生命倫理研究の特別な考慮すべき問題【医療統計解析】

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生命倫理研究の特別な考慮すべき問題|【医療統計学・統計解析】

生命倫理研究の特別な考慮すべき問題【医療統計解析】


目次  生命倫理研究の特別な考慮すべき問題【医療統計解析】

 

 

生命倫理研究の特別な考慮すべき問題

 

厳格で信頼性のある生命倫理研究を実施するときに要求されるものの多くは,その他の領域における質の高い臨床研究に要求されるものと全く同じである.

 

しかし生命倫理研究においてはいくつか特別に考慮すべき問題がある.

 

1つ目は,有用な方法のいくつかは臨床研究者にはあまり知られておらず,彼らがトレーニングを受けたことがないということである.

 

例えば,原典や古記録などの歴史的な研究の手法についてのトレーニングを受けたことのある臨床研究者は少ない.

 

同様に質的な研究方法は,多くの臨床研究者になじみがないであろう.

 

このような技能を培うには,その分野の専門家と共同して研究を行う方法がある.

 

2つ目に,臨床研究者は概念分析によって作られたいくつかの区分は「つまらないことをとやかく論じる」ものだと思うかもしれない.

 

しかし概念分析に基づいた正確な区分は,倫理的な判断を明確にするのに必須であるだけではなく,質の高い実証研究の基本となる.

 

概念が正確であるほど実証研究も優れたものとなる.

 

その意味では,概念分析は実証研究の重要な要素といえる.

 

例えば,もしある人がインフォームド・コンセントにおける自主性の研究をしたいとき,自主性において絶対必要なものは何かを理解することが重要である.

 

それは,研究者からのプレッシャーを感じない,登録を拒否することができる,参加を取りやめることができることである.

 

しかし,家族からのプレッシャーを感じることや,絶え間ない病状の進行が自主性を損なうことはあるのだろうか.自主性の良い代替手段は必要とするのだろうか.

 

 生命倫理問題についての研究の3つ目の特別な問題は,妥当性,信頼性のある評価尺度と関連する.

 

過去20年以上,評価尺度の創出と妥当性評価に多大な努力が費やされてきた.

 

様々なグループが,痛みやQOLについての信頼性のある尺度を開発してきた.

 

残念なことに,多くの重要な生命倫理問題には「標準的な良い」評価の尺度がない.

 

同意能力,インフォームド・コンセント,望ましい死,安楽死への関心,良い倫理相談,自主性などに関する標準的尺度はない.

 

したがって,質問や尺度を開発し評価することは,しばしば生命倫理問題の実証研究における基本的な要素となる.

 

反対に,生命倫理におけるずさんな実証研究では,厳格な予備調査が行われていない質問を用いて,回答者が誤解やバイアスのある解釈してしまったり,期待していることと異なるものを測定してしまったりすることになる.

 

他の研究と同様,悪い方法論は生命倫理研究においても信頼できない結果を生み出すことになる.

 

 

例えば,安楽死についての初期の研究では.標準的な質問がなかったため,研究者は予備検査をせずに自分たち独自の質問を作り出した.ある質問票では「あなたは安楽死を望むか」と,またある質問票では「あなたは死を望むか」と問う.

 

回答者によっては安楽死の定義は不明瞭であり,誤って解釈されやすい.死を望むことは安楽死と同じではない,

 

またある患者は死を望むかもしれないが意図的な生命の終焉を希望していないかもしれない.

 

これらを混同することは,この質問が純粋に安楽死について測定できていないということである.

 

また医師に対し,「患者から命を絶つことを頼まれたことがあるか」と質問するとしよう.

 

致死的な注射を行うことによっても,または治療を中止することによっても生命を終わらせることはできるが,多くの識者はこの2つは異なるものと考えている.

 

これらを混同することにより.この質問は結果にバイアスを与えることになる.

 

数多くの調査が行われた後,「患者の命の終焉を意図して薬剤を処方したり注射をしたりしたことがあるか」という,慎重に言葉を選んだ質問が使われるようになった.

 

この表現であれば.安楽死の定義を誤解されることも少なく,バイアスにつながることはない.

 

多くの生命倫理の実証研究において,質問や尺度を作り出すのに役立つ方法論的技術がある.

 

例えば.調査の質問票の作り方,質問票の予備検査の仕方,質問票の妥当性評価のための研究計画といった技術である.

 

これらは骨が折れ,時間のかかる作業である.実際, QOLの測定尺度やインフォームド・コンセントを与える能力を評価する尺度を開発するには,何年もの時間がかかる.

 

しかしそのような標準的尺度は厳格な実証研究を行うために必要不可欠である.

 

最後に,生命倫理実証研究に共通した問題は,数が少ないことと検出力が小さいことである.

 

多くの研究は,単施設の少人数の参加者による研究である.もちろんこれは生命倫理に特有なことではなく,多くの臨床研究に共通してかかえる問題でもある.

 

1つの施設では真実であっても,それはその施設またはその施設の患者集団に特有な結果かもしれない.

 

また回答者が少数の場合,その結果を一般化するのは困難である.幸運なことに,実証的な生命倫理研究は成熟しつつあり,多施設研究や,大規模な研究を行うことに注目が集まってきている.

 

一方,本来的に患者が少人数となる生命倫理研究もあり得る.

 

例えば,安楽死を希望する末期患者にインタビューを行いたい場合,末期患者を選別し,そのうち安楽死を望む患者集団を同定する必要がある.

 

そのような対象は非常に小さく全体の10%以下と思われるので, 100人の対象者を得るためには1,000人の末期患者をインタビューすることを意味するが,それでは費用も高くなり,また実行困難となる.

 

このため,こうした研究は少人数の検討となりやすい.

 

 

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