SNAと産業連関表【社会経済統計解析】

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目次  SNAと産業連関表【社会経済統計解析】

 

SNAと産業連関表

 

SNAと産業連関表

 

SNAは前節で述べたように,フローとストックを対象にしており5勘定を視野に入れている。

 

調惟勘定(フローとストックとの調整)を含めれば6勘定といえるが,それは5勘定が正確に求められていれば,残差的な性格をもつ(ただし,現実には調整勘定は重要な情報を与える)。

 

ここでは5勘定のうち,生産勘定の基本となる産業連関表(I-O表)について述べる。

 

3部門からなる産業連関表の模型では、一般的に,徇はj部門からj部門への中間財投入を示す。

 

産業連関表は行方向に見れば産出の販路が,列方向に見れば産出の費用枇成が示される。

 

これが経済表としての産業連関表の側面である。

 

産業連関表には分析的側面もある。

 

それには,大きく産出決定モデルと価格決定モデルとあるが,ここでは前者のオープンモデルについて述べておく。

 

議論を単純化するために,各部門の輸出入をゼロとすると、産出が中間需要と最終需要の和であることを示す。

 

ここで,生産技術の一つの表現として,固定投人係数を導入する。

 

すなわち,中間財の投入に関し,j部門の産出馬の生産に必要なy部門からの投入勾が技術的に一定であると仮定する。

 

投入係数を一定として,最終需要が与えられたとき,それに見合った各部門の産出が求められる。

 

産業連関分析の要は投入係数にある。

 

この場合,技術の安定性が重要であって,部門の適切な細分化が必要となる。

 

部門分類が粗いと,部門の商品構成という技術とは無関係な要因によって,投入係数が変化するからである。

 

わが国の産業連関表は,5年ごとに各省府庁の共同で作成されてきている。

 

2000年表の基本分類部門数(最も詳しい表)は「517×405」である。

 

この基本分類表を集計した正方型(行と列の部門が一致している型)の表も作成−公表されている。

 

今まで「部門」という言葉を使用してきたか,部門には産業(SNAでは経済活動という)と商品(財・サービスという)の2種類か存在する。

 

それらは, SNA年報における行列表に対応する。

 

すなわち,各産業の商品別投入表であり,5年ごとに公表される。

 

各産業がどの商品を生産したかを示す産業別商品産出表から、投入係数を算出することになるが, SNA年報では表の投入構成比を投入係数と呼び,公表している。

 

しかし、投人係数は原理的には商品で定義されるべきものであり,表から算出するためには,技術に関する仮定が必要であるが(国連68SNA参照),ここでは立ち入らない。

 

もう一つ注意すべき点は生産活動指標である。

 

たとえば,自動車産業が自動車だけを生産している(産業と商品が一致)とし,金属製品30単位,他の原材料50単位,労働等20単位(付加価値部門)を用いて100単位の自動車を生産しているとする。

 

このとき,自動車産業の生産活動指標として何をとればよいのであろうか。

 

それは目的による。

 

第一は産出100であり,これは産業連関分析,景気動向の分析に有効である。

 

第二は付加価値20である。

 

金属製品30,他の原材料50は自動車産業が生産したものではなくて,金属産業等が生産したものである。

 

自動車産業の生産活動は,金属製品等を使用して自動車を生産したところにある。

 

したがって生産活動指標は

 

産出−中間投入=付加価値

 

とするのである。

 

SNAでは付加価値を生産活動指標として重視しているが,産出を否定しているわけではない。

 

SNAから見た日本経済の循環

 

SNAの体系から,現実の日本経済の循環(経済循環)を見ると、理論的には,総供給は総需要と一致すべきであるが,統計的には基礎統計の相違,推計方法等により一致しない。

 

次は付加価値である。

 

個別産業から国全体まで集計したのが,真の付加価値である。

 

これを国内総生産(GDP)という。

 

GDPはマクロ経済に関する最も重要な指標の一つである。

 

