臨床データマネジメント【医療統計解析】

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臨床データマネジメント|【医療統計学・統計解析】

臨床データマネジメント【医療統計解析】


目次  臨床データマネジメント【医療統計解析】

 

 

臨床データマネジメント

 

臨床データマネジメント(CDM ; Clinical Data Management)という業務を考えた場合に,様々な業務が存在しているが,一般的に対象としてまず思い浮かべるのは症例報告書に関する仕事であろう.

 

しかしながら,省令GCPでは,臨床試験データを記録する症例報告書について次のような規定がある.

 

(症例報告書等)

 

第四十七条 治験責任医師等は,治験実施計画書に従って正確に症例報告書を作成し,これに記名なつ印し,又は署名しなければならない.

 

2治験責任医師等は,症例報告書の記載を変更し,又は修正するときは,その日付を記載して,これになつ印し,又は署名しなければならない.

 

3治験責任医師は,治験分担医師が作成した症例報告書を点検し,内容を確認した上で,これに記名なつ印し,又は署名しなければならない.

 

また,省令GCPの施行に関する薬発第430号の通知で次の補足がある.

 

(症例報告書等)

 

第47条関係 

 

治験責任医師は,本条の規定に従って作成された症例報旨書(治験分担医師が作成したものを含む)を治験依頼者に提出すること。

 

すなわち,症例報告書の作成責任は全て治験責任医師にあり,治験依頼者にはないというように読み取ることもできる.

 

さらに これらを補足するものとして省令GCPと同時に示された中央薬事審議会答申GCP (答申GCP)では,症例報告書に関して次のような記載がある.

 

6-2-9 症例報告書等の記録及び報告

 

6-2-9-1治験責任医師又は治験分担医師は,症例報告書を治験実施計画書の規定に従って作成し,記名捺印又は署名の上,治験依頼者に提出しなければならない.また,治験依頼者に提出した症例報告書の写しを保存するものとする.

 

6-2-9-2治験責任医師は,治験分担医師が作成した症例報告書について,それらが治験依頼者に提出される前にその内容を点検し,問題がないことを確認した土で記名捺印又は署名するものとする.
治験責任医師は治験分担医師が行った症例報告書の変更又は修止についても点検し,問題がないことを確認しなければならない.

 

6-2-9-3治験責任医師は,治験依頼者に提出する症例報告書及びその他の全ての報告書のデータが、正確,完全で,読みやすく,提出の時期が適切であること,及び被験者の識別に被験者識別コードを用いていることを保証するものとする.

 

6-2-9-4症例報告書中のデータのうち原資料に基づくものは,原資料と矛盾しないものでなければならない.原資料との何らかの矛盾がある場合には,治験責任医師はその理由を説明する記録を作成して治験依頼者に提出し,その写しを保存しなければならない.

 

6-2-9-5治験責任医師又は治験分担医師は,症例報告書の変更又は修正に当たり治験依頼者から提供された手引き(8-1-11-4参照)に従わなければならない.症例報告書のいかなる変更又は修正にも,日付の記人及び捺印又は署名がなされ,重大な変更又は修正については説明が記されなければならない.また,変更又は修正は当初の記載内容を不明瞭にするものであってはならない(すなわち,監査証跡として保存するものとする).このことは文書及び電子データの変更又は修正の双方に適用される(8-1-11-1 3), 8-1-22-2 14)参照).

 

6-2-9-6治験責任医師は,症例報告書の変更及び修正の記録を治験依頼者に提出し,その写しを保存しなければならない.

 

けれども,実際に臨床試験データを収集し,まとめを行うのは治験依頼者である.

 

このため,症例報告書がきちんと作成されていることを確認・管理していくことは治験依頼者の責務である.

 

あくまでもこれらの条文は,治験責任医師が他人のための仕事だからと無責任な症例報告書の作成をしないようにという注意喚起としてのレベルであると認識すべきである.

 

現実的には,医師がどれほど真剣に取り組んだとしても症例報告書の作成作業は人問が行うことであるため完全なものであるという保証はなく、記入漏れや書き間違いなどの人為的なミスが起こってしまう可能性はどうしても否定できない.

 

また,一般的な臨床試験は複数の施設で実施されることがほとんどであり,複数の医師が関与することになるため,これらの医師間で症例報告書の記載方法や最終判定の判断基準が完全に均一になっているとは限らない.

