自己決定権と情報開示:研究倫理の新たな課題【ChatGPT統計解析】
人間の尊厳の尊重は「ベルモンドレポート」で示されており、自己決定権と完全な情報開示の権利が含まれる。自己決定権は、参加者が自由意思で研究参加を決める権利であり、強制や脅迫を受けず、質問や情報拒否、参加中止の権利もある。完全な情報開示は研究の内容やリスクについて参加者に説明することで、これらの権利はインフォームド・コンセントの基礎である。ただし、自己決定権や完全な開示が難しい場合や、偏りを生む可能性もあり、隠れた情報収集や欺瞞が議論される。特にインターネット上のデータ収集では倫理的な課題が新たに浮上しており、研究者は電子コミュニティの権利を慎重に守る必要がある。
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人間の尊厳の尊重の原則
人間の尊厳の尊重は,「ベルモンドレポート」に第2倫理原則として明確に示されている.
本原則は,自己決定権および完全な情報開示の権利を含んでおり, ANAガイドラインでは原則1および3に含まれる.
自己決定権
人間は,自分自身の活動をコントロールできる,自律的行為者としてあつかわれるべきである.
自己決定(self-determination)の原則とは,研究参加予定者が,自由意思で研究に参加するかどうかを決める権利をもつことを意味し,その際,いかなる損害や不利なあつかいを受けるリスクをともなってはならない.
また,質問をし,情報の提供を拒否し,説明を求め,参加を打ち切る権利をもつことをも意味している.
自己決定権には,いかなる種類の強制も受けないことが含まれる.
強制(coercion)とは,研究への不参加によって損害を被るような,明らかな,もしくは隠れた脅迫を受けることや,参加への同意に対する過度の報酬も含んでいる.研究者が,研究参加予定者に対して,権限,コントロール,影響研究への参加率を高めるために給付金を出すことは,研究下の集団への参加者募集がむずかしい場合や,その研究に時間がかかり,または退屈である場合は,とくに効果的である.
給付金には,1ドルから数百ドルまでの幅があるが10ドルから25ドルの範囲内であることが多い.
研究を助成する連邦機関は,無条件に給付金を支払うことはないが,ある程度の費用弁済(例:参加者の交通費,保育費.昼食代)は認めるだろう.
完全な情報開示の権利
人問の尊厳の尊重の原則は,人々が情報に基づいて自由意思で研究参加を決定する権利を含んでおり,完全な開示を要する.
完全な開示(full disclosure)とは,研究者が,研究の特性,人々が参加を拒否する権利,研究者の責任,予測しうるリスクと利益について,十分に説明しておくことである.
自己決定権と完全な開示の権利は,インフォームド・コンセントの基礎をなす2大要素である.
完全な開示が参加者に提供されるのは,通常は研究開始前であるが,その後に公聴会や書面での伝達というかたちで,さらなる開示が必要となることが多い.
たとえば,データの収集過程で起こる問題を明らかにする必要があるだろう.
参加者が,研究の側面を再度説明してほしいと考えることもある.
また,研究者のなかには,情報を分析したのちに,研究結果の概要を参加者に送ることを申しでる人もいる.
質的研究では,同意の過程で,研究者と参加者が継続的に交渉を進める必要があろう.
尊重の原則に関する問題
研究者の大半は,参加者の自己決定権と完全な開示の権利を,理論上では保証するはずだが,実際にこれらの基準に従うのがむずかしいこともある.
一例をあげると,個人が,研究参加にともなうリスクや利益について,十分な説明に基づく判断ができない場合である.
たとえば,子どもから,真のインフォームド・コンセントを得るのは不可能だろう.
もう1つの問題は,完全な開示は,次の2種類の偏りを生む場合があるということである.
@対象者が不正確な情報を提供することによる偏り,
A代表的な標本が募集されていないことによる偏り,である.
われわれが,高校生の薬物乱用と学校を常習的に欠席することとの関係を調査していると仮定してみよう.
常習的欠席率の高い学生グループが,出席率のよい学生に比べて,薬物乱用者である傾向が強い,という仮説を立てる.
われわれが参加しそうな学生に話をもちかけ,研究目的を十分に説明すれば,参加を拒否する学生もでるだろうし,参加しないという選択者のほうが多い場合もある.
つまり,薬物乱用者である学生はこのグループこそ,研究の主要な対象グループであるが,そのような研究への任意の参加が少ないと予想される.
さらに,研究設問を知れば,参加に応じた学生も,率直な応答をしないかもしれない.
そうした状況では,完全な開示によって研究を損なう可能性がある.
このような状況で研究者がときおり使う方法は,秘密(隠れた)情報収集(covert data collection),または事実の不告知(concealment)であり,参加者に知らせずに,したがって同意を得ずに,情報収集を行う.
この方法は,たとえば,研究者が日常的な環境で,人々の行動を観察したい場合や,研究を公然と進めることが,関心ある行動そのものに変化をもたらすおそれがある場合にもちいられるだろう.
