看護研究の理論や枠組みの検証,活用,開発【統計解析講義応用】

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看護研究の理論や枠組みの検証,活用,開発|【統計学・統計解析講義応用】

看護研究の理論や枠組みの検証,活用,開発【統計解析講義応用】


目次  看護研究の理論や枠組みの検証,活用,開発【統計解析講義応用】

 

 

看護研究の理論や枠組みの検証,活用,開発

 

ここでは,理論という用語を,概念モデルやフォーマル理論(一般理論)の双方を含む,もっとも広い意味でもちいることにする.

 

理論と質的研究

 

民族誌学(エスノグラフイー)または現象学のような質的研究の伝統に根ざしている研究には,理論があることが多い.

 

前述したように,これらの研究の伝統は,本質的に質的研究の理論的基礎となる包括的な枠組みを与える.

 

しかし,伝統が異なれば,理論のあり方も違ってくる.

 

サンデロウスキー〔Saridelowskい993〕は,領域密着理論(substantive theory) (研究する対象となる現象を概念化したもの)と,人間の探求について概念化したものを反映する理論について,有益な区別をしている.

 

質的研究者のなかには,データ収集や分析を歪める可能性のある,先験的な(ア・プリオリな)概念化(領域密着理論)を保留するために,関心ある現象に対して意識的に理論に基づかない立場をとろうとする者もいる.

 

たとえば,現象学者は,一般に,理論的に単純(正直)であろうとし,検証する現象についての先入観を明らかに保留しようとしている.

 

そうはいうものの,現象学者は,人の生活世界の特定の側面の分析に焦点をおく枠組みや哲学によって,探究へと導かれる.

 

その枠組みは,人間の体験とは,外部の観察者が構成するものではなく,その体験そのものが本来的にもっているものである,という前提に基づいている.

 

民族誌学者は,一般に強い文化的な視点をもって研究する.

 

そしてこの視点から,最初のフィールドワークのかたちをつくる.

 

フェッターマン〔Fetterman, 1989〕によると,ほとんどの民族誌学者は,次の2つの文化理論のうちのどちらかをとる.

 

1つは観念的理論(ideational theory)で,文化的状況や適応は,精神活動や観念から生じるというものである.

 

もう1つは唯物論的理論(materialistic theory)で,物質的な条件(例:資源,金銭,生産物)を,文化の発展の源であるとみなす.

 

クラウンデッド・セオリーの理論的根拠は,シンボリック相互作用論(symbolic interactionism)であり,これは,人間の相互作用をとおして,交渉と再交渉という継続的なプロセスをとおして,行動が展開していくことを強調する.

 

しかし,現象学者に似て,クラウンデッド・セオリーの研究者は,自分の領域密着理論が現れはじめるまで,先行する領域密着理論(その現象についての既存の知識と,概念化)を一時保留にしておこうとする.

 

理論がかたちをなしはじめると,クラウンデッド・セオリーの理論家は,文献を参考にするようになる.

 

むしろ,既存の文献を,理論から新しく生まれ開発されたカテゴリーとの比較にもちいる.

 

クラウンデッド・セオリーの研究者の目標は,実際の観察に根ざした現象の概念化を展開すること,つまり,プロセスや現象を統合したり意味づけるという,経験的に積み上げた概念化である.

 

クラウンデッド・セオリーでの理論開発は,帰納的なプロセスである.

 

クラウンデッド・セオリーの研究者は,特定の事例やできごとを深くみることで,パターンや共通性や関係を見いだそうとする.

 

データの分析を続けながら,質的研究者は,特定のデータのきれはしから,観察した現象を統合し構造化するような抽象的一般化へと移っていく.

 

目標は,既存の理論によって概念化されてきたものでなく,現実に根ざしたデータをもちいて,現実に起こるものとして,できごとを記述したり説明することである.