また,個別産業,たとえば自動車生産の費用構造を考えれば,付加価値は産出と費用との差として求められており,こうした勘定の均衡を保つような項目を「バランス項目」という。

 

付加価値は生産勘定のバランス項目である。

 

さらに,付加価値は中間投入以外の残余の生産関連項目を示すから,その内容から表現することも可能である。

 

雇用者報酬(労働所得のこと)他,経済分析に必要な項目の集計値が得られる。

 

SNAは,勘定形式で表示される。

 

統合勘定でいえば,各ブロックは次の諸勘定と対応する。

 

 (A)=国内総生産と総支出勘定
 (B)=国民可処分所得と処分勘定
 (C)=資本調達勘定
 (D)=海外勘定
 (E)=期末貸借対照表勘定
 (F)=調整勘定

 

ブロック(B)は所得の分配と使用を示す勘定である。

 

生産勘定で発生した「営業余剰・混合所得」,「雇用者報酬」が要素費用表示の国内所得となる。

 

営業余剰は企業が事業活動を行った結果受け取るいわば利潤であり,個人企業(家計)の場合は労働所得も含まれるので混合所得といわれる。

 

これに雇用者報酬を加えたものは生産要素に対する報酬なので,要素費用表示の所得といわれる。

 

取引には国内概念と国民概念かある。

 

国内所得は「日本」における所得(外国人を含む)であり,国民所得は「日本人」の所得(海外での所得を含む)を指す。

 

ブロック(B)では,「海外からの所得(純)」を加えて,国内概念が国民概念に変換されている。

 

同様の操作は国民総所得(従来の国民総生産, GNP)にも適用されており、

 

国民総所得=GDP十海外からの所得(純)

 

となっている。

 

(B)を見ると,国民所得の評価に要素費用と市場価格とあることがわかる。

 

生産・輸入品税は,固定資産税なども含むが,消費税及び間接税が中心である。

 

要素費用に比べて,間接税は価格を上昇させ補助金は低下させる形で市場価格に反映される。

 

そこで,類似項目の差であるので純間接税としている。

 

要素費用に純間接税を加えれば,市場価格となる。

 

ブロック(B)は所得の移転・分配を表すブロックであり,詳細を示すと極めて複雑になるが,一国の経済をマクロで見ると容易である。

 

すなわち,移転は集計段階では相互に相殺されるから,海外との関係が残るだけである。

 

つまり,

 

国民可処分所得==国民所得十海外からの経常移転(純)

 

となる。

 

この可処分所得は,家計部門においては,極めて重要な経済変数である。

 

他方、可処分所得の使用(支出)はどうであろうか。

 

これは消費支出にあてられ,残りが貯蓄となる。

 

貯蓄はこの勘定のバランス項目である。

 

ブロック(C)は, 68SNA (わが国の2000年SNA年報)の資本調達勘定に相当する。

 

(A)と(B)が1年間で終了する経済活動を記述する経常勘定であるのに対して,この勘定は次期以後の活動に影響する項目を,実物取引と金融取引の関係がわかる形で整理した勘定である。

 

実物取引では,総資本形成等の「資産の変動」とその資本調達に当たる貯蓄等の「正味資産の変動」という形で整理されている。

 

金融取引はその性質上,ある部門の金融資産の純増は他部門の負債の純増と対応するから(たとえば,家計の銀行預金は銀行の負債と対応する),国内各部門を統合した場合は「海外に対する債権の変動」たけが残る。

 

海外勘定の重要な点は,海外取引を経常取引と資本取引に分けて表示していることである。

 

また,海外取引の項目は国内と海外との取引が把握できれば,それを海外側から整理した形となる。

 

調整勘定は93SNAで精緻化か図られた勘定である。

 

日本は2000年12月に93SNAへ移行したが,そのとき実状に合わせながら移行を行った。

 

その際『わが国の93SNAへの移行について(暫定版)』経済企画庁経済研究所,という解説書が出された。

 

そこでは,国連の93SNAと68SNAの関係が示されている。

 

 

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