書類棚の中の科学|【統計学・統計解析講義応用】
書類棚の中の科学
先に,多重比較と事実の誇張が研究結果に及ぼす影響について見た。
こうした問題は,検定力の低い状態で多くの比較を行うような研究で発生する。
これにより,偽陽性率は高くなり,効果量の推定は誇張されたものになる。
そして,こうしたことは公刊された研究の至るところに見られる。
だが,すべての研究が公刊されるわけではない。
例えば,医学では,「この薬を試したが,効かなかったようだ」ということをわざわざ公刊しようとする科学者がほとんどいないため,医学研究のごく一部しか目にすることがない。
さらに,権威ある学術誌の編集者は自誌に画期的な結果が載るという評判を維持しなくてはならないし,査読者は否定的な結果に対して偏見を当然持っている。
手法と書きぶりが同じ論文を見せた場合,査読者は,否定的な結果が書かれている方を厳しく評価し,方法論上の誤りをより多く発見する。
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