研究デザインに倫理を組み込む【統計解析講義応用】

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研究デザインに倫理を組み込む|【統計学・統計解析講義応用】

研究デザインに倫理を組み込む【統計解析講義応用】


目次  研究デザインに倫理を組み込む【統計解析講義応用】

 

 

研究デザインに倫理を組み込む

 

研究者は,研究プロジェクトの計画にあたり,倫理的要件を慎重に考慮し,人間を保護するための計画が十分であるかどうかを絶えず自問する必要がある.

 

研究している最中に,予期しなかった倫理的ジレンマが生じることもあるので,研究計画を遂行するあいだは,ずっと注意を怠ってはならない.

 

もちろん,倫理的研究を行う第一歩は,研究設問を精査し,それらが臨床的に重要か,また倫理ガイドラインに合致する方法で研究を行うことが可能かを判断することである.

 

厳密さについての方法論上の決定は,倫理的配慮において必須要素である.

 

次にあげるのは,研究デザインのさまざまな面について考えるときに生じるであろう,問いの例である.

 

研究デザイン

 

・参加者は,さまざまな処置のグループに,公平に割り当てられるか.

 

・研究コントロールによって,参加者が被るリスクは増大するか.

 

・研究のための環境は,参加者を不快から守るように選択されているか.

 

介入

 

・介入は,利益を最大限とし,損害を最小限とするようデザインされているか.

 

・どのような条件の場合に,処置を中止もしくは変更するのか.

 

標本

 

・無意識に,また不必要に,重要な構成人員(例:女性,少数派)を除外するように,母集団を決めていないか.

 

・とくにハイリスクにある人々(例:不安定な状態の患者)を,研究から免除するような方法で,母集団を決めていないか.

 

・参加可能な人を,公正に,研究に募集しているか,

 

データ収集

 

・回答者の負担を最小限にする方法で,データは収集されるか.

 

・データの守秘義務を保証する手段は適切か.

 

・データ収集スタッフは,感受性豊かで礼儀正しくあるよう,適切に訓練されているか.

 

報告

 

・参加者の身元は,適切に保護されているか.

 

個人と施設の双方のプライバシーを守る手段として,研究報告では,研究が行われた場所について明らかにしないことが多い.

 

たとえば,施設の名前も場所も明らかにせず,「200床の,民間の営利目的のナーシングホームで,データを収集した」というような報告である.

 

ひとたび,研究手順が進行すれば,研究者は,それらの手順を自己評価し,倫理要件を満たしているかどうかを判断すべきである.

 

通常,研究者は研究結果をできるかぎり簡潔に報告しようとするため,参加者の権利保護についての努力を詳しく説明しない傾向がある(言及しないからといって,もちろん保護策をとらなかったわけではない).

 

研究者が,研究のための倫理ガイドラインの厳守についてとくに討議する可能性が高いのは,研究に小さからぬリスクがともなう場合や,研究対象のグループが傷つきやすい立場にある場合である.

 

倫理的問題を強調した研究例を,以下に2つ示す.

 

量的研究からの研究例

 

ウィルソン,マクファーレン,レミー,マレッカ〔WVson, McFarlane, Lemmy, & Malecha, 2001〕は,虐待を受けた女性が警察を呼んだ場合に,暴力をさらに加えられる可能性を減らすことができるかを評価する研究を行った.

 

その研究は,近親者を暴行罪で警察に告発する前と告発後での,女性が受けた暴力や殺される危険性の程度を記述しようとした.

 

担当部局(大都市警察における特別家庭内暴力課)と研究者によるIRBから,研究実施の承認を得たのち,研究者は,研究規準(18歳以上で英語を話す)に合致し, 1998年の特定の1か月間に,暴行罪で告発しようとした女性の連続標本に面接しようとした.

 

研究調査者が参加予定者に接触して,研究目的,研究プロトコル,管理時間,追跡調査スケジュールについて説明した.

 

女性たちには,1回の面接の完了につき20ドルが支払われた.

 

口頭と書面の双方による同意が90人の女性の標本から得られた.

 

研究者は,データ収集のあいだ,女性の権利を守るよう配慮した.

 

守秘義務のため,個室の面接室でデータを収集し,女性たちにはID番号を振った.

 

参加者に都合のいい,プライベートの安全な時間に3か月後と6か月後の追跡面接を行うことで,追跡面接のための研究対象の安全が保証できた.

 

全部で83人の女性が,この3回にわたる面接を受けた.

 

その結果,研究者は,警察の助けを求めた女性では,虐待のおそれ,虐待の実際の経験および殺される危険性を感じることが,以前よりも大幅に減ったことがわかった.

 

 

質的研究からの研究例

 

ワッカーバース〔Wackerbarth, 1999〕は,介護者の意思決定のダイナミクスを記述するようデザインした,徹底的な研究に着手した.

 

その研究は,認知症の人々を介護する家族の意思決定過程を理解することに焦点をあてた.

