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量的研究の例

マクドナルド，フリーランド，トーマス，ムーア〔McDonald, Freeland, Thomas, & Moore, 2001〕は，手術を受ける高齢者を対象に，痛みを緩和するための手術前の疼痛管理介入の効果を測定する研究を行った．

その報告は『Research in Nursing ＆Health』誌に掲載された．

マクドナルドは以前にも疼痛と疼痛管理というトピックで研究を行っているが,この研究では同僚たちと，疼痛管理とペイン・コミュニケーション・スキル(pain communication skills)を教えるという手術前介入を開発した．

その内容はとくに手術を受ける高齢者にあてまるものである.

6は5歳以上の40人の高齢者がこの研究に参加した．

このうち無作為に選ばれた半数が，特別な介入を受けることとされ，残りの半数は通常の手術前ケアを受けた．両グループともに，手術

当日の夜，翌日，翌々日に術後疼痛が計測された．その結果は研究者の以下の予測を支持した．

�@両集団ともに，時間の経過とともに疼痛はやわらぐ，

�A特別な介入を受けた患者の疼痛は時間の経過とともに，より大きく減少する．

介入の効果が疼痛管理についての教授によるのか，ペイン・コミュニケーション・スキルの教授によるのかを判断するために，さらに研究を進める必要がある，と研究者は指摘している(事実，マクドナルドはこうした研究を行っているところである，と報告している)．

また，この研究は単一の場での，特定のタイプの手術を受ける高齢者を対象に行われたものなので，研究結果は他の場や文脈で確認されなくてはならない，とも注記されている．

とはいえ，この研究は，高齢外科患者の疼痛反応を看護介入によって緩和できる，というエビデンスを提供している．

この証拠はいくつかの点で優れている．

この研究がきわめて厳格に行われた，という点がもっとも重要である．

介入そのものはコミュニケーション適応の公式理論に基づいている．

この理論は，自分の必要にあわせて人はどうコミュニケーションを調整するかということをあつかっている．

研究者は，比較する２つのグループの背景や医学的特質が同質であり，それゆえグループ間の疼痛反応の違いは，偶発的な因子からではなく介入による，という点を保証することに注意をはらった．

測定の偏りを避けるために，疼痛反応を測定する研究者チームは，高齢者が介入を受けたグループかどうかを知らされていなかった．

この研究を行った研究者チームはしっかりした疼痛研究プログラムを開発し，その研究は疼痛反応と適切な看護介入の理解をさらに深めている．

したがって，この研究結果はより説得力のあるものとなっている．

質的研究の例

チークとバランタイン〔Cheek & Ballantyne, 2001〕は，オーストラリアで，救急病院から退院した家族のために高齢者ケア施設を探して選ぶ過程を記述し，その過程が個人やその家族にもたらす影響を探索する研究を行った．

ケア施設の12人の居住者と20人の身元引受人（居住者に責任をもつ主な関係者）がこの研究に参加した．

高齢者ケア施設で居住者に，そして家庭でその家族に徹底的な対面による面接を行った．

ケア施設を探し，選んだ過程についての自らの体験と，その過程が彼らの健康状態にどう影響を与えたかを話すよう全員に依頼した．

面接は，テープ録音し,書き起こした．面接の逐語録を分析した結果,５つのテーマが現れた．

テーマの１つは，「組織を相手にする一迷路を通り抜ける」というようにラペルづけされた．組織を相手にする，とは戦闘地域の真ん中にいる，という感覚であった．

「戦闘」という感覚は，混乱，コントロールの欠如，そして組織の情けにすがっているという感覚と関係があった．

個人という立場で複数の高齢者ケア施設と交渉しなくてはならないというストレスのために，組織と戦っている，という感覚が生じる．２つ目の大きなテーマは「緊急性一彼らを転居させ，施設に入れる」とラペルづけされた．身元引受人は，救急病院から出された家族のために適切な施設を見つける緊急性を感じていた．

身元引受人は，利用できることになった施設への入所や断りを即座に決定しなくてはならないことに，負担を感じていた．

この完璧で丹念な研究によって，高齢の家族にあった長期ケア施設を選ぶ過程での体験を，直接体験した視点で把握できる．

この研究が実践にもたらした主要な意味の１つは，身元引受人と居住者が費やす努力や時間を効率的にするには，施設を探し選ぶ過程を見直す必要があるということである．

さらに，救急の場と入居予定の高齢者ケア施設との意思の疎通をよりよくすることが，罪悪感を抱くこの体験のストレスを減らす重要な役割を果たすことも，この研究は示している．

研究者が研究の厳密性を確保する方策をとっているという事実によって，研究の臨床への応用は強化されている．

たとえば，これらの面接の逐語録を少なくとも２人の研究メンバーが読み，１人ひとりが，それぞれの而接からテーマを見いだした．

そして統一の見解に達するまで，面接から導かれたすべてのテーマを比較し検討する．さらに，データについて競合する他の説明と，テーマ上の結論を導いたエビデンスとを比較検討するというステップもとった．

・看護研究は，ナースにとって重要な論点に関する知識を開発する系統的探究である.

・ナースはさまざまな場で，意思決定やクライエントとの相互作用に研究結果を生かすような，エビデンスに基づく実践を行うようになった.

・看護研究の知識はすべてのナース，研究の消費者（研究を読み評価する）も研究の生産者（研究をデザインし行う）も両方とも，その専門的実践を高める.

・看護研究は，フローレンス・ナイチングールによって始められ，ゆっくりと発展し, 1950年代に急速に加速された. 1970年代以降，看護研究の中心は臨床実践となった.

