進化する臨床データ管理と信頼性確保【ChatGPT統計解析】
臨床データはカルテや看護記録など多様な形で収集され、電子化が進む中でその管理方法も進化しています。医師の診察内容は手書きで記録される場合が多い一方、臨床検査の結果は自動化が進み、電子カルテを利用したオンライン管理が一般的です。検査結果が紙や図表として提供される場合もありますが、最近ではマルチメディア対応によりデジタル管理が可能になっています。さらに、心電図やMRIなどの画像データや動画情報の扱いも発展しており、電子カルテへの統合が期待されています。臨床試験ではプロトコルに基づき必要なデータを選別して収集しますが、患者の身体的・精神的負担や作業コストを考慮し、信頼性の高いデータのみに絞る必要があります。患者の日誌や問診を通じてコンプライアンスを確認することも重要ですが、主観的データの扱いには慎重さが求められます。また、無意味なデータ収集を避け、目的に沿った情報のみを得る姿勢が信頼性向上の鍵となります。データ処理においても収集範囲や入力レベルを明確にすることで、効率的で正確な解析を実現することが求められます。
▼▼▼▼▼▼▼▼
チャンネル登録はこちら
臨床データの発生
臨床データには様々な種類があります。これらの臨床データはカルテを中心として集積されると思われますが、収集される方法にも様々のスタイルがあります。
たとえば、医師の診察に伴う判断などは電子カルテというようなものを使用していない限り、直接に紙のカルテに記入されます。
すなわち、手書きの情報として存在することが一般的です。
これに対して、臨床検査値などについては医師からオーダーが出され、結果は臨床検査報告書という形式で医師に提供されます。
このように、臨床検査報告書が紙で提供された場合には、一部の重大な意味を持つ検査結果については重複してカルテに記載されることがあるかもしれませんが、一般的には臨床検査報告書を時系列にカルテに貼付して保管することが多いです。
しかし、紙に出力された臨床検査結果であったとしても、実際には機械で測定し、結果を自動的にプリントアウトして作成される場合がほとんどであり、手作業で測定を行うということは極めて特殊な検査でしか行わないようになってきています。
つまり、検査結果をコンピュータに引き渡すことはとても容易に実現できるのです。
このため、最近では臨床検査のオーダーから結果の報告までを全てコンピュータによりオンラインで管理し、医師は随時、臨床検査値だけでなく経過図などを含めて閲覧することが可能なシステムを導入しているケースも多いです。
しかしながら、たとえば心電図やX線などについては、医師がコンピュータでオーダリングすることは可能であっても検査結果が図や写真で提供されるため、結果報告書がカルテに貼付して保管されているレベルに留まることが多いようです。
一方、最近のコンピュータ技術の発展に伴って、図や写真であっても簡単に取り扱うことを可能とするマルチメディア対応が実現されるようになってきています。
また、心電図やX線など静止画像としての情報だけでも判断が可能な検査以外に、コンピュータ断層撮影(CT: Computed Tomography)、磁気共鳴画像診断(MRI: Magnetic Resonance Imaging)、超音波画像診断などといった動画情報により判断を行うべき検査が数多く登場しています。
そして、これらの情報を適切に保管・参照・管理できるようにするためにも、電子カルテの導入が期待されています。
なお、臨床検査については、施設で実施される場合以外に、集中測定として特定の臨床検査施設で一括して測定が実施される場合もありますが、基本的な臨床検査の報告形態は施設内での報告形態に準じて用意されていることが一般的です。
ただ、臨床試験の実施に際して特別に実施されるような検査の場合には、医師には結果報告書として紙で提供されることが多いようです。
カルテ以外に臨床データが記録されているものとしては、看護記録があります。
入院中の患者の体重、体温・血圧などのバイタルサイン(Vital Sign)を含めた患者の状態や行われた処置などを看護師が手書きで記録するものです。
