臨床試験データの利用【医療統計解析】

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臨床試験データの利用|【医療統計学・統計解析】

臨床試験データの利用【医療統計解析】


目次  臨床試験データの利用【医療統計解析】

 

 

臨床試験データの利用

 

収集された臨床試験データは,基本的にはその臨床試験での成績として有効性や安全性の評価に用いられる.

 

ここで言う有効性や安全性の評価とは患者ごとの評価だけではなく,普遍的にその薬の候補物質が患者にとって意味を持つかということを検討するということである.

 

つまり,ある患者だけに優れた有効性と安全性が保証されたとしても臨床試験全体として考えた場合にはほとんど有効でなかったとすれば,一般的な医薬品として流通させることが妥当なものであるとは言い難い.

 

もちろん,患者の持つ背景的な因子,たとえば女性にだけはよく効いて安全であるというようなことが明確に証明された場合には,そのような患者に対する有効で安全な医薬品として使用されるようになることはあり得る.

 

今後,遺伝子情報などの解析を利用することにより,このような薬の効きやすさや副作用発現のリスクなどが予め判別できるようになる可能性は高くなっていくと思われる.

 

既にいくつかの疾患領域では, SNPs (Single Nucleotide Polymorphisms ; 単一ヌクレオチド多型)を検討することにより,薬の効きやすさや副作用発現のリスクの予測,あるいは将来的にその疾患に罹りやすいのかどうかということを予測しようということが行われている.

 

このような場合には,過去に蓄積された患者の臨床データを参照することが必要になることが多い.

 

収集された臨床試験データは先に述べたように集計・解析され,その臨床試験での薬効評価を行うということだけのために用いられるわけではない.

 

正確な臨床試験データは,将来的な情報の提供についても対応することができるようになる.

 

 

たとえば,これから治療しようとする患者の性別や年齢などの因子が既存の臨床試験データ中で類似している患者を検索することにより,治療効果の推移や有害事象の発現可能性などを予め推定することが可能になるかもしれない.

 

あるいは,複数の臨床試験データを併合してメタアナリシス(Meta analysis)を行うことにより確度の高い情報を得ること,副作用に関する広範囲な情報を分析すること,市販後調査などの企画・立案などを行うための基礎資料として利用することもできる.

 

また,患者が支払った費用のデータを収集することができるならば,臨床試験の成績と組み合わせて解析することにより,医療経済学(Health Economics) /薬剤経済学(Pharmacoeconomics)の分析を行うこともできるようになる.

 

すなわち,有効性と安全性については既存の治療と同様であっても,1回の来院に伴う治療費や検査代が10,000円であったものを1,000円にすることができたならば患者にとって経済的なメリットをもたらすであろうということが推定できる.

 

さらに疫学的な調査と組み合わせることにより,将来的な癌などへの移行に対する影響なども検討することが可能である.

 

このほかに,その臨床試験が目的とした適応症については有望な結果が得られなかったとしても,新たな適応症を見つけることができるような場合がある.

 

具体的な例として最近の新薬では,育毛剤として用いられているミノキシジルが有名である.

 

ミノキシジルは血管拡張,血行促進の作用があることが知られていたため,当初は降圧剤としての開発が行われていたが,期待される効果を得ることができず開発が断念されてしまった.

 

しかし,興味深い副作用として発毛という報告が多数認められたため,これを適応症としての新たな開発が行われ,育毛剤として承認されたのである.

 

これらのことも正確な臨床試験データが集積されていたからこそ,解明できたことである.

 

 

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