い出すか」といった,より限定された質問がなされた.

 

研究者の分析の結果,面接データから8つのテーマが現れた.

 

それは,「ケアを断念する」,「ペースメーカーを自分のものと認める」,「恐れと抵抗を体験する」,「身体をイメージする」,「正常化する」,「介護者として位置づける」,「回復力を知る」,「全能感を感じる」である.

 

・研究問題は,研究者が学問的探究によって取り組もうとしている,混乱した不可解な状況である.

 

・研究者は,通常,幅広いトピックを特定し,問題の範囲を絞り,選択したパラダイムと一貫した研究設問を特定する.

 

・看護の研究問題のためのアイデアのもっとも一般的な源泉は,経験,関連文献,社会問題,理論,外的資源である.

 

・研究問題の価値は,さまざまな基準に基づいて考えなければならない.研究問題は,臨床的に重要で,研究可能であり(道徳的,倫理的性質の課題は不適切である),実行可能であり,個人的な関心をもつものでなくてはならない.

 

・実行可能性には,時間,研究参加者やそのほかの人たちの協力,設備と備品の入手可能性,研究者の経験,倫理的配慮などの課題がある.

 

・研究者は,研究報告のなかで,問題の陳述,目的の陳述,研究設問,そして仮説というかたちで,研究のねらいを伝える.問題の陳述は,研究する問題の本質,背景,重要性を明らかにする.

 

・目的の陳述は,研究の全体的な目標を要約したものである.量的研究でも質的研究でも,目的の陳述は主要な概念(変数)と研究の対象となるグループもしくは母集団について明らかにする.

 

・目的の陳述は,動詞や主要な用語をもちいて,その質的研究が根ざす研究の伝統を,量的研究の場合は実験研究か非実験研究かを明らかにすることが多い.

 

・研究設問は,研究者が研究問題に取り組み,答えを求めようとする特定の問いである.通常,量的研究における研究設問は,関係の存在,性質,強さ,方向性である.

 

・研究設問には,独立変数と従属変数との関係の強さや方向性に影響する調節変数を含むものがある.独立変数と従属変数とのあいだに介在し,関係が存在する理由を説明する助けとなる仲介変数を含む研究設問もある.

 

・量的研究では,仮説は,複数の変数間に予測される関係の陳述である.検証可能な仮説は,1つまたは複数の独立変数と,1つまたは複数の従属変数のあいだに予測される関係を陳述する.

 

・単純仮説とは,1つの独立変数と,1つの従属変数のあいだに予測される関係をいい,複雑仮説とは,複数の独立変数と複数の従属変数のあいだに予測される関係をいう(または仲介変数もしくは調節変数についての予測を陳述する).

 

・方向仮説は,関係の方向性を予測する.非方向仮説は,関係の存在を予測するが,その方向性を予測しない.

 

・研究仮説は,関係の存在を予測する.統計学的仮説または帰無仮説は,どんな関係も存在しないことを示す.

 

・仮説は,究極的な意味で証明も反証もできない.データによって,仮説は「採択される」または「棄却される」,もしくは「支持される」または「支持されない」.

 

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