思考の連鎖プロンプト術|AIの推論力を鍛える【東京情報大学・嵜山陽二郎博士のAIデータサイエンス講座】

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思考の連鎖プロンプト術|AIの推論力を鍛える【東京情報大学・嵜山陽二郎博士のAIデータサイエンス講座】

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思考の連鎖(Chain of Thought, CoT)プロンプティングとは、AIに複雑な問題を解かせる際に有効な手法で、回答の過程を段階的に記述させることで推論能力を高める方法です。単に答えを求めるのではなく、「まず?を考える」「次に?を確認する」といった一連の思考プロセスを明示的に促すプロンプトを与えることで、AIが中間的な論理ステップを経て最終的な解にたどり着くように誘導します。数学の文章題や論理的推論を要する問いに対して、正答率の向上が確認されており、特に大規模言語モデル(LLM)において効果的です。

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思考の連鎖(Chain of Thought, CoT)プロンプティングとは、AI、特に大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)が複雑な課題に取り組む際に、問題解決能力を向上させるために設計されたプロンプト設計技術の一つである。この手法の基本的な考え方は、人間が問題を解決する際に無意識に行っている一連の思考過程を、AIにも明示的に模倣させることで、単なる出力にとどまらず、推論や判断を含むより高度な処理を可能にするというものである。たとえば、「5人のうち2人が赤い帽子をかぶっている。残りの人の帽子の色は何か?」というような問いに対して、AIが即答するのではなく、「まず全体の人数を確認する。次に赤い帽子の人数を引いて、残りの人数を求める。よって他の人は…」というように、途中の思考ステップを一つずつ書き出していくプロンプトを与えることで、AIはより正確で一貫した答えにたどり着きやすくなる。これは特に、算数や数学、論理的な推論、あるいは推理小説の筋書きの解釈といった、複数のステップや条件を必要とする課題において威力を発揮する。通常のプロンプトではAIが誤答を出しやすい問題においても、CoTプロンプティングを用いることで中間的な判断を明示させることができ、モデルの応答の透明性や納得性を高めることができるのだ。この手法の特徴は、従来の「一問一答」型の出力とは異なり、過程重視の出力をAIに促す点にある。CoTの代表的な実装方法としては、「Lets think step by step(段階的に考えましょう)」というシンプルな一文をプロンプトに加えるだけで、モデルの推論の質が劇的に向上することが2022年の研究(GoogleのWeiらによる論文)によって報告されている。この研究では、従来のゼロショット(zero-shot)プロンプティングでは難しかった小学校レベルの算数問題においても、「思考の連鎖」を促すプロンプトを加えることで正答率が大きく改善されたという実験結果が示されており、これは人間の思考に近い形で問題を解決する能力がAIにもあることを示唆している。CoTプロンプティングは、ゼロショット(事前の例示なし)だけでなく、数ショット(few-shot)プロンプティングとの組み合わせにも応用可能であり、たとえば3つの思考過程付きの例を提示し、その後に新しい問題を出すといった方法でもモデルの応答精度を向上させることができる。このようにしてAIに「こう考えるべきだ」という思考の手本を見せることで、モデルは与えられた情報を単に再構成するのではなく、目的に応じて推論の構造を動的に調整しながら答えを導くようになる。この効果は特に、文脈理解や条件付きの判断を求められる問いにおいて顕著であり、たとえば「AさんはBさんより年上で、CさんはAさんより若い。最年長は誰か?」といった問題でも、CoT形式で考えさせることでAIは条件の論理関係を踏まえて順を追って解答することが可能になる。加えて、この手法は人間の教育現場における指導法にも通じる部分がある。たとえば、小学生に算数を教えるとき、先生が「まず何を考えたらいいかな?次にどんな式を立てる?」と導くように、CoTプロンプティングもまたAIに「考える順序」を学ばせる指導的なアプローチともいえる。さらに最近では、CoTの発展形として「Self-Consistency」や「Tree of Thought」といった手法も登場しており、思考の枝分かれや複数候補の比較を通じて、より信頼性の高い答えを選び出す方法も研究されている。これにより、AIは一つの道筋だけでなく、複数の可能性を検討し、それぞれの妥当性を比較する能力も備えるようになってきている。つまり、思考の連鎖を活用することで、AIは単なる情報の応答マシンから、状況に応じた柔軟な推論を行う思考パートナーへと進化しつつあると言える。さらに教育・医療・法務といった高い説明責任が求められる領域においても、CoTは「なぜその答えに至ったのか」を示す透明な過程を提供するため、重要性が増している。AIの判断や提案が人間の意思決定に影響を与える場面では、その根拠が明確であることが不可欠であり、CoTによって可視化された推論のステップは、まさにその信頼性を支える柱となる。加えて、AIの出力に誤りがあった場合にも、思考の過程を確認することでどの段階で誤った判断がなされたかを特定でき、修正や再学習の手がかりともなる。このように、思考の連鎖プロンプティングはAI開発の現場においても、ユーザーとの対話においても極めて有用な手法であり、今後のAI活用における基盤技術の一つとしてさらに注目されていくと考えられる。特に日本の教育分野やビジネスシーンにおいても、ただ答えを求めるのではなく、「どう考えたか」を重視する風土に適しており、AIとの協働を円滑に進める上でもCoTプロンプティングの普及は有意義であると言える。総じて、思考の連鎖は単なる技術的な工夫ではなく、AIと人間の対話の質を高める知的なインターフェースであり、AIが「考える存在」として社会に受け入れられていくための鍵となる概念である。

 

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