看護記録には、患者のちょっとした発言などといったカルテよりも細かな情報が記載されていることも多く、どこまでを有害事象としてとり上げるべきかというようなことも含めて、記載内容について慎重にカルテとの照合を行うことが必要です。
また、投薬の記録はカルテに記載されることが原則ですが、入院中の頓用などの場合には、看護記録だけに記載されていることもあります。
なお最近では、これらの投薬の記録はオーダリングシステムにより一括管理されることも多くなってきており、オーダリングシステムの中の処方記録を参照することも、服薬状況や併用薬の確認に大きな役割を果たします。
ただし、処方されたことと実際に服薬されたかどうかは異なることなので、注意しなければなりません。
このような原資料間の不整合を防ぐために、ワークシートを作成して利用するのも一つのアイデアです。
臨床試験において臨床試験データを収集することは、発生した臨床データの一部をプロトコルに即して選択して使用することだということは既に述べました。
しかしながら、安全性を確認するためにいくつかの臨床検査項目を追加するなどといった、臨床試験のためにだけ臨床データを必要とする場合もあります。
その際には、その臨床データを収集するためにどの程度の余分な負担がかかるのかということを考えておかなければなりません。
患者にとって身体的、精神的あるいは経済的な負担がかかるようなことは極力避けなければなりません。
さらに、医師や臨床研究コーディネーターなどの作業負担、臨床試験を実施する側の費用負担や作業負担も加味して、本当に収集する意味がある臨床データなのかどうかを十分に吟味しておく必要があります。
また、どの時点でその臨床データを収集することが効率的で正確であるか、あるいは臨床データの発生源から収集までの過程で信頼性に問題が生じる可能性はないかというようなことを考えておくことも必要です。
患者からのデータ収集
業務評価を行う上で、実際に薬の候補物質を使用した患者からのデータ収集を行うことも必要になることがあります。
基本的に医師や臨床研究コーディネーターが問診の形式で患者に確認することが多いです。
そして、多くの臨床試験で患者から収集されるデータの一例は、コンプライアンスの確認です。
コンプライアンスとは、実際に患者がその薬の候補物質をどの程度使用したかということであり、当然のことながら薬効評価に大きな意味を持ちます。
注射剤については日本で自己注射がごく限られた領域でしか認められていないという状況であるため、コンプライアンスは施設の記録により比較的容易に確認することができるものの、経口剤などでは患者の申し出によってしか確認することができません。
しかし、問診でコンプライアンスを正確に確認することはなかなか難しいことです。
たとえば医師の「どのくらい服薬しましたか」という問いに対して実際に数回は飲み忘れていたとしても「ちゃんと服薬しました」と答える患者が一般的です。
場合によっては、きちんと飲んでいなかったとしても患者が医師などに遠慮して「ちゃんと服薬しました」と答えてしまうことも考えられます。
実際に、欧米で蓋を開けるとその情報が記録される特殊な容器を使ってどの程度、患者のコンプライアンスに関する申告が正しいかということを確認しようとした試みがなされたことがあります。
もちろん、蓋を開けたからといって服薬したかどうかは別ですが、それを考慮しても実際の残薬数量と患者の申告した服薬状況にかなりの隔たりが認められました。
いずれにせよ、薬剤の特性に応じてどの程度の正確性を持ってコンプライアンスを確認するかを決める必要があり、ある程度正確にコンプライアンスを確認しようとするならば、患者日誌のようなものを利用するなどして適宜、記録することを患者にお願いする必要があると思われます。
この他にも、自覚症状などを患者に確認することも必要です。もしも自覚症状の推移を把握したいような場合には、問診ではなく患者に直接記入してもらう形式の患者日誌が利用されることがあります。
これについては、どの程度の正確性を持って記載されているかということを慎重に考えておく必要があります。
このためにも、必要とする情報が適切に入手できるような簡潔な記録方式を採用しておかなければなりません。
また、記録された内容についての解釈にも注意が必要です。
