人権と倫理の進化:ニュルンベルクからヘルシンキへ【ChatGPT統計解析】
過去40年間で、人権侵害に対応するためにさまざまな倫理規定が発展してきました。その中で国際的に認められた最初の試みの1つが、ナチスの残虐行為に対応して発展したニュルンベルク綱領です。その後、1964年に世界医師会が採択したヘルシンキ宣言が有名で、多くの学問領域で独自の倫理規定が制定されています。米国では、1978年に「ベルモンドレポート」が発表され、恩恵、人間の尊厳、公正の3つの原則を掲げています。また、研究者は被験者への害を最小限に抑えることが求められ、心理的影響にも十分な配慮が必要です。
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倫理規定
過去40年のあいだ,主として先に述べたような人権侵害に対応するため,さまざまな倫理規定が発展してきた.
倫理的基準を確立する試みとして,初めて国際的に認められたものの1つに,ニュルンベルク綱領(Nuremberg Code)というものがある.
これは,ナチスの残虐行為がニュルンベルク裁判で公にされたのちに発展した.
その後に発展した国際基準がいくつかあるが,もっとも名高いものが,ヘルシンキ宣言(Declaration of Helsinki)である.
これは, 1964年に世界医師会(World Medical Association)によって採択され,最近では2000年に修正された.
ほとんどの学問領域で,それぞれの倫理規定が制定された. American Nurses Association(ANA;米国看護師協会)は,『看護研究の指揮,普及,施行における倫理ガイドライン』(Ethical Guidelines in the Conduct, Dissemination, and Implementation of Nursing Research 〔Silva, 1995〕)と題する文書を1995年に発行した.
American Sociological Association (米国社会学会)は, 1997年に「倫理規定」(Code of Ethics)を改訂,発行した.
心理学者のためのガイドラインは, 1992年にAmerican Psychological Association (米国心理学会)によって,「心理学者の倫理的原則および実施規定」(Ethical Principles of Psychologists and Code of Conduct)として発行された.
これらの文書に明確に示されている基本的原則には,かなり重複した部分がみられるが,どれもがそれぞれの領域における,とくに重要な問題をあつかっている.
米国では, National Commission for the Protection of Human Subjects of Biomedical and Behavioral Research (生物医学および行動学的研究の対象者保護のための国家委員会)によって,1978年に,重要な倫理規定が採択された.
委員会は, National Research Act (国家研究法,公法93-348)により設立され, 1978年に報告書を発表した.
それが,連邦政府が助成する研究に効力をもつ規則の基礎となった.
報告書は「ベルモンドレポート」(Belmont Report)ともいい,特定の学問領域で採択された多くのガイドラインのモデルでもあった.
「ベルモンドレポート」は,3つの重要な倫理的原則として,恩恵,人間の尊厳の尊重,公正であることを示しており,研究における倫理行為基準は,それらの原則に基づいている.
以下のウェブサイトでは,さまざまな倫理規定や政府助成研究に関する倫理的要件についての情報を提供している.
・Office of Human Research Protections (OHRP:人間研究保護局)による,被験者保護のための米国連邦政府規定:http://ohrp.osophs.dhhs.gov
・Natural Sciences and Engineering Research Council of Canada (カナダ自然科学および工学研究協議会)の第3回協議会の政策声明によるカナダの規定:http://www.nserc.ca/programs/ethics/english
・ American Pychological Association (米国心理学会):http://www.apa.or9/ethics/code.html
・ American Sociological Association (米国社会学会):http://www.asanet.org/members/ecoderev.html
恩恵の原則
研究におけるもっとも基本的な倫理的原則の1つは恩恵(benencence)の原則であり,これは,何よりも害を与えない,という一般原則そのものである.
ANAガイドラインの倫理原則2は,恩恵をとりあげている.
研究者の大半は,この原則にあるよう,また,研究参加者であるという潜在的な恩恵と危険のバランスを,できるかぎり取り除くように努めなくてはならない.
明らかに,研究参加者を,深刻な害,もしくは永続的な害をもたらす体験にさらすことは容認できない.
研究は,有資格者によってのみ実施されるべきで,危険が予見される技術装置を使用したり特殊な処置を行う場合は,とくに配慮すべきである.
