基準率の誤りに対して武器を取る【統計解析講義応用】

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基準率の誤りに対して武器を取る|【統計学・統計解析講義応用】

基準率の誤りに対して武器を取る【統計解析講義応用】


目次  基準率の誤りに対して武器を取る【統計解析講義応用】

 

 

基準率の誤りに対して武器を取る

 

先進的なガン研究や早期のガンのスクリーニングを行う場合でなくても,基準率の誤りにはまることがある。

 

社会調査を実施する場合はどうだろうか。

 

例えば,米国人の自衛のための銃使用がどれだけの頻度であるのか調査したいとしよう。

 

銃規制に関する議論は,結局のところ,自衛の権利に集中している。

 

このため,銃が自衛のために広く使われているかどうか,そして自衛のための銃使用という利点が銃による殺人などの否定的な側面に勝っているかについて確認することが重要になる。

 

こうしたデータを集める方法として,調査(survey)がある。

 

調査を通じて,米国人を代表する標本に対して,銃を持っているかどうか,持っているとしたら盗みなどを目的とした住居侵入から家を守ったり路上強盗から身を防いだりするために銃を使ったことがあるかを問うことができるだろう。

 

こうして得られた数値を,法執行機関の統計から得られる殺人での銃使用の数値と比べる。

 

そうすることで,データに基づいて,銃規制の利点がその欠点を上回っているかを判断できるだろう。

 

このような調査は実際に行われたことがあり,興味深い結果を残している。

 

1992年に行われた電話調査によれば,この年の米国の民間人による自衛のための銃使用は250万回にのぼると推定されている。

 

大まかに言って,そのうち34%が盗みなどの犯罪目的の住居侵入に対してのものだった。

 

つまり,84万5000件の住居侵入が銃の所有者によって防がれたことになる。

 

しかし, 1992年には,誰かが家にいるときに発生した犯罪目的の住居侵入は130万件しか起きていなかった。

 

そのうちの3分の2は,家の所有者が寝ている間に発生し,侵入者が去った後に発覚したものだった。

 

つまり,家の所有者が家で目覚めていた状況で侵入者と対面した住居侵入は43万件あり,私たちがそう信じこまされているように,そのうち84万5000件が銃を携帯する住人に阻止されたことになる。

 

このことについての説明の1つとして,盗みなどを目的とした住居侵入で報告されているものが非常に少ないということが想定できる。

 

盗みなどを目的とした住居侵入の総数は,全国犯罪被害調査を典拠としている。

 

この調査は,何万人もの米国人に対して,犯罪に関する経験について詳細な対面調査を行うものだ。

 

もしかしたら,銃器で侵入者を撃退した回答者は犯罪について報告しなかったのかもしれない。

 

撃退したのならば,結局何も盗まれずに侵入者は逃げ去ったのだから。

 

ただ,この食い違いを説明するには,報告されていない住居侵入が大量にあると考える必要があるだろう。

 

この場合,家の所有者が目覚めていたときに発生した住居侵入の少なくとも3分の2が報告されていない必要がある。

 

 

もっと信じられそうな説明は,電話調査が自衛のための銃の使用を過剰に見積もったという説明だろう。

 

どうやって過剰に見積もったのだろうか。

 

マンモグラフィーが乳ガンにかかっていることを過剰に見積もったことと同じようなしくみによって過剰に見積もったのだ。

 

ここでは,偽陽性の可能性の方が,偽陰性の可能性よりずっと高い。

 

99.9%の大が前の年に自衛のために銃を使用したことがないのに,ふざけたり,ずっと昔に起きた事件を誤って去年起きたと思ったりするなどの理由で,そのうち2%が「はい」と答えれば,真の割合である0.1%が,21倍にふくれあがって2.1%近くになる。

 

偽陰性の方はどうだろうか。

 

先週強盗を銃で撃ったばかりなのに「いいえ」と答えた大が存在することで,埋め合わせることができるだろうか。

 

回答者が銃器を不法に所持していたり,銃器の使用を電話口で知らない大に伝えたくないということはあるかもしれない。

 

しかし,たとえそうであっても,実際に銃を自衛のために使った大がほとんどいなければ,偽陰性となる可能性はほとんどない。

 

銃を使用した人の半分が使用したことを電話調査で認めなかったとしても,銃を使っていないのにウソをついたり勘違いしたりした人の割合に比べれば,ずっと少ない。

 

こうして,調査の結果は20倍も多い値になるのだ。

 

ここでは,偽陽性率がとても大きな誤りを生む原因になっている。

 

このため,犯罪学者はこれを減らすことに注力している。

 

そのための良い手法として,非常に綿密な調査を行うことが挙げられる。

 

司法省によって行われている全国犯罪被害調査では,綿密な対面調査を手法として採用している。

 

この対面調査では,犯罪の詳細および自衛のための銃の使用の詳細を回答者にたずねている。

 

犯罪被害者になったと答えた回答者だけに,どうやって自衛したかが問われる。

 

だから,自衛についてウソをついたり正確に覚えていないと答える可能性があるのは,犯罪被害者となったことについてもウソをついたり正確に覚えていない場合に限られる。

 

全国犯罪被害調査では,同じ回答者に定期的に対面調査することで,よくある問題の1つである日付の記憶の不正確さについて見いだそうともしている。

 

もし,回答者が過去6か月以内に犯罪被害者になったことがあると報告した場合でも,6か月前の調査で同じ犯罪が数か月前にあったと回答者が報告していれば,調査者はその食い違いを回答者に気づかせることができるのだ。

 

1992年の全国犯罪被害調査では,自衛のための銃の使用の件数として例の電話調査に比べてぐんと小さい値を推定値として出している。

 

その推定値は年間6万5000件程度で,百万件単位ではない。

 

この値は,盗みなどを目的とした住居侵入に対する自衛だけでなく,路上強盗・強姦・暴行・車両盗難に対する自衛も含んでいる。

 

それでも,電話調査から推定された値の40分の1近く少ない。

 

一般にそう考えられているように,世の人たちは,連邦政府の機関に対して不法な銃使用を告白することを不安に思っているかもしれない。

 

最初の電話調査の報告書の作成者は,ほとんどの自衛のための銃使用には不法な銃所持が関わっていると主張している。

 

このことは,別の問題を提起することになる。

 

なぜこんなに多くの被害者が不法に銃を所持しているのだろうか。

 

このことが,全国犯罪調査の結果を低めに偏らせるものとしている。

 

おそらく,事実は中間のどこかにあるのだろう。

 

残念なことに,電話調査でのふくれあがった数値は,いまだに銃所持の権利を擁護する団体によってしばしば引かれていて,銃の安全性に関する公の議論に誤った情報を示すことになっている。

 

一方で,全国犯罪被害調査の結果は,はるかに低い値で安定している。

 

銃規制に関する議論は,もちろん単一の統計値よりもずっと複雑なものだ。

 

しかし,情報をよく理解した上での議論というものは,正確なデータがあってはじめて可能になるものなのだ。

 

 

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