EBMの誕生【医療統計解析】

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EBMの誕生|【医療統計学・統計解析】

EBMの誕生【医療統計解析】


目次  EBMの誕生【医療統計解析】

 

 

EBMの誕生

 

McMasters大学のGuyatt先生が「scientific medicine」という概念を提案したのは1990年のことでした。

 

これは彼のメンターであるSackett先生の批判的吟味(critical appraisal)の技術を臨床に応用するという考えを土台にして,臨床教育に役立てようというものです.

 

しかし,「scientific medicine」という考えを新たに提唱するということは,すなわち,これまでの診療がscientificではなかったということになってしまうので,同僚からは受け入れられませんでした.

 

そこで,名前を「evidence-based medicine (EBM)」に変えて,レジデント教育プログラムに取り入れたのです.

 

このEBMという言葉はやがて1991〜1992年にはじめて論文上に登場することになります.

 

しかし, EBMの概念は決して新しいものではなく, EBMは臨床疫学(clinical epidemiology)を臨床現場の診療に近づけたものです.

 

エビデンスとは臨床研究の実証結果であり,臨床研究の種類によっていくつかのレベルに分類されます.

 

個々の患者さんの治療を決定する際に,その時点での最良のエビデンスを解釈したうえで,患者さんの全身状態,背景,価値観なども踏まえて慎重に適用していく作業のことです。

 

統計解析手法の進歩やインターネットの普及によって,より適切なエビデンスを入手することが容易になったことがEBMの発展につながったと考えられます.

 

ただ、個人的には「scientific medicine」という言葉のほうが好きです.「evidence-based medicine」という言葉は「evidence」が強調されすぎているのが問題です.

 

後述するように、「evidence」は科学的な診療のために必要な要素の一つにすぎません.

 

ackett先生は1996年に「Evidence based medicine: what it is and what it isnt」という論文のなかでEBMの真の姿について記述しています.

 

「Evidence based medicine is the conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence in making decisions about the care of individual patients.」

 

という一文にそのあり方が集約されています.
すなわち, EBMとは,一人一人の患者さんの診療を行うにあたって,現時点での最良のエビデンスを良心的に,明示的に,かつ賢明に用いることです.

 

これは個々の医師の経験に基づく臨床技能(clinical expertise)と,臨床研究によって築かれたエビデンスを統合する手法です.

 

個々の医師の臨床技能が欠けていると,個々の患者さんにとっては適切でないエビデンスによって診療が押しつぶされてしまうことがあります.

 

「エビデンスがあるからやる」とか,「エビデンスがないからやらない」というのではなく,「これらのエビデンスと患者さんの病態,背景,人生観を総合的に考えてこうする」というのが真のEBMなのです.

 

これは「Evidence does not make decisions, people do」という一文にもよく表されています.

 

 

一方,エビデンスなくしては,時代遅れの診療となってしまう危険があります.

 

このエビデンスと医師の技能の関係は,論語の「学びて思わざれば則ち罔し,思いて学ばざれば則ち殆し」とよく似ているのかもしれません.

 

EBMは料理帳に書かれた通りに従って進めていくような診療ではありません.

 

そして,エビデンスは決して個々の医師の臨床技能にとって代わるものではなく, EBMの作業のところでも述べるように,エビデンスを目の前の患者さんに当てはめるには医師の臨床技能が必須です.

 

同様に,数多くの診療ガイドラインが出版されていますが,これらについても,盲目的にガイドラインに沿って診療していればよい,あるいはガイドラインに沿った診療をしなければならないというような金科玉条ではありません.

 

そもそも,ガイドラインはあくまでエビデンスに基づいて「一般的な」診療指針を示すものにすぎず,それが該当しない患者さんは数多く存在します(当てはまるのは60〜95%ぐらいでしょう).

 

厚生労働省委託事業の「EBM(根拠に基づく医療)普及推進事業」によって公開されているMinds (Medical Information Network Distribution Service)ガイドラインセンターのホームページでも「診療ガイドラインは,医療者の経験を否定するものではありません.

 

またガイドラインに示されるのは一般的な診療方法であるため,必ずしも個々の患者の状況に当てはまるとは限りません」と書かれています.

 

どちらかというと最低ラインの診療を確保するためのツールととらえるべきかもしれません.

 

ただし,明らかにガイドラインと異なるような診療を行う際には,その理由を患者さんに説明して同意を得ておくことが重要です.

 

 

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