一元配置法の統計学|【実験計画法の統計学・統計解析】
一元配置法の実験は、特定の要因の影響を調べる際に用いられる。例えば、大きな要因が残っている場合や、多くの要因の中から1つの因子の影響を詳しく調査する場合に有効である。この実験では、因子の水準数や繰り返し数に制限はない。データを分散分析する際には、総変動を因子間変動と誤差変動に分解して検定する。また、分析の際はランダムな順序で実験を行い、変動の計算や分散分析表の作成を行う。
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一元配置法の統計学
一元配置法の実験は、ある特性値に対して、1つの因子の影響を調べたいときに用いられます。
したがって、この計画を用いる場面は、
@要因の調査がある程度進んで、残った大きな因子についての影響を調べたいとき
A多くの要因の効果があると考えられるが、大づかみにある1つの因子の影響を調べたいとき
などです。
この計画の実験では、因子の水準数、各水準ごとの繰り返し数には特に制限はありません。
いずれの場合でも、この計画のデータを分散分析するには、基本的には、総変動を因子間変動と誤差変動に分解して検定することになります。
繰り返し数が一定の場合
この計画の実験では、とり上げた因子の各水準ごとに同数のくり返し実験を行ってデータがとられます。
一般に、因子Aについてk水準をとり、各水準ごとにn個の繰り返しを計画した一元配置法の実験では、表のようなデータが得られます。
この場合、全実験はランダムな順序で行うのが原則であり、このため乱数を用いて実験順序を決定します。
分散分析の方法
例題1
いま、分析課に4人の分析担当者がいます。
この各担当者の分析値に差があるかどうかを調べるため、標準試料を同一装置で各4回ずつ繰り返して分析させることとしました。
計16回の実験はランダムな順序で行い、次表のようなデータを得ました。
各担当者の分析値に違いがあるかどうか検討せよ。
この例題は、水準数k=4、繰り返し数n=4の一元配置法による実験です。
以下、このデータを例にとって分散分析の手順を示します。
分散分析の手順
手順1 原データのグラフ化
原データをグラフに表し、因子の効果の概略を把握します。
この図より、各分析担当者ごとにかなりの分析誤差が認められますが、それ以上に分析者間に大きな差があるようです。
この差を統計的に検定するため、以下の解析を行います。
手順2 原データの集計
原データについて、各水準の計、総計、および総平均値を求めます。
なお、この結果は手順3における原データの数値変換のチェックに用いたり、各水準の母平均の推定の際に用いたりします。
総平均値:
手順3 原データの丸めと変換
計算を簡単にするため、原データの丸めと変換を行います。
@ 原データの変動部分が2〜3桁になるように下位から丸める
A 丸めたデータから一定数(なるべく総平均値に近いラウンド・ナンバー)を引き、データが整数になるように簡単な数h(100, 10, 5, 2など)を掛けます。
つまり、変換後のデータは次の式のようになります。
このステップは、互いにどちらを先にやっても構いません。
この例題1は原データの変動部分が2桁であり、したがってAの数値変換のみを行えばよいことになります。
この変換の結果をまとめると、以下表のようになります。
変換後は、変換データから総平均値を求め、先に原データから求めた総平均値と比較して、変換に誤りがないかチェックします。
変換データから求めた総平均値は、
原データから求めた総平均値は、
両者は一致しています。したがって、変換には誤りがないものと考えられます。
なお、原データが変換を必要としていない場合は、原データ表を表のごとく見立てて以後の計算を行います。
手順4 補助表の作成
変動の計算に必要となる変換データの二乗表を作成し、総計を求めます。
手順5 変動の計算
修正項(correction factor, 略してCF)を求めます。
総変動Sを求めます。
因子Aの水準間変動SAを求めます。
誤差変動SEを求めます。
なお、SEを求める別法としては、
となります。
手順6 自由度の計算
各変動の自由度を求めます。
総変動の自由度:
因子の水準間変動の自由度:
誤差変動の自由度:
手順7 分散分析表の作成
手順5、6で求めた変動および自由度を、以下表のような形式の分散分析表にまとめます。
原データを変換のうえ計算している場合は、変換をもとに戻すため各変動に1/h2を乗じてから分散分析表を記入します。
この例題1では、各変動に1/h2=1/100を乗じてから表を作成しました。
s.s.:sum of square 偏差平方和、変動
d.f.:degree of freedom 自由度
m.s.: mean square 平均平方、不偏分散
Fo:平均平方(不偏分散)の比。観測値から求めた値なので、observed value(観測値)のoをつける。
上表の結果から、因子Aの各水準間の変動について、
ならば有意差なし、
ならば有意水準5%で有意差ありと判定して、分散分析表中のFoの数値の右肩に星印をつける。
また、
ならば、有意水準1%で有意差ありと判定して、分散分析表中の右肩に星印をつけます。
この判定法を図示すると以下のようになります。
この例題1では、
したがって、
すなわち、因子の水準間の変動は、誤差変動に対して有意水準5%で有意差が認められます。
この結果、4人の分析担当者には、標準試料の分析値の出し方に差があることが認められました。
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