
ロジスティック回帰による追跡研究【統計学講義応用】
ロジスティック回帰による追跡研究
ロジスティックモデルでは、追跡研究を志向してモデルが定義されることが特徴です。
つまり、追跡期間の開始時に測定された独立変数の関数として対象疾患発症確率が表されます。
このため、モデルを症例対照研究や横断研究に適用できるかについて疑問をもたれることがあります。
しかし、ロジスティック回帰は追跡研究以外の研究デザインにも適用できます。
ロジスティックモデルが症例対照データで使用可能となる一定のロバスト(robust)な条件が2つの研究により明らかにされました。
一つは1981年にBreslowとDay、もう一つは19791年のPrenticeをPikeの報告です。ロバスト(頑健)とは、数理的にかつ疫学的に複雑な条件を生じる様々な状況に適用することを意味しています。
この2件の報告で示された論法は横断試験にも応用されていますが、今のところ、明確に証明した文献はありません。
症例対照研究については、症例と対照が最初に選定された後に過去の曝露状況が測定される場合であっても、解析を進めることが可能であることが示されています。
要するに、症例対照研究でも、従属変数は疾患アウトカム、独立変数は曝露状態+関連共変数とみなすことができます。
症例対照研究でロジスティックモデルを用いる場合も、データは追跡研究から得たものとして取り扱うことが可能です。
ロジスティックモデリングは症例対照研究と横断研究に適用可能ですが、2つの試験の解析では重要な限界が1つ存在します。
追跡研究では、個人のリスクを特定の独立変数で予測するために適合ロジスティックモデルを用いることができますが、症例対照研究や横断研究では個人リスクの推定に同じモデルは使用できません。この2つの試験で実際に得られるのは推定オッズ比のみとなります。
症例対照研究や横断研究においてロジスティックモデリングから推定可能なのは個人リスクではなく、オッズ比のみという事実に驚くことはありません。
2×2クロス表の単純な解析にあてはまる現象です。
2×2クロス表では、データが追跡可能から得られる場合に限り、推定リスクの使用が可能になりますが、データが症例対照研究や横断研究から得られる場合はオッズ比のみが該当します。
2×2クロス表でオッズ比はオッズ比の推定値=ad/bc(a,b,c,dは表セル中の頻度)により求められます。
症例対照試験や横断試験においてオッズ比の式は、疾患状態を条件とした曝露状態の確率を含む比として表すことができます。
★★統計学目次★★
