GDP(国内総生産)とSNA(System of National Accounts)|実質化とインプリシットデフレータ【統計学・統計解析講義基礎】

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GDP(国内総生産)とSNA(System of National Accounts)|実質化とインプリシットデフレータ【統計学・統計解析講義基礎】
GDP(国内総生産)など、一国経済の全体像を記述するための国際的基準はSNA(System of National Accounts)と呼ばれ、企業会計に類似の勘定として体系的に作成される。現時点の体系は1993年の国連勧告に基づくもので、93SNAと略称される。名目値を実質値で割ったGDPデフレータがSNAで用いられる物価指数であり、間接的に求められる価格指数を一般にインプリシットデフレータと呼ぶ


目次  GDP(国内総生産)とSNA(System of National Accounts)|実質化とインプリシットデフレータ【統計学・統計解析講義基礎】

 

GDP(国内総生産)とSNA(System of National Accounts)

 

GDP(国内総生産)など、一国経済の全体像を記述するための国際的基準はSNA(System of National Accounts)と呼ばれ、企業会計に類似の勘定として体系的に作成されています。

 

現時点の体系は1993年の国連勧告に基づくもので、93SNAと略称されています。

 

企業は労働、資本などの生産要素と原材料を投入して財・サービスを産出します。

 

これは、他の企業の原材料として使用される中間消費の他、最終財として消費、設備投資などの国内最終需要、さらに輸出として販売されます。

 

一方で、(産出額−中間投入額)と定義される付加価値は、固定資本減耗と間接税(補助金は負の間接税)を除いたあとで、労働と資本の間で報酬として配分されます。

 

さらに、企業や家計は配当や利子等の受払いを行い、報酬から直接税を納める一方で年金などの給付を受けるなど、所得の再分配が行われます。

 

その結果として与えられる可処分所得から財・サービスの消費、住宅、企業設備などの投資(固定資本形成と呼びます)が行われます。

 

SNAは、このような経済の循環を表現するため、複式簿記と似た形式の勘定を用いて構成された経済統計の体系です。

 

主要な勘定として「生産」「所得の受取と処分」「資本の蓄積」という3つがあります。

 

図に示した3つの勘定は、海外との輸出入を省略した簡単な形のものですが、さらに輸出Eと輸入Mを導入すれば、生産勘定の右辺(貸方)はC(消費)+I(投資)+E(輸出)−M(輸入)となり、これが国内総生産(GDP、Gross Domestic Product)を支出面から捉えたもの(国内総支出とも呼びます)です。

 

生産勘定の左辺(借方)は生産された付加価値であり、Y(要素所得=雇用者報酬+営業余剰)とD(固定資本減耗)に分解されます。

 

ここで固定資本減耗(D)とは、設備などの生産能力の減少部分を表し、会計上の減価償却の概念に似ていますが、会計処理ではなく生産能力に対応するものですので、その推計は他の項目に比較して困難です。

 

そのため、Dを含めたままで生産を評価するのが総生産です。

 

GDPは国内粗生産とも呼ばれますが、これからDを除いたものが国内総生産(NDP)です。Dに関する推計の精度を考慮すると、国際比較や時点間比較のためにはGDPの方が適切と考えられます。

 

GDPの他、国民総所得(GNI, Gross National Income9という概念もあります。

 

これは93SNA以前の国民総生産(GNP)に類似していますが、国内で発生した所得に、非居住者である国民の得る所得を加えたものです。

 

GDPとGNIの違いは国民の代わりに県民を考えるとわかりやすいです。

 

千葉県の居住者が東京都で働いて報酬を受け取ると、それは千葉県の県民総所得には含まれますが、県内総生産には含まれません。

 

所得支出勘定では要素所得に財産所得などの(純)受取を加えた可処分所得が、消費支出と貯蓄に分解されます。

 

貯蓄勘定は設備投資や金融資産など、資産をどのようにして調達した資金で賄ったかを表すもので、粗投資(I)が貯蓄(S)と固定資本減耗(D)の和となります。

 

これを書き換えれば、「純投資(I−D)=貯蓄(S)」という、経済学でよく知られた関係が導かれます。

 

なおGDPには主婦の家庭内労働など、無償労働は原則として含まれていません。

 

例外として持ち家の家賃は持ち主が自分自身に支払うという帰属計算を取り入れていますが、豊かさの尺度としては限界があります。

 

 

実質化とインプリシットデフレータ

 

以上の概念には各時点の価格で評価した名目値のほか、価格変動の影響を排除して実質的な生産水準を表現するための実質値があります。

 

特に、実質GDPの成長率は経済成長率とよばれる基本的な指標です。

 

概念的には、実質値は、基準時点の価格を固定して、各時点の生産額を(基準時点価格×数量)と評価することで得られます。

 

比較時点(t)のGDPを構成する各財の価格と数量をpt、qtとし、基準時点価格をp0とすると、名目GDPはpt×qtの合計、実質GDPはp0×qtの合計で与えられます。

 

名目値を実質値で割ったGDPデフレータがSNAで用いられる物価指数であり、算式で見ると、

 

(pt×qtの合計)/(p0×qtの合計)となり、パーシェ指数の形をしていることがわかります。

 

このように間接的に求められる価格指数を一般にインプリシットデフレータと呼びます。

 

GDPデフレータはラスパイレス指数である消費者物価指数や卸売(企業)物価指数と比較して低めに出る傾向があることも、ラスパイレス指数の性質から理解できます。

 

 

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