データ収集の方法|【統計学・統計解析講義応用】
データ収集の方法
臨床試験データの収集には、様々な方法が考えられます。
これは、臨床試験を依頼する側の体制や予算によって実施可能な方法が異なるためだけではなく、臨床試験の目的によっても要求される品質水準が大きく異なるためです。
施設からの臨床試験データの収集には一般的には症例報告書が用いられます。
このため、症例報告書の作成に際しては、臨床試験データの収集方法の違いによる要求事項についても、検討しておく必要があります。
具体的な臨床試験データの収集方法としては、次のようなものが考えられます。
目次
施設を直接に訪問して症例報告書を入手
製薬企業が行う治験や市販後臨床試験などで一般的に行われている方法でモニターあるいは医薬情報担当者(MR: Medical Representative)と呼ばれるスタッフが施設を直接訪問して症例報告書を入手するものです。
医師などと直接に情報交換できることから、臨床試験の実施に関する状況を的確に把握・管理すること、すなわちモニタリングが可能となり、問題が発生した場合も直ちに対応できることが期待されるため、臨床試験の質および臨床試験データの質の確保を実現することが比較的容易です。
さらに臨床試験データの入手に際して、第三者が介在していないため輸送中の紛失などの危険性が極めて低くなります。
しかし、臨床試験の規模により必要とされるモニターあるいは医療情報担当者の数は莫大なものになること、モニターあるいは医療情報担当者のレベルを一定水準以上に保つ必要があるなど、運用に際してはかなりのコストが必要になります。
FAXより症例報告書を入手
医師などにより記載された症例報告書を迅速にセントラルのデータマネジメント部門などが入手するために用いられる方法で、FAXにより症例報告書を入手するものです。
この場合、直接に施設からセントラルにFAXされる場合だけでなく、モニターあるいは医薬情報担当者が営業所などといった地方の拠点からセントラルにFAXするという場合も考えられます。
モニターあるいは医薬情報担当者などが介在することは必須ではないため、運用に関してのコストは限られたもので十分に対応することができます。
このため、医師による自主研究などで用いられることも多くなります。
技術的には、FAXで送られた症例報告書をOCR(Optical Character Recognition)により直接にコンピュータデータベースに取り込むことなどの対応も不可能ではないです。
ただし、FAX送信時に表裏を間違えてしまったり、送信先番号を間違えるというような人為的なミスや通信エラーなどに関する対応策が必要となります。
郵送により症例報告書を入手
医師などにより記載された症例報告書を、郵送によりセントラルのデータマネジメント部門などに送付してもらう方法です。
先のFAXによって症例報告書が施設から直接に送信された場合などで、原本を入手するために補完的に利用されることが多いです。
あるいは臨床試験データの入手について迅速性を必要としあい場合に用いられることもあります。
フロッピーなどを介してのファイルによる臨床試験データ収集
症例報告書は別途、モニターあるいは医薬情報担当者が入手するか郵送で入手するとして、臨床試験データについては施設においてデータ入力を行い、フロッピーディスクや電子メールなど何らかの方法でファイルなどの電子媒体としてセントラルに引き渡される方法です。
また、臨床検査などを集中測定で実施した場合には、医師への紙での結果報告書の提供とは別に、臨床検査センターとセントラルの間でオンライン、あるいはファイル転送などの手法を用いて臨床試験データ収集が行われることも多くなってきています。
インターネットを利用してWebページなどでの臨床試験データ収集
インターネット上のWebページなどを利用したRemote Data Entryという方法も用いられるようになってきています。
電話などによる臨床試験データ収集
最近では、銀行やコンピュータのサポートセンターなどで利用されているIVRS(Integrated Voice Response System)という電話を利用した音声応答システムで症例の割り付けや患者日誌の情報を直接にセントラル側で収集することも行われています。
さらに、患者日誌についてはPDA(Personal Digital Assistance:携帯情報端末)を利用してのデータ収集ということも試みられています。
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