治験の全貌:有効性・安全性と承認への道【ChatGPT統計解析】
治験は医薬品の有効性・安全性を評価するため、探索的および検証的な段階的試験を行い、厚生労働省の許可を経て医薬品として承認される。第I相試験では主に健常成人男子を対象に安全性や薬物動態を確認し、第II相試験では少数の患者を対象に有効性や用量を探索する。第III相試験では多くの患者で推奨用量の有効性と安全性を検証する。抗癌剤のような特殊な薬剤では一部試験を省略することもあるが、市販後もPMSを通じて追加の情報を収集し再評価が行われる。国際的な調和も進み、ICHに基づき各国で試験データの共有が行われ、医薬品開発の効率化が図られている。臨床試験は必ずしも固定的な順序ではなく、目的に応じて柔軟に実施され、リスク・ベネフィットのバランスを考慮して承認判断が行われる。
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治験のフェーズ
治験は臨床試験のごく一部にすぎないが,厚生労働省の許認可に関連するものであり,法的に厳格な管理下にあるため,基本的な臨床試験への取り組みを考える際に検討しやすい.
治験においては,たった一つの臨床試験だけが行われることは極めてまれである.
科学的に有効性と安全性を評価するためには,よほどのことがない限り,探索的および検証的な目的を持つ段階的な複数の臨床試験を実施し,できるだけ確度の高い評価をすることが必要になるからである.
抗悪性腫瘍薬(抗癌剤)などのように,強い副作用を有していてもその医薬品の持つリスク・べネフィットを充分に考慮した上で使用されるような医薬品を除き,一般的な医薬品を開発する場合,最初に行われるものは健常成人男子における単回投与試験および連続投与試験である.
ヒトに初めて投与されるこの段階では,主に安全性の確認と物質の体内動態(ADME/Absorption ; 吸収, Distribution ;分布, Metabolism ;代謝, Excretion ;排泄)を評価することが目的とされる.
このような最初に行われる健常成人男子における臨床試験を「第T相臨床試験(Phase l ; フェーズ・ワン)」と呼ぶ.
ついで,少数例の患者を対象に「第II相臨床試験(Phase II ; フェーズ・ツー)」が行われる.
このPhase II は,さらに「初期第II相臨床試験(Early Phase II, Phase Ila)」と「後期第II相臨床試験(Late Phase II, Phase II b)」の2段階に分けて実施されることもある.
この段階では,有効性や安全性と投与量・投与間隔などとの関係の確認が主な目的となる.
つまり,探索的な臨床試験段階である.
初期第II相臨床試験は少数例の患者において安全性はもちろんであるが,有効性あるいはその徴候が認められることを確認する.
そして後期第II相臨床試験では,有効性や安全性と投与量・投与間隔などとの本格的な関係を探索することになる.
すなわち,用量反応関係を確認し,推奨用量(Recommended Dose)・用法を探索するものであり,用量設定試験(Dose Finding Study)と呼ばれていた時代もあった.
最近では,これらの早期の段階においてプラセボ(Placebo ;偽薬)を用いて,薬の候補物質の有効性と安全性に関して客観的な評価を判断することも多くなっている.
プラセボと比較して確実に優れているならば,薬の候補物質が本当に意味のあるものだという可能性が高まるためである.
そして,最終段階としては「第V相臨床試験(PhaseV ; フェーズ・スリー)」が行われる.
これは多くの患者を対象にPhase II で推定された推奨用量・用法により既存の治療方法・治療薬あるいはプラセボとの比較を行い,薬の候補物質に関する有効性と安全性を確認することが主な目的となる.
つまり,検証的な臨床試験段階である.
比較に際しては,客観性を高めるため,無作為化(ランダム化; Randomization)され,かつ盲検(ブラインド; Blind)下で臨床試験が行われることが一般的である.
すなわち,試験デザインとしては,患者も医師も投薬される薬剤が薬剤Aと薬剤Bのどちらであるかを知らされない無作為化二重盲検比較試験(Randomized Double Blinded Comparative Study)が採用されることが多い.
抗悪性腫瘍薬(抗癌剤)などの場合には,健常成人男子における臨床試験をスキップし、患者を対象として最大耐用量(MTD ; Maximum Tolerated Dose)を求める臨床試験がPhaseTと呼ばれる.