たとえば、痛みの推移というようなものを考えた場合に、5段階評価で患者に評価してもらうとすると、同じ3という評価でも患者ごとに全く同じ痛みの程度を3として示しているとは限りません。
あるいは同一の患者であっても、前回の3と記載されたデータを示した上で今回の評価を行ってもらう場合と、前回までのデータを示さずに独立して今回の評価を行ってもらう場合とでは同じ程度の痛みに対して異なった評価がなされる場合があります。
これは、人間の習性として無意識のうちに前回のデータを基準としてしまうからであり、とくにこのような主観的なデータの場合には事前にどのような方法でデータを収集するかを検討しておく必要があります。
このような事例の具体的な手法については、患者のQOL(Quality Of Life)を調査するために様々な研究がなされているので、参考にするとよいでしょう。
結局のところ、患者と医師などとの間に信頼関係が成り立っていないと、このような付随情報について、問診や患者日誌などを用いて正確に把握するということは困難であることも考慮しておくべきです。
いくら収集したとしても、客観性と再現性に欠けるデータを真の評価項目として用いることは難しく、何らかの方法でデータの信頼性を確認しておく必要があります。
データ収集の目的
臨床試験においては、何のためにデータを収集するのでしょうか。当然、薬効評価を行う上で必要となる有効性や安全性に関する情報を集めるためです。
そして、これらの評価をサポートするために必要となる要約や集計などを行うための基礎データを収集することも含まれます。
さらに、臨床試験の実施に際してプロトコル遵守状況などの確認や実施記録としてのデータ収集もあり得ます。
すなわち、収集されたデータそのものを利用する場合や、複数のデータの中から抽出した一部を使う場合、計算や要約によってデータをまとめる場合、行われたことを確認する場合などのいろいろなケースが想定されます。
そして、ここで述べたような目的に応じて集めるべき臨床データの種類や範囲は異なってくるはずです。
しかしながら、単に参考のためのデータを収集するとか、どこかの医師に何となく要求されたからとか、とりあえず取っておくと安心だからというような理由、あるいは意味は深く考えたことはないが慣習的に収集されているからという理由でデータが収集されていることもあると思われます。
このため、データの収集に際しては、本当に必要なデータは何で、どのような理由からそのデータが必要であるかということを検討しておくことはきわめて大切なことです。
むやみに収集するデータの量を増やしても、信頼性の確保にかかる時間と労力が増大するだけで意味がないということもあり得ます。
施設でのデータ収集において明確に理由が説明できないような項目について、収集を依頼することは難しく、本当に目的とした内容のデータが収集できるかどうか疑わしくなります。
逆にこのような検討をきちんと行い、データマネージャーとモニターが十分にその意味を理解しているならば、施設側に適切なデータ収集の依頼を行うことが可能であり、本当に信頼できるデータを集めることが実現しやすくなるはずです。
自他覚所見の推移などのような主観性の強いデータについては、いかにして客観的に信頼できるデータとして収集できるかということを考えるとともに、目的である薬効評価にとってどのような意味を持つデータと成り得るのかを考慮し、場合によっては収集の対象から外してしまうなどの思い切った対応策も検討しておく必要があると思われます。
使わないデータは収集しないというポリシーを明確にすることは、勇気がいるがとても大切なことです。
これらのことは、データ処理にも関連して考える必要があります。
つまり、データ処理を行う際にどこまでの範囲の臨床試験データをコンピュータに入力して集計・解析に用いる予定であるかという点です。
たとえば、症例報告書に記載されている重要なデータだけを入力する場合などの様々なレベルが考えられます。
これらのうち、一体どのような方針で臨床試験データをコンピュータに入力することになっているかを十分に理解しておかなければなりません。