 

アルツハイマー協会の地域支部が,支部長から紹介状を添えて,面接前質問紙を100人に送った.

 

研究への参加に関心を示した介護者は,同意書と面接前質問紙に記入の上,返送した.

 

質問紙を返送した80人の介護者集団から,28人が面接に選ばれた.

 

意思決定モデルをつくるため,広い観点を代表するよう,標本は慎重に選ばれた.

 

ワッカーバースの論文では,参加者の権利のためにこの研究ではらわれた注意が,ていねいに説明されている.

 

@研究目的と方法が正確に理解されるように,口頭と書面で説明した,

 

A同意書は,研究参加の自発性を強調し,参加者の秘密を保持するための予防策を示し,データ収集の開始前に署名を得た,

 

B面接前質問紙,テープ録音,面接記録は,すべて鍵のかかるファイル庫に収納した,

 

C研究資料には,身元を確認できる情報を付けなかった,

 

D参加者に求められたのは,記述された資料を検討することと,引用や研究結果を発表する前に許可を与えることであった.

 

ワッカーバースは,面接に基づいて,長期にわたる介護者の経験を図式化したモデルをつくり,耐えられる状況を維持するためになされる意思決定について記録した.

 

そのモデルによって,認知症の家族の世話をする介護者が意思決定しようとする際に生じる,対人関係上の葛藤がとらえられた.

 

・研究は常に倫理的に行われてきたわけではなく,また,倫理的にも方法論的にも厳密な研究をデザインする際に,研究者はしばしば正真正銘の倫理的ジレンマに直面する.そのため,研究者の指針となる倫理規定が発展した.

 

・たいていのガイドラインに盛り込まれている3大倫理原則は,恩恵,人問の尊厳の尊重,そして公正である.

 

・恩恵に該当するものは,身体的および心理的損害から参加者を守ること,参加者を搾取から守ること,そして,なんらかの役に立つこと,などである.

 

・研究の実施を決めるにあたり,研究者が注意深く比較考慮する必要があるのは,個人にとっての参加によるリスク/iU益比と,社会にとって見込まれる利益に対して,参加者が被るリスクである.

 

・人間の尊厳の尊重の原則には,参加者の自己決定権が含まれる.自己決定権は,研究への参加をはじめとして,参加者が自分自身の活動を自由にコントロールできることを意味する.

 

・人間の尊厳の尊重の原則にはまた,完全な開示も含まれる.それは,研究者が参加予定者に,参加者の権利および研究の性質すべてについて十分に説明したことを意味する.

 

完全開示によって結果が偏るというリスクが生じる場合,研究者は,秘密情報収集または事実の不告知(参加者に知らせずに,または同意を得ずに情報を収集すること),または欺瞞(参加者に情報を提供しないか,または偽りの情報を提供する)をもちいることがある.

 

欺瞞または事実の不告知が必要であると考えられる場合は,リスクを最小限に抑え,参加者の他の権利を守るために,特別な予防策をもちいなければならない.

 

・公正には,公平な処遇の権利(参加者の選択において,また研究過程の最中において)とフライバシーの権利が含まれる.プライバシーは,匿名の保持によって(研究者でさえ参加者の身元を知らない),または正式な守秘義務の手順によって守られる.

 

・インフォームド・コンセントの手順は,参加予定者が,参加について合理的な判断を下せるように,必要な情報を提供する.ふつう,自由意思による参加,および説明を受けたうえでの参加である旨を文書化した,同意轡への署名を含む.質的研究では,同意は,プロセス・コンセントを通じて,研究の進展に従って参加者に継続的に再交渉する必要があるだろう.

 

・傷つきやすい立場の対象者は,補助的な保護が必要となる.これらの人々が傷つきやすい立場にあるのは,研究参加について正しく説明を受けたうえで決定を下すことができないためである(例:子ども).また,参加者の環境のために,自由選択に制約があると感じるためである(例:刑務所の被収容者).または,参加者の環境のために,身体的もしくは心理的損害を被るリスクが高くなるためである(例:妊婦,終末期患者).

 

・研究対象者委員会または施設内審査委員会(IRB)による,研究の倫理的側面の外部審査は,大いにすすめられるが,研究を助成する機関,または参加者を募集する組織のどちらかによって要求される.

 

・参加者へのリスクがきわめて小さい研究では,能率的審査(略式審査; IRBの委員1名による審査)を,完全審査の代わりとしてもよい.予想されるリスクがまったくない場合は,研究は,審査を免除されることもある.

 

・IRBの審査がない場合でさえも,研究者は,少なくとも1名の外部の助言者に相談するよう,常に助言を受ける.外部助言者の見解により,提案された研究の倫理について,客観的に評価できる.

 

・研究者は,研究の計画と実施の全過程をとおして,倫理的要件を慎重に考慮し,対象者の保護のための予防策が十分かどうかを,継続的に自問する必要がある.

 

 

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