研究デザインの理解の重要性|【統計学・統計解析コラム】
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研究デザインの理解の重要性
まずは次の新聞記事を読んでみましょう。
ブラジャーを毎日12時間以上着用すると、乳がんのリスクが21倍に増大
乳がんはブラジャーの着用と深い因果関係があると論じる研究者もアメリカにはいる。
〇〇は、ブラジャーがリンパ系を締め付け、発がん性のある毒素が乳房内に滞留し乳がんを発症させるのではないかと考える。
〇〇はこの仮説を検証してみるべく2年半にわたるリサーチを行っている。
1991年5月から1993年11月までの期間、米国の5つの都市を訪問し、乳がんを患っている女性2056人と乳がんと診断されたことのない女性2674人の合計4730人の女性たちからアンケートをとり、ブラジャーの使用状況について調査した。
以下の表はその調査結果をまとめたものである。
ブラジャーの着用時間 乳がん罹患率
24時間 3/4
12時間以上、ただし就寝時は非着用 1/7
12時間未満 1/152
全く、ほとんど着用せず 1/168
結果はブラジャーの着用時間と乳がんに罹るリスクとの間に強い相関関係があることを示している。
すごい結果ですね。
ブラジャーを1日24時間着用し続けたグループでは乳がんに罹るリスクがなんと3/4=75%、ほとんど着用しないグループに比べると、126倍です。
でも、この結果、怪しいんですよね。
正しく結果が示されていないのではと疑ってしまいます。
これを理解するためには、観察研究デザインについて深く理解しておく必要があります。
この研究は、乳がんを患っている女性をケース、乳がんと診断されたことがない女性をコントロールとするケースコントロール研究です。
ところが、表には乳がんの罹患率(率と書いていますが割合の意味です)が記載されています。
ケースコントロール研究ではリスクを計算してはいけません。
だから、この研究の結果は怪しいのです。
データを見ると、ついついその数値の大小ばかりに目が向いてしまいます。
しかし、どのようにデータを収集したのかによって、その数値の意味するところは大きく変わってしまうのです。
まったく意味がない場合すらあるのです。
研究デザインに注目することは非常に重要なことです。
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