生活習慣と認知症予防|【統計学・統計解析コラム】
▼▼▼▼▼▼▼▼
チャンネル登録はこちら
生活習慣と認知症予防
生活習慣を指導したグループでは認知症の発症率が3.1%だったのに対し、しなかったグループは4.3%にのぼった。
ここでの発症率は本当に率の意味で使われているのでしょうか?
この文章からだけでははっきりとわかりませんが、多分、割合の意味で使われているのではないかと思います。
もし本当に率の意味で使われているとすれば、「発症率が年間で3.1%であった」という書き方をするでしょう。
日常会話においては割合のことも率のことも率と言ってしまうことが多いように思います。
割合の意味で使われているとして、リスク差とリスク比を計算してみると、
リスク差=3.1%−4.3%=−1.2%
リスク比=3.1%/4.3%=0.72
となります。
この結果をどう解釈するか、ですが、そのためには因果関係が調べられる条件に照らし合わせる必要があります。
まず、@「コントロールグループがある」については満たしています。「指導しなかった1,500人」がコントロールグループです。
次にA「調べたい要因(原因)以外のすべての条件がグループ間で等しい」について、ですが、これは満たされているとは考えにくいですね。
希望者約400人に運動や栄養、睡眠の改善を指導しています。希望者ほど(相対的に)若い人が多かったり、健康志向の人が多かったりしていたかもしれません。
だとすると、「運動・栄養・昼寝」と認知症予防の間の因果関係が調べられていないことになります。
よって、ここで計算したリスク差とリスク比からは、「運動・栄養・昼寝について指導を受けたグループでは、受けなかったグループに比べて、認知症を発症する人が100人あたり約1人少なかった」、「指導を受けたグループでは、受けなかったグループに比べて、認知症の発症が約1.4(=1/0.72)倍少なかった」と事実関係を述べることしかできないのです。
割合か率か、因果関係が調べられるのか調べられないのか、ちょっとわかりにくいですね。
新聞記事などの媒体は、スペースが限られているためにすべてを盛り込むことはできません。
媒体からだけで正確なことを知るのはなかなか難しいですね。
関連記事