 

さらに,最終的な集計・解析を行うためにコンピュータに症例報告書に記載されている臨床試験データを入力することになるが,この際にも入力ミスなどが発生する余地がある.

 

このように集計・解析を行おうとしている臨床試験データに,意図しないばらつきや誤りが混入してくる要因はいくつも考えられる.

 

誤った臨床試験データを集計・解析した場合に,得られた結果が正しいものとは言えない.

 

そこで,集計・解析で得られた結果を正しいものにするため,臨床試験データに誤りやばらつきが混入することを避け,正しいデータ収集が可能になるように努力する業務が「臨床データマネジメント」である.

 

症例報告書についても,医師にまかせっきりにするのではなく,医師と協力して品質を高められるように努力をしていくことが極めて大切なことである.

 

実際に,答申GCPには治験依頼者の責務として次のような記載がある.

 

 

8-1-1 治験の品質保証及び品質管理

 

8-1-1-1治験依頼者は,治験の実施並びにデータの作成,記録及び報告が,治験実施計画書,薬事法第14条第3項及び第80条の2に規定する基準並びに本基準を遵守して行われることを保証するために,標準業務手順書に基づく品質保証及び品質管理システムを履行し,保持する責任を有する.

 

8-1-1-2治験依頼者は,治験に関連する全ての施設及び原資料等の全ての治験関連記録を,治験依頼者によるモニタリング及び監査,並びに国内外の規制当局による調査のための直接閲覧が可能であるように全ての関係者との合意を治験が開始される前に得ておくものとする(5-1-2,6-1-4, 8-1-18-1,9-2 4)参照) .

 

8-1-1-3治験依頼者は,治験に関連する全てのデータの信頼性とその適正な処理を保証するために,データ取扱いの各段階に品質管理を適用しなければならない.

 

8-1-1-4治験依頼者は,医療機関の長,治験責任医師及びその他治験に関与する全ての者との合意を,医療機関との治験契約書及び治験実施計画書の一部又は別個の合意文書として文書化し保存しておかなければならない.

 

このように治験そのものが品質を管理し,保証できるように実施されなければならないと明確に規定されており,当然のことであるが臨床試験データもその適用を受ける.

 

さらに,答申GCPの別の項目にはデータの取り扱いについて次のような記載がされており,やはり品質管理と品質保証を求めている.

 

8-1-11 データの取扱い

 

8-1-11-1治験依頼者は,データの処理に当たって,電子データ処理システム(遠隔操作電子データシステムを含む)を用いる場合には,次の事項を実施しなければならない.

 

1)電子データ処理システムが,完全性,正確性,信頼既及び意図された性能についての治験依頼者の要件を満たしていることを保証し,文書化すること(すなわちバリデーションされること) .

 

2)当該システムを使用するための標準業務手順書を整備すること.

 

3)当該システムが,入力済みのデータを消去することなしに修正が可能で,データ修正の記録をデータ人力者及び修正者が識別されるログとして残せる(すなわち監査証跡,データ入力証跡,修正証跡が残る)ようにデザインされていることを保証すること(6-2-9-5参照) .

 

4)データのセキュリティ・システムを保持すること.

 

5)データのバックアップを適切に行うこと.

 

6)データの修正を行う権限を与えられた者の名簿を作成し,管理すること(6-1-8及び8-1-11-4参照) .

 

7)盲検化か行われている場合には,盲検性が保持されるようにすること.

 

8-1-11-2治験依頼者は,処理中にデータの変換を行う場合には,処理前のデータと処理後のデータを常に対比し得ることを保証しなければならない.

 

8-1-11-3治験依頼者は,各被験者について報告された全てのデータの識別を可能にする明確な被験者識別コードを用いなければならない.

 

8-1-11-4治験依頼者は,治験の実施に先立って,治験責任医師及び治験分担医師に症例報告書の変更又は修正に関する手引きを提供するものとする(6-2-9-5参照).また,治験依頼者が指名した者によって行われた症例報告書の変更又は修正においては,それらが文書に記録され,必要なものであり,かつ治験責任医師が承認したものであることを保証するための手順書を作成しておかなければならない.

 

本質的にはGCPそのものが臨床試験に対する品質管理と品質保証を求めていると考えることができ,「臨床データマネジメント」とは,臨床試験データを取り扱うための品質管理を実施し,最終的にその品質を保証することがその役割なのである.

 

治験を中心に説明を行ったが,この品質を保証するという考え方は,あらゆる臨床試験に対して適用されるべきものである.

 

 

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