ナーシング・ホーム入所による変動|【統計学・統計解析講義応用】
ナーシング・ホーム入所による変動
外生変数による変動
分母を,たとえば4から2にというように小さくできれば,ナーシング・ホーム入所による抑うつへの影響を,より純粋に,またより正確に推定できる.
コントロールの手段すべてが,外生変数による変動を減らす助けとなり,研究をデザインする際に考慮したほうがよい.抑うつレベルにおける全体の変動は,次の3つの要素をもつと考えられる.
抑うつにおける全体の変動=ナーシング・ホーム入所による変動+年齢による変動+他の外生変数による変動
この等式は,次のことを意味していると考えてよい.
すなわち,高齢者が抑うつになるかならないかという差が生じる理由の一部は,ナーシング・ホームに入所したかしなかったか,高齢者か若者か,そして,痛みのレベルや医学的予後,ソーシャル・サポートの入手可能性のような他の因子である.
この研究で精度を高める1つの方法は,年齢をコントロールすることであろうし,そうすると,年齢の差による結果としての抑うつにおける変動は除外される.
たとえば,等質性によって(つまり,かなり狭い年齢範囲内の高齢者のみを標本とするということで),また,年齢をブロック変数としてもちいたり,統計学的にコントロールすることによって,こういうことができるであろう.
こうした方法のいずれかを使って,年齢による抑うつにおける変動は,減ったり除外されたりする.
結果として,ナーシング・ホーム入所による抑うつへの影響は,残っている外生変数の変動に比例して,より大きくなる.
このように,これらのデザインによって,ナーシング・ホーム入所による抑うつレベルへの影響について,より正確に推定できる.
研究下にある影響を統計学的用具で検出できる感受性は,研究デザインによってかなり異なる.
リプスィ〔Lipscy, 1990〕は,研究デザインの感受性を高めようとする研究者の助けとなる,優れたガイドをつくった.
参加のモニタリング例
コウワン,バイク,バジンスキー〔Cowan, Pike, &Budzynski, 2001〕は,急性心不全になった患者の死亡率を減少させるうえでの,心理社会的な看護セラピーの効果について,厳密な実験研究を行った.介入群(11の個々のセラピーの場)とコントロール群に,無作為に対象を割り付けた.
介入プロトコルを管理する人々を,長期にわたって訓練した,対象が介入を遵守しているかを,注意深くモニターし(例:セラピストがそれぞれの対象についてチェックリストに記入していった),優れていると判断した.
対象が研究参加をやめた場合,統計学的結論妥当性も内的妥当性(次に論じる)も,ともに妥協しなければならないだろう.
こうした研究のデータを分析する場合,研究者は,ある条件に「入る」者として誰を「数えて」よいのか,ジレンマに陥る.
ときどきもちいる方法がオン・プロトコル分析(on-protocol analysis)であり,処理群のメンバーは,実際に処理を受けた人だけである.
しかし,このような分析には難点がある.標本が,関心あるグループ全体を代表しておらず,介入なしという条件を自己選択することが,グループの比較可能性を無効にするためである.
この種の分析は,処理の効果を積極的に評価する方向に偏ることが多い.
より慎重な方法は,包括解析(intention to treat:ITT)という原理をもちいることであり,これは,各対象が,割り付けられた処理を受けたということを前提とする分析である.
しかし,多くの対象が,割り付けられた処理を実際に受けなかった場合,処理の効果が過小評価されるかもしれない.
データを両者の方法で分析し,アウトカムが同じだった場合,研究者は,研究結果にさらに自信をもつことができる.
もう1つの方法は,受けた処理の「量」の測定値を分析に投入するものである.
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