自然主義的方法と質的研究【統計解析講義応用】

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自然主義的方法と質的研究|【統計学・統計解析講義応用】

自然主義的方法と質的研究【統計解析講義応用】


目次  自然主義的方法と質的研究【統計解析講義応用】

 

 

自然主義的方法と質的研究

 

自然主義的探究の方法は,人間の複雑さを直接に探求することで,その論点をあつかおうとする.

 

自然主義の伝統では研究者は,人間の本来の複雑さや,人間自身の体験をかたちづくる能力や,真実は現実から構成されるという考えを主張する.

 

その結果,自然主義的研究は通常,語られた主観的な質的(qualitative)材料を慎重に収集し分析することを通じて,人間の体験をあるがままに理解することにかなりの重きをおいている.

 

伝統的な「科学的方法(scientific method)」を拒絶する研究者は,古典的モデルの主たる限界は,それが還元主義的(reductionist)であると考えている.

 

つまり,それは,人間の体験を研究下にあるほんのいくつかの概念に還元する.

 

そしてそれらの概念は,研究下にある人間の体験から生じたのでなく,研究者によって,前もって定義づけられたものである.

 

自然主義の研究者は,人間の体験のダイナミックで全体的(holistic)で,個別的な視点を強調する傾向にあり,それを体験している人のコンテクスト内で,そっくりそのままにこれらの視点をとらえようとする.

 

研究の過程で生じた発見を利用するために,融通性があり発展する手順をもちいる.

 

自然主義的研究はいつもフィールド(つまり自然環境)で行われ,長い時間にわたることが多い.

 

一方,量的研究は自然環境でもまた人工的に設定された実験室環境でもなされる.

 

自然主義的研究では,情報の収集と分析は同時に進むのが典型的である.

 

研究者が得た情報を消化していくにつれて,洞察が得られ,新しい疑問が生じ,その洞察を詳細に説明したり確かめるためにさらなるエビデンスを探し求めていく.

 

帰納法プロセスを通じて,研究者は,観察下のプロセスを詳しく説明する助けとなる理論や記述を開発するための情報を統合する.

 

自然主義的研究は,複雑な現象のさまざまな面を解明する可能性をもつような,十分で詳細な情報にたどりつく.

 

こうした特徴をもつこと,および質的研究の結果は素人の聞き手に比較的伝えやすいということから,質的方法はヘルスケア政策と将来の発展に,より重要な役割を果たすだろう.

 

周到な質的研究でわかることが表面的であることはまれだが,そのアプローチにはいくつかの限界がある.

 

人間が情報を集めるための用具として直接に使われる.

 

そして人間はとても知的で敏感で,しかし誤りに陥りがちな道具である.

 

技能のある研究者がもつ分析的洞察を豊かにする主観というものは,あまり有能でない探究者たちのありふれた「発見(findings)」に勝ることがある.

 

自然主義的探究の主観的性質によって,その結論の特異的な性質について関心が生まれるかもしれない.

 

2人の自然主義の研究者が,同じ場で同じ現象を研究したとして同じ結果にいたるだろうか.

 

多くの自然主義的研究のもとでは比較的小さいグループが対象となるという事実によって,状況はさらに複雑になる.

 

自然主義的探究での結果の一般化可能性についての疑問が生じることもある.

 

 

複数のパラダイムと看護研究

 

パラダイムはわれわれの知的好奇心を制限するブラインドとしてではなく,関心のある現象の焦点をシャープにする助けとなるレンズとして見るべきである.

 

看護問題の研究のために選択できるパラダイムの出現は,われわれの視点からいえば,実践のための新しいエビデンスを追及するには健康的で望ましい傾向である.

 

研究者の世界観はパラダイム的であるかもしれないが,知識自体はそうではない.

 

むろん,もしその2つのパラダイムに十分整った方法がなければ,方法は長所と限界で補足しあっていることが多いので,看護の知識は実際,乏しいものになってしまう.

 

知的多元論は奨励すべきであるし,育てるべきだろうと思われる.