研究の継続により,参加者に負傷,死,障害または過度の苦痛をもたらすことが疑われる根拠がある場合は,倫理的な研究者は研究を中止する心構えでいなければならない.
新しい医療処置や薬物の試験を行うときは,ほとんどの場合,人に試験する前に,動物もしくは組織培養で実験することが望ましい(動物を対象とする処置に関する倫理ガイドラインは,動物を研究する場合に念頭におくべきである).
たとえば,米国心理学会による「動物のケアおよび利用における倫理的行為のためのガイドライン(guidelines : ethical conduct in the care and use of animals)」(http://www.apa.org/science/anguide.html)参照.
リスク抑制の例
ヴァルダとベンケ〔Varda & Behnke, 2000〕は,初めての沐浴のタイミング(出生1時間後と2時間後)が,新生児の体温に与える影響を研究した.
リスクを最小限に抑えるために,体温が不安定になる可能性のある症状(例:感染症,胎児ディストレス,低血糖症)のあるすべての新生児を対象から除外した.
身体的危害から人間を守るというのは明瞭であるが,研究の参加者への心理的影響は微妙でとらえがたいと思われるので,十分な配慮と感受性が必要である.
たとえば,参加者が自分の見解や欠点,または恐れについて質問されることがある.
そうした質問によって,微妙な内容の個人的情報が明らかになってしまうかもしれない.
大切なのは,研究者がいかなる質問も差し控えなくてはならないということではなく,参加者の心理に入り込むことについては注意深い配慮が必要であるということである.
研究者は,次のような方法で心理的危害を回避もしくは最小限にすることができる.
@質問の言葉遣いに十分に注意をはらう,
Aデータを収集したのち,参加者を対象にした公聴会(debriefing)を開いて参加者が質問したり,不満な点を述べられるようにする,
B健康面や,社会面,心理面にかかわる適切なサービスを紹介する場合もある.
紹介の例
ポーリット,ロンドン.マルティネス〔Polit, London,& Martinez, 2001〕は,4大都市で,約4000人の貧困女性の健康状態を調査した.
彼らが行った90分の面接では,薬物乱用.抑うつ,育児ストレス,家庭内暴力といった微妙な問題を含んでいた。
1人ひとりの面接者は,インフォメーション・シートを携えた.そのシートには,研究参加者が助けを必要とする問題に対応できる,地域のサービス提供部署との連絡方法が記されていた.
質的研究では,より鋭い感受性が必要となるだろう.
きわめて個人的な領域を詳細に探索することが多いからである.
徹底的な調査では,実際に,研究参加者が以前には抑圧していた深い恐怖や不安が,露わになることがある.
背後にある研究の伝統が何であろうと,質的研究者は,そうした問題を予期して,とくに気を配る必要がある.
過去40年間で、人権侵害に対応するためにさまざまな倫理規定が発展してきました。特に、ナチス政権下で行われた残虐行為に対する反応として、多くの国際的な倫理規定が制定されました。これにより、科学的および医療的研究における被験者の権利を保護するための指針が確立されました。最初に国際的に認められた倫理的基準の試みの1つが、ナチスの人体実験などの残虐行為が明らかになったニュルンベルク裁判の後に発展した「ニュルンベルク綱領」です。この綱領は、被験者の同意を得ることの重要性や、実験の際に被験者に危害を加えないという基本的な倫理的原則を示しています。このような国際的な基準はその後、さらに発展し、1964年に世界医師会(World Medical Association)が採択した「ヘルシンキ宣言」(Declaration of Helsinki)は、医学研究における倫理規定として最も名高いものの1つです。この宣言は、医学研究において被験者の人権と安全を最優先にすることを強調しており、特に、被験者のインフォームド・コンセント(説明を受けた上での同意)を重要視しています。2000年にはこの宣言が改訂され、さらに具体的で厳格なガイドラインが導入されました。これにより、現代の医学研究における倫理的な枠組みが強化され、被験者保護の観点からも一層の発展が見られました。ほとんどの学問領域において、それぞれの分野に応じた倫理規定が制定されています。例えば、米国看護師協会(American Nurses Association; ANA)は1995年に『看護研究の指揮、普及、施行における倫理ガイドライン』(Ethical Guidelines in the Conduct, Dissemination, and Implementation of Nursing Research 〔Silva, 1995〕)という文書を発行し、看護研究における倫理的な指針を示しました。