倫理的研究のデザイン【統計解析講義応用】

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倫理的研究のデザイン|【統計学・統計解析講義応用】

倫理的研究のデザイン【統計解析講義応用】


目次  倫理的研究のデザイン【統計解析講義応用】

 

 

倫理的研究のデザイン

 

倫理的な問題は,研究デザインとデザインの施行のあらゆる側面に浸透している.

 

したがって,研究デザインの技術を論じる前に,研究計画を作成するうえで考慮しなくてはならない主な倫理的原則を提示しよう.

 

研究の急増にともない,研究参加者の人権擁護への関心も鳥まっている.

 

倫理的問題は看護領域でとくに顕著であるが,それは,看護実践を成り立たせているものと,研究情報を収集することとの境界線が,ナースによる研究の増加にともない,あいまいになってきたためである.

 

さらに,倫理的要件と,実践のためにできるかぎり最良のエビデンスをつくりだす要件とが相反することがあり,倫理は看護研究者に独特の課題をもたらしている.

 

倫理ガイドラインの必要性

 

看護研究では,人問を研究参加者として利用するのは通常であるが,そのような場合,それらの人々の権利か確実に保護されるように配慮しなければならない.

 

倫理的行為の必要条件はきわめて明白なため,これ以上のコメントは必要ないとも思えるが,これまで倫理的配慮に十分に注意がはらわれてきたとはいえないのが事実である.

 

倫理ガイドラインが急務であるいくつかの理由を考えてみよう.

 

歴史的背景

 

現代の文明社会に生きるわれわれは,研究の文脈のなかで,組織ぐるみで道義に反したのは,最近のことではなく何世紀も前のことと考えがちだが,実はそうではない.

 

1930年代およびぼ10年代のナチスによる医学実験は,近年,倫理的行為を無視した雌たる例である.

 

ナチスによる研究プログラムは,戦争捕虜や人種の「敵」を多数の実験で使用し,人間の耐久力の限界や,疾病および未試験の薬物に対する反応をテストした.

 

研究が非倫理的である理由は被験者を永続的な身体的危害や死にまでさらしただけでなく,実験への参加を拒否できなかった点にある.

 

近年の米国でも,倫理違反に問われた研究があった.

 

たとえば,タスキギー梅毒研究として知られる米国公衆衛生局の助成で行われた研究は,1932年から1972年のあいた,貧困層のアフリカ系アメリカ人社会出身の400人の学生を対象に梅毒の影響を調査したものであった.

 

治療措置を行わない場合の病気の経過を調べるため,治療が故意に差し控えられた.

 

非倫理的研究としてよく知られるもう1つの例は,ブルックリンのユダヤ慢性疾患病院で,患名の同意を得ずに,生きたがん細胞を高齢の患者に注入したものである.

 

さらにドイツで1993年,米国連邦政府機関が助成していた研究で,何千人もの人々に放射能実験を行っていたことが判明した.

 

その多くは囚人や高齢の入院患者であった.

 

そのほかにも多くの倫理違反の研究例が、上記の例より目立たないものが多いが明らかになり,倫理問題が今日あるような高い認知度を得るにいたった.

 

研究の実施における倫理的ジレンマ

 

倫理的原則に反する研究は,残酷であったり不道徳なことが意図的に行われることはまれで,知識が重要であり,長期的にみれば人命を救い有益であるという確信から思いもよらずに生じている場合が多い.

 

参加者の人権と研究の要求が真っ向から対立する研究問題があると,研究者には倫理的ジレンマ(ethical dilemma)が突きっけられる.

 

 

以下にあげるような研究問題では,厳密性の要求が倫理的配慮と相反する.

 

1.研究設問:集中治療室(ICU)で,患者を治療中のナースは,どの程度,患者に感情移入するのか.
倫理的ジレンマ:研究参加者は,研究における自分の役割を認識していることが,倫理的に要求される.この研究に参加しているナースに, ICU患者の治療にどの程度,感情移入しているかについて,詳しく観察していることを知らせた場合,ナースの行動は「ふつう」だろうか.研究観察者がそこにいるとわかっているために,ナースの通常の行動が変化した場合,研究結果は妥当とはいえない.

 

2.研究設問:終末期疾患の子どもをもつ親のコーピンク・メカニズムはどのようなものか.
倫理的ジレンマ:この研究設問に答えるために,研究者は,親が生活において脆弱な状態におかれたときの心理状態に,立ち入って調べる必要があるだろう.そのような調査は苦痛であり,心的外傷にもなりかねない.しかし,親のコーピング・メカニズムがわかれば,親の悲嘆や怒りに対応する,より効果的な方法を考案できるかもしれない.

 

3.研究設問:新薬による治療が,がん患者の寿命を延ばすか.
倫理的ジレンマ:介入の効果を調べる最良の方法は,ある研究参加者に介入し,別の参加者には行わず,両グループ間に差異が生じるかどうかを調べることである.介入が検証されていなければ(例:新薬),介入を受けたクループは,危険な副作用にさらされる可能性がある.逆に,投薬されなかったグループは,有益な治療を拒まれたことになる.

 

4.研究設問:成人した子どもが,終末期状態にある親の世話をするという,日々のストレスに適応する過程はどのようなものか.
倫理的ジレンマ:この研究設問にふさわしいと思われる質的研究においては,研究者が参加者とかなり密にかかわりあうため,「秘密」や特定の人しか知らない情報を共有するようになる.面接(インタビュー,聞きとり)が告白になり,不適切な行動,違法な行動,または不道徳な行動にさえなることもある.

 

この例で,参加者が,親を身体的に虐待していると認めたとする研究者は,いかにその情報に,守秘義務の誓約に反することなく対応できるか.さらに,研究者が情報を適切な機関に漏洩した場合,他の参加者に誠意をもって守秘義務の誓約ができるか.

 

これらの例が示唆するように,人間の参加者とかかわる研究者は,苦しい立場に立たされることがある.

 

研究者は,知識を向上させ,人手できる最良の方法をもちいて,実践のための最良のエビデンスを開発する義務がある.

 

しかし,人権擁護のために発展してきた倫理規定が命じるところにも従わなければならない.

 

もう1種類のジレンマは,看護研究者が,利害衝突という状況に直面することから生ずる.

 

ナースとして期待される行動が,研究者として期待される行動と相容れないためである(たとえば,標準的研究プロトコルからそれて,患者に必要な支援をする).

 

そうした衝突やジレンマがあるからこそ,倫理規定(codes of ethics)が設けられ,研究者の努力を導いてきたのである.

 

 

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