 

それゆえ,2つのパラダイムとそれらが関連する方法の違いを強調すれば,その区別が理解しやすくなる.

 

しかしこの2つのパラダイムが共通にもっているものを記しておくことも重要なので,ここで少し述べておく.

 

最終目標:基本とするパラダイムにかかわりなく,学問的探究の最終目標は,現象についての理解を得ることである.

 

・量的および質的研究者はともに,自分たちが関心ある世界のある視点についての真実をとらえようとしていて,どちらも看護知識に重要な貢献をしうる.

 

さらに,質的研究は,よりコントロールされた量的研究の重要な出発点としての役割を果たすことが多い.

 

・外部エビデンス:「経験主義」という用語は伝統的な科学的アプローチと組んで成り立ってきたが,研究者がその2つの伝統において,彼らの感覚を通じて収集した外部エビデンスを集め分析するというのが実際のところである.

 

質的研究者も量的研究者も自分たちの結論のために自分の信念や世界観に頼っている,

 

ひじ掛け椅子に座っているだけの分析者ではないということである.情報は熟考したかたちで他者から集められるのだ.

 

・人間の協力をよりどころとすること:看護研究のエビデンスは,原則的に人間の参加者から成り立つので,人間の協力の必要はさけられない.

 

 人々の特性と経験を理解するために,研究者は人々が研究に参加し,そして率直に活動し話してくれるように説得しなければならない.

 

ある話題にとって,率直さと協力が挑むべき要件であるのは,どちらの伝統の研究者にとっても同じである.

 

・倫理的拘束:人間に関する研究は倫理的原則によって導かれるが,ときにはそれが研究者の目標を妨げることもある.

 

たとえば,もし研究者が効果があるかもしれない介入を検証したいからといって,どうなるかを見るためにある人々の治療を留保することは倫理的だろうか.パラダイムの方向性にかかわらず,研究者は倫理上のジレンマに直面することが多い.

 

・学問的研究の誤りを免れえないこと:どちらのパラタイムにせよ,事実上すべての研究になんらかの限界がある.

 

どの研究設問も多くの違った方法で取りあつかうことができるし,どれかをとらざるをえないのは仕方のないことである.

 

経済的な制約はどこにでもみられるものであるが,資金が豊かであるときでさえも限界はある.

 

このことは小さく単純な研究に価値がないということではない.

 

どんな研究も研究設問に完璧に答えることはできないということを意味している.

 

1つひとつの完成された研究が,知識の蓄積のもとに加わっていくのである.

 

同じ課題を数人の研究者が考えたとすると,同じもしくは類似の結果を得たその各々は,その課題に答えるうえでの信頼を増やしていくことになる.

 

1つひとつの研究に欠点があるからこそ,研究決定の適切性を評価するときに,研究者がする選択と決定を理解することが重要である.

 

このように,哲学や方法論の違いにもかかわらず,伝統的な量的アプローチと自然主義的な方法をもちいる研究者は,全体の目標を共有し,多くの類似の制約と挑戦に直面することが多い.

 

適切な方法の選択は,研究者の個人的な好みと哲学によるが,また研究疑問の課題にもよる.

 

もし研究者が,概日リズム(サーカディアン・リズム;生理的サイクル)に対する手術の影響が何かを問うと,その研究者は,さまざまな身体特性の対象でのリズム変動を慎重に量的に測定することでその影響をあらわす必要がある.

 

一方,もし研究者が「子どもの死に対処するために親が学んでいくプロセスはどういうものか?」と尋ねるならば,研究者はそのようなプロセスを量化するのに苦労するかもしれない.

 

研究者の個人的世界観は課題をつくるのに役立つ.

 

看護研究のためのパラダイムについて読むと,2つのパラダイムの1つ,つまり自分の世界観,現実感にとてもよく合うようなパラダイムのほうにより魅了されるかもしれない.

 

しかし,学問的探究のための両方のアプローチについて学び尊重することと,それらの長所と限界を認識することは大事である.

 

 

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