臨床データは医療の現場で多岐にわたる形態で発生し、それぞれ異なる方法で収集されています。カルテを中心に記録されることが一般的ですが、記録方式や収集手段は紙媒体から電子カルテ、さらにはオンラインシステムの活用まで多岐にわたります。医師による診察内容は手書きで記録される場合が多く、電子カルテが導入されていない施設では紙のカルテが中心的な役割を果たします。一方で、臨床検査結果はオーダリングシステムを経て臨床検査報告書として提供されることが一般的であり、この報告書が紙で提供される場合には、重要な検査結果がカルテに手書きで記載されることもありますが、通常はカルテに貼付されて保管されます。このように紙媒体で提供される検査結果も、その多くは自動化されたシステムによる測定とプリントアウトを経て生成されており、手作業による測定は特殊な検査を除いて稀となっています。そのため、検査結果をコンピュータで直接管理することが容易であり、最近では検査のオーダーから結果報告までをオンラインシステムで一貫管理する施設も増加しています。このようなシステムでは、医師は臨床検査値の時系列データや経過図を随時閲覧できるため、診断や治療の迅速化が期待されます。しかし、心電図やX線検査結果のように図表や画像で提供される情報については、依然として紙媒体のカルテに貼付して保管されることが一般的であり、画像データの電子化が課題として残されています。ただし、近年のマルチメディア技術の発展により、図や写真、さらには動画情報も容易に取り扱えるようになりつつあり、コンピュータ断層撮影(CT)や磁気共鳴画像診断(MRI)、超音波画像診断などの動画情報を適切に保存・管理できる環境が整備されつつあります。これにより、診断精度の向上や医療情報の共有が進むと期待されています。また、看護記録も重要な臨床データの一部を構成しており、患者の体温や血圧などのバイタルサイン、投薬内容、処置経過などが記録されています。看護記録には患者の細かな発言や状態の変化が含まれることが多く、カルテとの照合や整合性の確保が求められます。入院中の患者の頓用薬の記録など、一部の情報が看護記録のみに記載される場合もあるため、電子オーダリングシステムの活用が推奨されています。このシステムでは処方記録が一元管理され、服薬状況や併用薬の確認が容易になる反面、処方された薬が実際に服用されたかどうかの確認には限界があります。このため、ワークシートの活用や患者自身による日誌記録などが有効な補完手段とされています。臨床試験においては、プロトコルに基づいてデータを選別し、必要な情報のみを収集することが基本ですが、これには患者や医療スタッフへの負担軽減が重要な考慮事項となります。患者の身体的・精神的負担だけでなく、医師や臨床研究コーディネーターの作業負担、コスト面での負担も考慮して、収集するデータの意義を慎重に評価する必要があります。特に、主観的なデータの扱いについては慎重であるべきであり、収集方法や評価基準の検討が求められます。例えば、患者に痛みの程度を評価してもらう際には、同じ評価スケールを用いたとしても、個人差や過去の評価結果との比較に基づくバイアスが生じる可能性があります。このような場合、患者日誌や具体的な指示に基づく記録方法が有効ですが、記録の解釈や信頼性の検証も重要です。患者からのデータ収集では、コンプライアンス(薬の使用状況)の確認が不可欠であり、問診や日誌を通じて確認が行われますが、患者の申告内容が正確でない場合が多いことを考慮する必要があります。欧米では蓋を開けた回数を記録する特殊な容器を使用して服薬状況を確認する試みも行われていますが、この方法にも限界があります。したがって、患者の日誌や問診以外にも、残薬の確認や服薬管理アプリの活用など、多角的な方法を取り入れることが効果的です。また、自覚症状やQOL(生活の質)のデータ収集においても、簡潔かつ正確な記録方式を採用することが重要です。データ収集の目的は、有効性や安全性の評価に必要な情報を集めることに加え、プロトコル遵守状況の確認や実施記録としての役割を果たします。収集データの種類や範囲は目的に応じて異なりますが、不必要なデータ収集は避け、信頼性と再現性を確保できるデータに限定することが重要です。データ処理の段階では、重要なデータのみに焦点を当て、入力範囲や解析対象を明確にすることが求められます。このように、臨床データの収集と管理には目的意識と効率性が不可欠であり、適切なシステムと運用方法を構築することで、医療の質と安全性を向上させることが期待されます。
関連記事