ケースコントロール研究【統計解析講義応用】

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ケースコントロール研究|【統計学・統計解析講義応用】

ケースコントロール研究【統計解析講義応用】


目次  ケースコントロール研究【統計解析講義応用】

 

 

ケースコントロール研究

 

目的とデザイン

 

症例集積研究では,症例の定義に適合して選択された,小規模な集団について研究する。

 

ケースコントロール研究では,「ケース」の定義を満たす対象だけでなく.明らかに「ヶ一ス」ではない対象も研究対象として選ぶ.

 

さらに,ケースコントロール研究は,縦断的または時間的なデータを扱うという,横断研究にはない特徴を持つ.

 

ケースコントロール研究は,後ろ向き研究と呼ばれることがある.

 

対象疾患をもつ患者をまず見つけ出してから,その疾患を誘発した可能性のある因子を過去にさかのぼって後ろ向きに調査するためである.

 

ケースコントロール研究では,対象疾患と危険因子であると仮定した1つまたは複数の因子との潜在的な関連性を調べる.

 

基本的な方法は,潜在危険因子の頻度や水準を,同一の人口集団から派生した2群.ケースとコントロール.の間で比較することである.
ケースは対象疾患ありの人々を代表し,コントロールは対象疾患なしの人々を代表する集団である.

 

発生率の高い疾患に使われることもあるが,ケースコントロール研究は,稀な疾病の病因を研究するのに最適である.

 

残念ながら,「時間的に後ろ向きに」というのは困難であり.深刻なバイアスを生みやすい.

 

過去に収集済みの情報がない状態で,「現在」の時点で対象者を選択するならば,研究者側は,過去の曝露の情報に関して,対象者らの記憶.病院記録,あるいは別の非公式情報源に依存せざるを得ない.

 

ケースコントロール研究で生じやすいバイアスの多くは,このデータ収集の段階で発生する.

 

ケースコントロール研究に関して3つの重要な条件があり.これらの条件はバイアスの可能性を最小限に抑えることに寄与する.

 

第一条件:ケースは.対象疾患の患者すべてを代表するように選ぶこと.これは,病院の患者を用いる場合には満たしにくい.

 

というのは,例えば,三次医療紹介センター(tertiary referral center)で治療を受けている患者は,より小規模の病院で治療を受けている患者とは異なるし,全く病院にかかっていない患者とも異なるからである.

 

第二条件:コントロールは,対象疾患なしの健康な一般人集団を代表していること.

 

単純な方法として,ランダムに人口ベースの標本を抽出し,少数含まれるであろう疾病ありの人を除く方法が考えられるが,潜在的に問題がある.

 

別な方法としては,多様な問題をカバーするために.複数のコントロール群を用いる方法がある.

 

例えば,ケースが入院患者から選ばれた場合,そのような患者標本にはバイアスが内在するため,コントロールは別の理由で入院した患者の中から選ぶのがよいだろう.
こうすれば,入院患者特有のバイアス(診療を受けられる状態にあった,最初の疾患発現をかろうじて生き延びたなど)は,コントロールにも等しく該当する.

 

これは.コンペンセーティング・バイアス(compensating bias)の例である.

 

ここで注意すべきは,コントロールの「別の理由」自体が,曝露要因と関連して,バイアスの源になっていてはならない点である.

 

これらの潜在的なバイアスの分析に役立てるため,近隣対照(neighborhood control)などのコントロール群を研究に加えることもある.

 

第三条件:ケースおよびコントロール双方からの情報収集が平等に行われること.これは.ケースかコントロールのどちらなのかをインタビュー実施者が知っている場合は特に難しい.

 

インタビュー実施者やデータ収集をする者は.特に彼らが研究の仮説を知っている場合は,コントロールの人よりもケースの人から曝露情報を引き出そうとしがちになるであろう.

 

インタビュー実施者やデータ収集をする者は,インタビューされる側がケースでもコントロールでも質問の仕方を変えず,肯定的な回答にも否定的な回答にも同様に対応できるように訓練されなければならない.

 

どんなにうまくインタビューを実施しても,インタビューを受けている人たちは同じには情報を思い出さないかもしれない.

 

もし自分の子どもが病気になれば,可能性のある曝露について,かなり多くのことを考えるであろう.

 

「なぜ子どもは病気になったのか?」もし自分の子どもが病気でなければ,考えるのを止めてしまって,そのことを思い出しもしないかもしれない.

 

これは思い出しバイアス(recall bias)の例である.

 

同様に,カルテはケースとコントロールで情報のレベルが異なっていることがある.

 

臨床医は,問題があるのではないかと疑ったら,より詳しくそれを探すだろう.

 

最終的には,潜在的な病因を評価する際にケースとコントロールから全く同じ方法で集められた情報のみを用いることが必要である.