 

クラウンデッド・セオリーの方法は,多くの概念パターンや関係をもつ,概念的に緻密な理論を生みだしやすいようにデザインされている.

 

クラウンデッドセオリー研究の例

 

シュライバー,スターン,ウィルソン〔Shreiber, Stern,& Wilson, 2000〕は,西インド諸島系カナダ人黒人女性が,抑うつやその徴候にどう対処したのか,というクラウンデッド・セオリーを展開した.

 

カナダでは非主流である文化的背景をもつこれらの女幽ま,彼女たちが言うところの「強くあること」というプロセスで,抑うつに対処した.「強くあること」には,「そのことにこだわる」,「気分転換をする」,「落ち着きを取り戻す」という3つのサブプロセスがあった.

 

これらのサププロセスは重なりあう.

 

クラウンデッド・セオリーの研究では,理論は「内部」から生まれる.

 

しかし,理論はまた「外部」からの質的研究に加わることもできる.

 

つまり,質的研究者のなかには,解釈の枠組みとして既存の理論を使う人もいる.

 

たとえば,ニューマン(Neuman),パースイ(Parse),そしてロジャース(Rogers)によって開発された看護の概念モデルに,自分たちの研究の哲学的基盤があると認める質的看護研究者もたくさんいる.

 

また,予備的な分析を始めたあとで,とりあげる現象についての領域密着理論を,データを解釈するための比較の意味合いでもちいる質的研究者もいる.

 

サンデロウスキー〔Sandelowskい993〕は,このやり方で,既存の領域密着理論や概念化は基本的にはデータそのものであり,研究データと同じように,帰納的に導出された新しい概念化の一部として検討されうる,と記している.

 

既存の理論を解釈的枠組みとして使った例

 

イェー〔Yeh, 2001〕は,34人の台湾の子どものがんへの適応プロセスについて,質的研究を行った.

 

その際,ロイの適応モデルを徹底的な面接やデータ分析の手引きとしてもちいた.

 

特定のトピックについての質的研究の統合レビューは,理論の開発につながるもう1つの方略である.

 

こうした統合レビューでは,質的研究は,基本的要素を特定して組み合わされる.

 

さまざまな資料からの研究結果が,理論を構築するためにもちいられる.

 

たとえばパターソン〔Paterson, 2001〕は,慢性疾患を患う成人の体験を記述した292の質的研究の結果をもちいて,慢性疾患について観点が移り変わるモデルを開発した.

 

このモデルは,慢性疾患とともに生きることを,継続的に移り変わるプロセスとして表現している.

 

そのプロセスにおいて,個人の観点は,病気が彼らの生活において,どの程度,前景に出てきているのか,または背景に退いているのかによって変化する.

 

 

量的研究での理論

 

量的研究者は,質的研究者と同様,いくつかのかたちで研究を理論やモデルと結びつける.

 

古典的なアプローチは,以前に提示された理論から演繹された仮説を検証することである.

 

理論の検証

 

理論は,新しい研究を刺激することが多い.

 

たとえば,あるナースがオレムのセルフケアモデルについて読むとしよう.

 

読み進むにつれて,次のような推測が浮かぶかもしれない.

 

「オレムのセルフケアモデルが妥当であるなら,看護の効米は,セルフケアに責献するような環境(たとえば,分娩室ではなく出産の部屋)で促進されると考えられる」.

 

理論または概念枠組みから導き出されたこのような推測は,その理論の適切性を検証するための出発点となるだろう.

 

ある理論を検証する際,研究者は(先の例のように推論して,研究仮説を立てる.

 

この仮説は各変数の関連の仕方予測するものである.

 

そこで仮説は,系統的なデータ収集と分析によって,経験的に検証されることになる.

 

特定の理論や概念モデルを検証する場合,それに関する1次資料を読むべきである.

 

理論家の概念的観点と,主な構成概念についての詳細な説明について,十分に理解することが重要である.

 

観察されたアウトカムと,仮説で予測されたアウトカムとの比較が,検証の過程の焦点である.