研究者は,隠れた方法で情報を得ることを選ぶかもしれない.
たとえば,マジックミラーで観察したり,装置を隠して録画したり,他の活動に従事しているように装って観察するなどである.
別の例としては,研究者が現存の診療記録を使用し,入院患者が知らないうちに,研究に参加させるものがある.
一般に,秘密情報収集は,リスクがごくわずかで,参加者のプライバシーの権利が侵害されず,研究者が,データ収集ののちに研究の性質について参加者に報告するよう計画している場合は,容認されるかもしれない.
研究が,人々の行動の感受性の高い側面,たとえば麻薬使用,性的行為,または違法行為などに焦点をあてているときは,秘密の情報収集は倫理的にとうてい容認できない.
さらに論議をよぶ方法は,欺瞞である.
欺瞞(deception)は,意識的に研究についての情報提供を控えたり,偽りの情報を研究参加者に提供することなどである.
たとえば,高校生の麻薬使用を調査しているときに,学生の健康習慣の調査だと説明するような場合である.
これは,穏やかなかたちの虚報である.
欺瞞は,参加にともなう個人的損失や利益について,参加者が真の情報に基づいて判断する権利を妨害するため,倫理的に問題がある.
いかなる場合も,欺瞞は正当化されないという主張もある.
しかし,研究が対象者に与えるリスクがきわめて小さく,専門性と社会に利益が期待できるなら,研究結果の妥当性を高めるために,欺瞞が正当化されるという声もある.
ANAガイドラインでは,欺瞞と事実の不告知に関して,以下のような助言をしている.
研究のタイプによって,研究における事実の不告知や欺瞞には論議があることを,研究者は理解している.
研究における事実の不告知や欺瞞は道徳的に決して正当化できない,とする研究者もいる.
事実の不告知や欺瞞を行う場合,ある規準を満たしていなくてはならないことを,研究者はもっと理解しなくてはならない.
それは,以下のような規準である.
@その研究は,事実の不告知や欺瞞が道徳的に正当化されるほど,研究参加者にとってのリスクが小さく,公共の利益の進展にとってきわめて大きな意義がなくてはならない…,
A事実の不告知や欺瞞が容認できるかどうかは,研究参加者にとってのリスクの程度による…,
B事実の不告知や欺瞞は,研究結果の妥当性を保証する方法がほかにない場合の最後の手段である….
Cいかなる事実の不告知も欺瞞も,研究者はできるだけ早く参加者に知らせ,その利用の論理的根拠を説明する道徳的責任を負う〔Silva, 1995, p. 10, Section4.2〕,
尊重の原則に関するもう1つの論点は,インターネットによる人々からのデータ収集に関連しており,この新しい電子コミュニケーション時代に現れたものである.
たとえば,研究者のなかには,チャットやリストサーブにあるメッセージの内容を分析している者もいる.
問題は,こうしたメッセージを書いた人の許可やインフォームド・コンセントなしに,データとして使ってもいいのか,ということである.
電子的に投稿されたものはすべて,公共の場に発表されているのだから,研究目的に関する同意なしに利用できる,と考える研究者もいる.
しかし,通常と同等の倫理基準がサイバースペースでも適用されるべきであり,電子情報をあつかう研究者は「仮想の」コミュニティの参加者である個人の権利を慎重に守るべきだ,と感じている研究者もいる.
シュラム〔Schrum, 1995〕は,こうした研究者が利用するための倫理ガイドラインを開発した.
一例として,電子データを収集する前に,研究者はチャットのような電子コミュニティに自分が入ることについて,リスト管理者と話しあうことをすすめている.
シクススミスとマレイ〔Sixsmith Murray, 2001〕は,たとえリスト管理者から同意を得た場合でも,リストサーブやチャット参加者すべてから同意を得たことにはならない,と研究者に注意を促している.
オンライングループのメンバーに,サイトに研究者が存在していることを定期的に再認させなくてはならない.
