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企業物価指数の統計学【統計学講義基礎】


企業物価指数の統計学【統計学講義基礎】

 

企業間で取引される商品・サービスの取引価格を表す指数が、日本銀行の作成する企業物価指数(CGPI)および企業向けサービス価格指数(CSPI)です。
略称はCorporate Goods/Services Price Indexの頭文字です。

 

CGPIには卸売物価指数(Wholesale Price Index, WPI)の基準時点を2000年に改訂した際に、最近では卸売市場を経由する取引が相対的に低下したことから名称を変更したもので、前身のWPIには19世紀末からの長い歴史があります。

 

海外の主要国でも卸売物価指数は廃止されましたが、その代わりに原材料、中間財、最終財などの加工段階別の指数を作成し、生産者に近い段階で価格を調査しており、名称も生産者価格指数(Producer Price Index, PPI)が用いられています。

 

これに対して、日本銀行では生産者段階での価格調査が不十分で流通段階の価格が混在しているとして生産者価格指数は作成していません。

 

CGPIの個別指数は重要であり、生産額の実質化に多用されています。

 

一方で、価格の意味が曖昧な総合指数は景気動向を表す指標として注目されています。

 

CGPIには国内、輸出、輸入の3指数とこれらを総合した指数がありますが、意味が不明確な総合指数は経済分析ではほとんど利用されず、国内での取引を分析するときは国内物価指数と輸入物価指数を統合し、国内生産を重視するときには国内物価指数と輸出物価指数を統合して利用するなど、目的に応じて組み替えた指数が利用されます。

 

価格調査は国内、輸出入でそれぞれ行われます。

 

国内価格については、2002年時点では1,745の企業等を対象として、5,500を超える価格を毎日調査しています。

 

その際、CPIと同様に、調査対象の銘柄を指定するという工夫が行われていますが、大量購入の割引や、販売契約期間などの取引条件が異なれば価格が変わるなどの商習慣から、小売段階の価格調査よりも同一条件の価格を捉えることが難しくなっています。

 

算式はラスパイレス指数であり、ウェイトには製造業事業所の出荷額から輸出額を控除するなどの方法で得られる国内出荷額を用いています。

 

指数計算の対象となる品目を採用する基準も、出荷額に占める割合の大きな商品を中心としており、2000年基準指数では、国内企業物価指数で910品目、輸出、輸入でそれぞれ200-300品目が採用されています。

 

図のようにCPIとCGPIは異なる動きを示していますが、その大きな理由は、両者が対象としている価格が違うためです。

 

とくにCPIでは人件費が主要な決定要因であるサービスの占める割合が大きいのに対して、CGPIではサービスは対象外です。

 

具体的には1985年から2000年にかけての上昇率はCPIが116.1、WPIが87.7、CSPIが109.8となっています。

 

企業向けのサービス価格

 

CSPIは1991年に開始された新しい指数で、1985年までさかのぼって作成されています。

 

CGPIは企業向けのサービス価格を対象とするものであり、具体的にはソフトウェア開発、データ処理などの情報処理サービス、運輸、広告などが含まれます。ところで、品質を一定にするという点からは、サービスはきわめて難しい対象です。

 

ソフトウェア開発の例でも、その内容は千差万別で標準化することは容易ではないため、海外でも企業向けサービス価格指数はイギリスなどを除いてはほとんど作成されていません。

 

この難点に関しては、CSPIは各品目ごとに多数の価格を調査するという方法で対応しており、日本銀行によれば2001年の調査価格数は約3,000、1品目あたりの平均価格数は約29となっています。

 

この点で、品目当たりの価格数を少なくして同一の銘柄を追跡するCGPIやCPIと考え方が異なります。

 

品質を一定に保つことが原理的に難しいことから、サービスの内容が時間とともに少しずつ変化していっても、多数の価格を調査するという方法によれば、連鎖指数と同様な性格を持った指数が作成できることになります。

 

CSPIでもラスパイレス算式が用いられ、そのウェイトは産業連関表の中間取引額を基礎データとしています。

 

図は1985年以降のCSPIとCPI、WPI(CGPI)の変化を示したものです。

 

CSPIに関しては、1995年基準が最新の指数であることから水準が違っていますが、1980年代後半の指数の動きはCGPIよりもCPIに近いことが読み取れます。

 

このような違いは、上述のように指数の対象とする価格が異なっていることが原因であり、それぞれの指数の持つ役割の違いが理解できます。

 

 

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