これにより、看護師が研究を実施する際の基準が確立され、看護の現場での倫理的な行動が強調されるようになりました。同様に、米国社会学会(American Sociological Association)は1997年に「倫理規定」(Code of Ethics)を改訂・発行し、社会学の分野においても倫理的な行動が求められるようになっています。このように、それぞれの学問領域で独自の倫理規定が制定されていることは、各分野がその特有の問題に対処するために必要な枠組みを持っていることを示しています。心理学の分野でも、1992年に米国心理学会(American Psychological Association; APA)が「心理学者の倫理的原則および実施規定」(Ethical Principles of Psychologists and Code of Conduct)を発行しました。このガイドラインは、心理学者が研究を行う際に遵守すべき倫理的な行動の指針を提供しており、特に心理学研究における被験者保護の観点が強調されています。これらの倫理規定に共通して見られる基本的な原則には、かなり重複した部分が存在しますが、それぞれの学問領域において、特に重要な問題に対応するための具体的な指針が含まれています。特に米国では、生物医学および行動学的研究の対象者保護のための国家委員会(National Commission for the Protection of Human Subjects of Biomedical and Behavioral Research)が1978年に重要な倫理規定を採択し、研究倫理に関する基本的な指針を提供しました。この委員会は、National Research Act(国家研究法、公法93-348)によって設立され、1978年に「ベルモンドレポート」(Belmont Report)という報告書を発表しました。この報告書は、連邦政府が助成する研究に対する規則の基礎となり、その後、多くの学問領域で採択されたガイドラインのモデルとなりました。ベルモンドレポートは、研究における3つの重要な倫理的原則として「恩恵」、「人間の尊厳の尊重」、および「公正」を掲げており、これらの原則は現代の研究倫理の基盤となっています。「恩恵」の原則とは、研究者が被験者に害を与えないようにし、むしろ被験者に利益をもたらすよう努めることを意味します。研究者は、参加者に対するリスクと利益のバランスを慎重に評価し、可能な限りリスクを最小限に抑える必要があります。たとえば、看護研究の分野におけるANAガイドラインでは、恩恵の原則が明確に示されており、研究者が被験者に与えるリスクを可能な限り軽減することが求められています。研究者の多くは、この原則に基づき、研究参加者に対する潜在的なリスクと利益のバランスを常に考慮しながら研究を進めなければなりません。特に、研究参加者を深刻な危害や永続的な障害にさらすことは、倫理的に許されないとされています。また、研究は有資格者によってのみ実施されるべきであり、危険が予見される技術装置や特殊な処置を用いる場合は、特に慎重な配慮が必要です。もし研究の継続が参加者に深刻な害をもたらす可能性がある場合、倫理的な研究者はその研究を中止する覚悟がなければなりません。新しい医療処置や薬物の試験を行う際には、ほとんどの場合、動物や組織培養での事前の実験が推奨されており、動物を対象とする場合には、そのための倫理ガイドラインも適用されます。たとえば、米国心理学会による「動物のケアおよび利用における倫理的行為のためのガイドライン」では、動物実験における適切な取り扱いが詳細に定められています。研究者は、実験において被験者の身体的な危害を最小限に抑えることが求められる一方で、心理的影響にも十分な注意を払う必要があります。特に、被験者が自分の個人的な見解や恐怖、欠点に直面することが求められる研究では、心理的な影響が微妙であり、慎重な配慮が必要です。研究者は、質問の内容や言葉遣いに十分注意を払い、被験者が心理的に不快な状況に陥らないように配慮する必要があります。さらに、データ収集後には、被験者を対象にした説明会を開催し、彼らが質問や不満を述べられる機会を提供することも重要です。こうした方法により、研究者は被験者に対する心理的な危害を回避し、または最小限に抑えることができます。たとえば、ヴァルダとベンケ〔Varda & Behnke, 2000〕による新生児の体温に対する研究では、体温が不安定になる可能性のある症状を持つ新生児を除外することで、リスクを最小限に抑えました。このようなリスク抑制のための具体的な措置は、被験者を保護するために不可欠です。研究者は、被験者が身体的だけでなく、心理的にも安全であるよう、常に配慮しなければなりません。
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