この場合の主目的も安全性と薬物動態の確認であり,もし効果の兆候が認められたとしても,さらに次の段階に自信を持って進むことができるというにすぎない.
これらのデータを整理し,薬の候補物質での有効性・安全性が確認され,既存の治療方法・治療薬に比べて有用性を示すことが明らかになった場合,製薬企業はその薬の候補物質を医薬品として販売することの許可を得るために,厚生労働省に対して承認申請を行う.
そして審査センターと呼ばれる国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター(PMDEC; Pharmaceuticals and Medical Devices Evaluation Center) ,薬事・食品衛生審議会などでの審議を経て,承認された場合にのみ「医薬品」が誕生し,販売することが可能になる.
最近では,これらの審査過程は広く一般に情報公開されるようになっており,インターネットなどを通じて確認することができる.
このような何段階もの慎重な検討を経て生み出された医薬品であるが,承認される段階で,その有効性・安全性が完全に掌握できているとは限らない.
治験の段階では,科学的に評価可能な症例数を考えた上で患者からデータを収集しているが,全ての情報を確認できるとは言い切れないからである.
たとえば, 1,000例のデータを集めたとしても1万人に1件発生するかもしれない副作用を捕捉できるとは限らないということである.
また,治験ではプロトコルに定められた選択・除外基準に則り対象となる患者が限定されるが,実際に医薬品として流通が行われるようになると医師の裁量の範囲で薬剤を使用することが可能になるため,対象となる患者のボーダーラインが曖昧になる場合も考えられる.
さらに これまでに経験のない併用薬などが使用されるような状況もあり得る.
このような場合には,本当にこれらの患者に対して治験で得られた有効性・安全性が完全に確保されているという保証はない.
また,偶然に有効性かあると評価してしまうリスクを避けるために複数の治験を積み重ねたとは言うものの,より多くの患者で使用していった上で,真の有効性を評価するほうが妥当である.
あるいはエイズなどのようにほかに有効な治療法がない疾患に対応するための緊急措置として,確実な有効性と安全性の保証がなくても医薬品として認可される場合もある.
これらのことは,薬の候補物質についての完令な有効性・安全性の掌握を待っていたのでは,実際に充分な有効性・安全性のある薬により恩恵を受けられるはずの患者を長い問待たせることで手遅れになってしまう危険性があるということを考慮している.
そして.このような機会の損失はできる限り避けるべきことであるため、承認はリスク・べネフィットのバランスを考えて判断されるべきであるということを示している.
とくに現在、有効な治療法がなく致死的な疾患においては,ある程度の期待が持てる治療法であり患者の要望が充分にあると判断されるならば,承認される場合もあり得てよいということである.
すなわち,薬の候補物質についての完全な情報が得られていなくても患者にとってのリスク・べネフィットのバランスを考えて承認した上で,さらに情報を積み重ねていく方が妥当なのである.
このため,医薬品の市販を開始した後には市販後調査(PMS ; Post Marketing Surveillance)というものが義務付けられ,さらには市販後調査のデータを基に再審査、再評価が行われる仕組みになっている。
市販後調査の一つに市販後臨床試験が含まれており,治療的使用における多様な試験として「第IV相臨床試験(Phase IV ; フェーズ・フォー)と呼ばれるものもある.
臨床試験の国際的な協調も進んでおり,各国で単純に全く同じ臨床試験を繰り返すというような事態を避け,いたずらに多くの人々に臨床試験に参加してもらうことなく系統的に薬の候補物質での有効性・安全性が評価できるような取り組みがなされている.
とくに治験においては,日・米・欧という三極での医薬品開発の基調となるICH(日米EU医薬品規制調和国際会議; International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)の導入後は,日本でもICH-E5と呼ばれる「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」が提示され,内因的あるいは外因的な人種差を十分に考慮した上で海外との臨床試験データの相互利用が行われるようになっている.
その結果,医薬品の開発期問の短縮や,有用な医薬品が特定の国だけで販売されているというような事態が改善されている.
ICHは1991年11月にブリュッセルで第1回が開催されて以来,2003年11月には第6回が大阪で開催された.
各ガイドラインは,5つのステップを経て発効される.
ICH-E8の「臨床試験の一般指針」に示されているように 臨床開発におけるフェーズとは概念的なものである.
ある種の臨床試験は複数のフェーズにおいて実施されるもので,臨床試験は決まった順序で行わなければならないということを意味しているものではない.