 

ケースに限定された診断法から得られた情報は,他の研究(重症度の記述など)に用いることはできるが,病因の特定には用いることはできない

診断を要するケースコントロール研究でケーコントロールにすればよいと考えるかもしれないが.その場合,対象疾患なしの集団を代表しているとはいえない,という問題が生じる。

 

もし,対象疾患が十分に稀といえるならば,無症候の人たちからランダム標本を抽出したとき,その中には1人のケースも混じっていない.あるいは,混じっていたとしても少数なため結果を左右するほどの影響力はない,と想定しても構わないかもしれない.

 

明確に定義された母集団人口からヶ−スを選択するにあたり,標準化された選択基準を用いなければならない.

 

 

例えば,ヶ−スが血管造影で診断された冠動脈疾患なら,標準的な血管造影およびX線撮影技術の基本的な要件(読影方法,読影者数,読影者間の一致度(予想値),狭窄が最低でもどの程度あるか,罹患している脈管数など)を明記しておくことが重要である.

 

ケースを抽出する源のデータベースは, case registries (疾患ごとの患者登録制度)から得られる記録,入院記録,病理所見記録,検査値記録,カテーテル検査実施記録など,できればケースとして選択し得るすべての患者を確保できるような包括的なデータ源を利用するのが望ましい.

 

他のどの観察研究にもいえることだが,非回答から生じるバイアスを最小限に抑えるために参加率をできるだけ高くすることが肝要である.

 

一般的に,コントロールを定義,選択,収集するという作業はケースの場合よりも難しい.

 

理想のコントロールなどおそらく存在しないので,コントロールに関連して潜在するバイアスの数々は,ケースコントロール研究の批判で最たるものの1つである.

 

ケース,コントロールともに同一の明確に定義された母集団から抽出するにあたり,標準化した基準が必要となる.

 

また,コントロールが対象疾患なしであることを可能な限り確認する目的のためにも基準は必要である.

 

コントロールの抽出源は,一般住民からのサンプルが考えられる(例:ケースと同一のcensus tract (日本では国勢調査単位地区に相当する)内,管轄電話局内,郵便番号内から選ばれる近隣対照).

 

研究にもよるが,ケースの親戚や友人はコントロールとしては適さない.

 

対象疾患を意識していることから生じるバイアス,つまり親戚や友人が意識していることによりその生活習慣や記憶が影響されて生じるバイアスが懸念されるからである.

 

しかしながら,疾患と測定した遺伝マーカーとの連鎖を探す遺伝子研究では.確かに家族コントロールを含める.コントロールの選択には,コストと協力の得やすさ(accessibility)を考慮する必要がある.

 

一般論として,病因追求への関心が高い疾患ありの人たちよりも,対象疾患のない人たちに参加協力を求める方が困難だからである.

 

1例のケースあたり複数のコントロールを用いることで,統計学的な検出力は多少改善するかもしれないが,1例のケースあたり3例または4例を超えるコントロールを用いても,得られる検出力の増加はわずかである.

 

「完璧な」コントロール群など存在しない現実の1つの解決策として,上記で示した,複数の種類のコントロール群を用いる方法がある.

 

病院内における例として.1つのコントロール群はケース群と同じ病院から選び,もう1つのコントロール群は近隣対照,つまり,それぞれのケースについて同じ近所区域からコントロールをマッチングする.

 

この方法だと,片方のコントロール群でのバイアスがもう一方のコントロール群で最小限に抑えられるため,方法論上望ましいとされている.

 

2組の関連性はそれぞれ別々に評価される.

 

コントロール群をケース群と,年齢,性別,特定の危険因子(喫煙など)についてマッチングすることは可能である.

 

ただし,それらの因子がアウトカムに関連することが知られていて,すべての対象で正確に測定することができ,研究目的が新たな病的因子を探す場合においてである.ある因子についてケース群とコントロール群をマッチングする理由は,興味のある関連性がその因子による交絡によるもの,となることを防ぐためである.

 

一度マッチングに用いた因子は,解析上で調査・評価することはできないことに留意しなければならない.

 

その因子に関しては.ケース群とコントロール群で同一であるように,デザイン上設定したからである.

 

さらに,マッチングする因子が増えるにつれて,マッチするコントロール群を見つけることが困難になる.

 

また,解析方法ではマッチングを行ってサンプリングしたことを考慮に入れなければならないように.マッチングは解析も複雑にする.

 

基本的に,疾患との関連性が明確でない限りは,マッチング因子とせずに,その因子の役割を解析の中で検討できるようにしておいた方が良い.

 

もし複数のコントロール群を使用するなら,一方はマッチングして別の方はマッチングしない,とするのも1つの方法である.

 

 

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