統計学における先物取引|【社会経済統計学・統計解析】
統計学における先物取引
先物取引とは、農作物などの価格が変動する商品について、
いま決めた価格で、将来の時点で取引することを約束する
という取引の方法です。
この方法が、リスクの低下(リスクヘッジ)に使われています。
先物取引では、たとえば
売り手Aが買い手Bに、一ヶ月後にリンゴを100円で売る
という約束を交わします。
一ヶ月後にその約束を実行するとき、リンゴのその時点での価格(現物価格)が80円に下がっていたら、売り手Aは現物市場でリンゴを80円で仕入れて100円で売るので、20円の得となります。
逆に買い手Bは、Aから100円で買ったリンゴを現物市場で売っても80円にしかなりませんから、20円の損となります。
逆に、リンゴのその時点の価格が120円に上がっていたら、Aは120円で仕入れるのに100円でしか売れませんから、20円の損となります。
逆にBは、100円で買ったものを現物市場で売れば120円手に入りますから20円の得となります(実際には、現物市場でリンゴを買う価格と売る価格とは違いますから、もう少し複雑です)。
ということは、リンゴは現物市場⇒A⇒B⇒現物市場 と渡っていくだけで、Aの手にもBの手にも残りません。
したがってこの例は、先物取引では、現物価格が80円に下がっていたらBがAに20円払えばよいし、現物価格が120円に上がっていたらAがBに20円払えばよく、実際に商品をやりとりする必要はない、ということを示しています。
これを差金決済といいます。
これだけだと、先物取引は、一ヶ月後に価格が上がるか下がるかに賭けるギャンブルのようなもの、ということになってしまいます。
しかし、これを現物の取引と組み合わせると、リスクヘッジができます。
Aがいま100円でリンゴを買って、届くのが一ヶ月後だとします。一ヶ月後の現物価格は、いまの時点ではわかりません。
このとき、Aがいまリンゴを買うという現物取引と、Aが一ヶ月後にリンゴを100円で売ることをいま約束する、という逆方向の先物取引を同時に行います。
すると、一ヶ月後に現物価格が80円に下がっていた場合、Aは80円で買えるはずのリンゴを100円で買ってしまったので20円の損ですが、一方前述のように、Aは先物取引で20円の得をしますので、損得が相殺されます。
逆に一ヶ月後にに価格が120円に上がっていた場合、Aは120円で買わなければいけないところを100円で買えたので、20円の得をしますが、一方で先物取引では、前述のようにAは20円の損となり、やはり損得が相殺されます。
つまり、一ヶ月後にリンゴが80円なのか120円なのかという心配をする必要はなく、一ヶ月後の価格も100円であるというつもりで計画をたてればよいことになります。
農作物や天然資源など、価格が変化する商品の貿易では、このような方法がとられています。
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