「臨床試験の一般指針」は, Phase l -IVという表現よりも「臨床薬理試験」,[探索的試験],「検証的試験」,「治療的使用」という目的に応じた4つの分類の方が臨床試験の種類としては適切であるとしている.
このようにICHのガイドラインは示唆に富んだ内容を含んでいる.
治験は、新薬が安全で効果的であることを確認し、医薬品として承認されるために必要不可欠なプロセスであり、探索的および検証的な段階的試験を通じて、その有効性・安全性を科学的に評価することが求められる。まず、第I相臨床試験では、主に健常な成人男子を対象に、安全性および薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)の確認を目的として行われる。この段階では、医薬品候補物質が人間に初めて投与されるため、主に単回投与試験や連続投与試験を通じて、その物質が人体に及ぼす影響を慎重に評価することが重要である。抗癌剤のように強い副作用がある場合を除き、一般的な薬剤開発ではまず健常者を対象とする。次に、第II相臨床試験が実施され、少数の患者を対象として探索的な試験が行われる。このフェーズではさらに細分化され、初期第II相(Phase IIa)では安全性と有効性の徴候を確認し、後期第II相(Phase IIb)では投与量や間隔と有効性・安全性の関係をより詳しく探索する。特に用量反応関係を調べ、推奨用量および用法を決定することが目指され、これを用量設定試験と呼ぶ場合もある。また、この段階ではプラセボ(偽薬)を用いることで、候補物質が本当に意味のある有効性を持つかどうかを客観的に評価する方法が一般化している。プラセボとの比較により、治験薬の優位性を確実に示すことが求められる。一方、第III相臨床試験では、多くの患者を対象に、推定された推奨用量・用法を用いて既存の治療法やプラセボと比較を行い、候補物質の有効性と安全性を最終的に検証する。この段階では無作為化二重盲検比較試験が一般的であり、患者も医師もどの薬剤が投与されているかを知らない条件下で試験を進めることで、バイアスを排除し信頼性を高める工夫がなされる。また、抗癌剤のように副作用が強い薬剤の場合には、健常者を対象とする第I相試験を省略し、患者を対象に最大耐用量を探索する方法が取られることもある。この場合の主目的は安全性の確認であり、有効性の徴候が確認された場合には次の段階への移行を考える材料とされる。治験で得られたデータは整理され、薬剤の候補物質が既存の治療方法に対して有用性があると確認された場合には、製薬企業が厚生労働省に承認申請を行い、審査を経て承認が得られれば「医薬品」として販売される。しかし、承認段階で薬剤のすべての有効性・安全性が掌握されているわけではない。たとえば、治験で1,000例のデータが収集されたとしても、1万人に1件発生する可能性がある副作用を捕捉するのは困難であり、さらに実際の医療現場で患者の選択基準が広がることで治験時には予期されなかった影響が発生する可能性もある。そのため、市販後にはPMS(市販後調査)が義務付けられ、医薬品使用の実態に基づいた安全性と有効性の確認が継続される。この市販後調査には、実際の治療での有効性を多様な条件下で確認する「第IV相臨床試験」も含まれる。また、医薬品開発においては国際的な調和が進み、ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)のガイドラインに基づき、各国でのデータ共有や臨床試験の効率化が図られている。これにより、医薬品開発期間の短縮や、新薬が特定地域に限定される状況の改善が進んでいる。ICHの導入により、日本でも民族的要因を考慮した上で海外の臨床試験データの相互利用が行われ、臨床試験が系統的かつ効率的に進められるようになった。治験の目的や段階は必ずしも固定的ではなく、臨床試験の一般指針では「臨床薬理試験」「探索的試験」「検証的試験」「治療的使用」といった目的別分類が適切とされている。最終的には、リスクとベネフィットを慎重に比較検討した上で承認が判断されるが、治験の結果だけで完全な情報を得ることは困難であるため、承認後のさらなる調査と情報収集が重要となる。特にエイズなど他に治療法のない致死的な疾患では、リスク・ベネフィットを考慮し、十分な期待が持てる治療法であれば早期承認される場合もある。このようなケースでは、患者が治療を待たされることで手遅れになるリスクを回避し、可能な限り多くの恩恵を与えることが優先される。そのため、医薬品開発の過程では常に科学的妥当性と患者の利益のバランスが考慮され、患者にとっての最善策が追求される。
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