 

この過程を通じて,理論は,絶えず反証の可能性をつきつけられる.

 

研究が,理論を反後して反証できない場合,その理論は支持され受け入れられる(例:計画行動理論).

 

検証の過程は,いくつかの証拠がその理論の文脈では解釈できないことがはっきりするか,既存の研究結果をも説明する新しい理論によって説明できるようになるまで続く.

 

研究者が,理論から論理的にしっかりした推論を引き出したり,観察された関係をほかにもっともらしく説明する方法を減らすように研究をデザインしたり,また,できるだけ異質な状況下でその理論の妥当性を評価して,競合する可能性のある理論を排除できるような方法を選んだ場合に,理論を検証する研究はもっとも有用となる.

 

研究者は,以前に行った記述的な研究結果を説明しようと,理論を基礎にした新しい研究を行う場合がある.

 

たとえば,ナーシングホームの患者は,就寝時間になると,他の時間に比べてもっとも高い不安を示し,看護スタッフに従わないということを,何人かの研究者が見つけたとする.

 

これは,問題の原因を解明するわけでもなく,したがって問題を改善する示唆となるわけでもない.

 

このような場合,ラザルスとフォークマンのストレス・コーピングモデルやニューマンのヘルスケアシステムモデルなどに基づいた説明で,ナーシングホームの患者の行動をうまく説明できるかもしれない.

 

新しい研究で理論を直接に検証する(つまり,理論から導出した仮説を演繹する)ことで,ナーシングホームの高齢者にとって,なぜ就寝時間が不安定な時問になるのか,わかることもあるだろう.

 

関心ある理論に基づいた他の研究報告は,たとえそれが自分の研究問題に類似していなくても,有用であろう.

 

他の研究を読むことで.理論がどの程度,経験的に支持されてきたか,また理論をどのように採用するべきかを,より的確に判断できるだろう.

 

理論の検証は,理論に基づく介入を検証するかたちをとることがある.

 

理論が正ければ,健康に関連するものをはじめ,人々の態度や行動に影響する方略にも意味がある.

 

スワンソン(Swanson)のケアリングの理論の例のように,質的研究の文脈で開発された理論が,介入を推進する力となろう.

 

介入の効果の実際の検証にれも理論の問接的な検証である)は,通常,構造化された量的研究でなされる.

 

介入研究における理論検証の例

 

チャン〔Chang, 1999〕は,ラザルスとフォークマンのストレス・コーピング理論を,認知症患者(persons with dementia: PWD)を在宅介護する人への介入の開発と検証にもちいた,

 

この理論によれば,ストレスとコーピング能力との関係には,初期評価が介在する.

 

それは,その体験をストレスが多いものとして,またはストレスがないものとして認知することである.

 

チャンは,初期評価に影響する介入は,介護者の不安と抑うつに確実に影響する,と推理した.

 

彼女は,認知一行動的介入を開発した.その介入は,認知症患者の食事の能力や衣服の着脱能力を改善するための知識や技術を介護者に提供するよう.また.介護者のコーピング方略についての知識を高めるようデザインされたものであった.

 

この介入を受けた介護者とそうでない介護者をていねいに比較した研究で,介入を受けた集団では抑うつが減少したことがわかった.

 

研究者は,複数の理論から要素を結合して,仮説を立てる基礎とすることがある.

 

これを行うには,要素を結合するための適切な概念的基盤や経験的基盤があるかどうかを判断できるような,両方の理論についての十分な知識が必要である.

 

主要な概念の基礎となる前提や概念的定義が両立できない場合は,理論を結合してはならない(独自の前提や定義をもった新しい概念枠組みをつくるために,2つの理論の諸要素を使うことはあろうが).

 

HBM (健康信念モデル)とTheory of Reasoned Action (合理的行為理論)の2つの理論は,これまで結合する試みがなされている.

 

 

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