人間の尊厳の尊重は、倫理的な原則としてさまざまな分野で重要な位置を占めています。特に、医療や研究においては、その重要性が強調されており、倫理ガイドラインにも明確に規定されています。例えば、1979年に発表された「ベルモンドレポート」では、人間の尊厳の尊重が第2倫理原則として示され、これは現代の倫理的枠組みの中で非常に重要な役割を果たしています。この原則には、自己決定権と完全な情報開示の権利が含まれており、研究や医療行為において、対象者や患者が自分自身の意思で決定を下せることが保障されるべきだとされています。自己決定権とは、対象者が自分の行動や意思決定をコントロールできることを意味し、これは個人が他者からの影響を受けずに自由に行動できるという考え方に基づいています。この権利は、研究や医療の分野では特に重要であり、対象者が自らの意思で参加を決定する権利を持つことを示しています。この際、対象者がいかなる形であれ、強制や圧力を受けることがあってはならず、研究や治療から生じる可能性のあるリスクについても十分な説明がなされる必要があります。ANAガイドラインでは、自己決定権が原則1および3に含まれており、これは研究参加者が自律的な行為者として尊重されるべきであることを強調しています。さらに、自己決定権には、質問をする権利、情報の提供を拒否する権利、追加の説明を求める権利、さらには参加を途中で打ち切る権利も含まれています。これらの権利は、参加者が自らの意思に反する形で研究や治療に参加することを防ぐための重要な手段です。また、自己決定権は、いかなる形の強制も排除するべきであり、強制とは、参加者が研究に参加しないことによって何らかの不利益を被ると感じるような明示的または暗示的な圧力を指します。例えば、過剰な報酬を提示することで参加を促す行為も、強制の一種とみなされる場合があります。研究者が参加率を高めるために報酬を提供することは、特に参加者の募集が難しい研究や、時間がかかり退屈な研究では効果的な手段となります。しかし、その報酬が過剰である場合、参加者が報酬を得るために自由な意思を曲げて参加する可能性があるため、倫理的に問題視されることがあります。報酬の金額は、研究によって異なりますが、多くの場合、10ドルから25ドル程度が相場となっています。連邦政府などの研究助成機関も、無条件に報酬を支払うことはなく、費用弁済として交通費や保育費、昼食代などが認められることが一般的です。自己決定権と並んで重要なのが、完全な情報開示の権利です。この権利は、人間の尊厳の尊重の一部であり、研究や治療の内容、リスク、利益について十分な情報が提供されることで成り立っています。完全な情報開示とは、研究者や医療従事者が、対象者に対して研究の目的や内容、リスクと利益、さらに参加を拒否する権利について明確に説明することを指します。この情報は、通常、研究や治療の開始前に提供されますが、研究の進行中に新たな情報が得られた場合、追加の説明が求められることがあります。例えば、研究データの収集過程で予期せぬ問題が発生した場合、参加者に対してその旨を説明する必要があるでしょう。また、参加者自身が追加の説明を求める場合もあり、その際には、研究者や医療従事者が誠実に対応することが求められます。研究者の中には、研究結果を分析した後、参加者に対して結果の概要を提供することを申し出ることもあります。特に質的研究では、研究者と参加者が継続的に交渉を行い、情報のやり取りが行われることが一般的です。これにより、参加者は常に自分が何に参加しているのかを把握し、その上で意思決定を行うことができます。完全な情報開示と自己決定権は、インフォームド・コンセントの基礎を成す2つの重要な要素であり、これらが保証されて初めて、参加者は自らの意思に基づいて適切な判断を下すことができるのです。しかし、現実の研究や医療の場では、これらの原則に従うことが難しい場合もあります。例えば、参加者がリスクや利益を理解できない場合や、完全な情報開示が研究の進行に悪影響を及ぼす場合などが挙げられます。特に、未成年者や知的障害を持つ人々に対しては、真のインフォームド・コンセントを得ることが困難な場合があり、そのような場合には、保護者や代理人の同意が求められることがあります。さらに、完全な情報開示は、場合によっては研究の偏りを生む可能性があります。具体的には、@対象者が不正確な情報を提供することによる偏り、A代表的な標本が募集されないことによる偏りが生じることがあります。例えば、薬物乱用と学校の欠席率の関係を調査する研究を行うと仮定します。この場合、薬物を乱用している学生が、自分がそのような行為をしていることを明らかにしたくないために、研究への参加を拒否する可能性があります。これにより、研究の対象となるべき学生が集まらず、結果として研究が偏ったものになる可能性があります。このような場合、研究者は隠れた情報収集や欺瞞を用いることがあります。隠れた情報収集とは、参加者に知らせずに情報を収集する方法であり、例えば、日常的な行動を観察したり、マジックミラーを使って観察するなどの手法が含まれます。これにより、参加者が自分が観察されていることを知らない状態で、自然な行動を取ることが期待されます。しかし、このような方法は倫理的に問題がある場合もあり、特に感受性の高い研究テーマ(例:麻薬使用や性的行為)においては、参加者のプライバシーや権利が侵害されるリスクが高まります。したがって、研究者は慎重に判断を下す必要があります。欺瞞もまた、倫理的に問題のある手法の一つです。欺瞞とは、意図的に参加者に対して正確な情報を提供しないことを指し、場合によっては参加者に虚偽の情報を伝えることも含まれます。例えば、高校生の薬物使用を調査する際に、健康習慣の調査だと偽って説明することが挙げられます。欺瞞は、参加者が自らの意思で正確な判断を下すことを妨げるため、倫理的に問題視されます。一部の研究者は、いかなる場合でも欺瞞は正当化されないと主張していますが、他方で、研究によるリスクが非常に小さく、社会的な利益が大きい場合には、欺瞞が正当化されることがあるとも考えられています。ANAガイドラインでは、欺瞞や隠れた情報収集に関する助言が示されており、研究者はこれらの手法を用いる際に特定の基準を満たす必要があるとされています。
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