･ National Institute of Nursing Research (NINR)が1993年にU.S. National Institutes of Healthに設立され，米国において看護研究の確固たる地位が認められる.

・将来における看護研究の中心はおそらく成果研究,研究運用プロジェクト，研究の反復，多点研究，広範な普及活動などとなるだろう.

・学問的研究は，看護実践のエビデンスとなる源泉として，伝統，権威者の発言，個人的体験,試行錯誤，直観，論理的推理などの源泉とはかなり異なる．厳密な研究こそが，臨床上の意思決定の基礎として，エビデンスのヒエラルキーの最高位に位世する.

・看護における学問的探究は，２つの大きなパラダイム，すなわち現実の複雑さについての前提の根底をなす世界観である，実証主義パラダイムと自然主義パラダイムで行う．

・実証主義パラダイムでは,客観的実在があるとし，自然現象は規則性と秩序をもつ，と仮定する．関連する，決定論という前提は，現象は先行する原因の結果であり，偶発的なものではない，という信念である.

・自然主義パラダイムは，現実は固定した存在ではなく，人間の心が構築したものであると考え，したがって「真実」は現実の複合的構築物からなる.

・実証主義パラダイムは，量的研究一数的情報の収集と分析に関連している．量的研究は，ふつう系統的でコントロールされた過程である伝統的な「科学的方法」の範囲内で行う．量的研究は経験的エビデンス（人の感覚を通じて収集されたエビデンス）を研究結果の基礎におき，単一の場や状況を超えて，その結果の一般化可能性を追求する.

・自然主義パラダイムの研究者は，人間体験をあるがままに理解することを強調し，フィールドでは融通性のある手順を展開しながら，主観的で語られた材料を集め分析する．したがって，このパラダイムは質的研究と関連している.

・基礎研究は，知識のための情報の基盤を広げることをめざす．応用研究は，差し迫った問題に対する解決方法を発見することに焦点をおく．

・看護研究における研究目的には，アイデンティフィケーション，記述，探索，説明，予測，コントロールがある．

マクドナルド、フリーランド、トーマス、ムーア（2001年）は、手術を受ける高齢者を対象に、手術前の疼痛管理介入の効果を測定する研究を実施しました。この研究は『Research in Nursing & Health』誌に掲載され、マクドナルドらが開発した疼痛管理とペイン・コミュニケーションスキルの指導という手術前介入が高齢者の疼痛に与える影響を探りました。特に、この研究の対象は65歳以上の高齢者で、合計40名が参加しました。研究に参加した高齢者は、無作為に選ばれた半数が特別な介入を受け、残りの半数は通常の手術前ケアを受けることとされました。特別な介入には、疼痛管理に関する知識と、ペイン・コミュニケーションスキルの向上を目的とした指導が含まれており、この介入が手術後の疼痛緩和にどの程度寄与するかが検討されました。手術当日の夜、翌日、そしてその翌日に術後の疼痛が両グループにおいて測定され、研究者たちは次の2つの予測を立てていました。�@両グループともに、時間の経過とともに疼痛が和らぐ。�A特別な介入を受けた患者は、通常のケアを受けた患者に比べて、時間の経過とともに疼痛がより大きく減少するだろうというものです。実際に、研究の結果はこの予測を支持するものであり、特別な介入を受けた患者の疼痛は、通常のケアを受けた患者に比べて、より顕著に減少することが確認されました。これは、疼痛管理とペイン・コミュニケーションスキルの指導が、手術後の疼痛に対する患者の認識や反応に影響を与える可能性が高いことを示唆しています。ただし、研究者は、介入の効果が疼痛管理そのものによるものなのか、ペイン・コミュニケーションスキルの指導によるものなのかを判断するためには、さらに研究を進める必要があると指摘しています。事実、マクドナルドらはその後もこの分野の研究を継続しており、疼痛管理に関する知見を深めるためのさらなる調査が行われていることが報告されています。また、この研究は単一の病院で、特定のタイプの手術を受ける高齢者を対象に行われたものであるため、研究結果が他の病院や手術の種類に対しても同様に適用できるかどうかは、別の研究によって確認される必要があるとも述べられています。このような制約があるにもかかわらず、この研究は高齢者の外科患者における疼痛反応を看護介入によって緩和できるという重要なエビデンスを提供しています。この証拠が優れている点は、何よりも研究が非常に厳格に行われたことです。研究における介入そのものは、コミュニケーション適応の公式理論に基づいており、この理論は人々が自分の必要に応じてどのようにコミュニケーションを調整するかを扱っています。研究者たちは、特別な介入を受けたグループと通常のケアを受けたグループの背景や医学的特質が同質であることに細心の注意を払い、そのため、グループ間での疼痛反応の違いが偶然の要因ではなく、介入によるものであることを保証しました。さらに、疼痛反応を測定する研究チームは、バイアスを避けるために、どの高齢者が特別な介入を受けたかを知らされていませんでした。このような配慮により、研究結果の信頼性がさらに高められています。また、マクドナルドらは、疼痛研究におけるしっかりとしたプログラムを開発しており、この研究は疼痛反応と看護介入の理解を深める一助となっています。したがって、この研究結果は高齢者の手術後の疼痛管理に関して非常に説得力のあるものであり、臨床実践への応用可能性が高いとされています。加えて、この研究は高齢者に特化したものであり、看護師が高齢患者に対してより効果的な疼痛管理を行うための具体的な方法を提供しています。看護研究においては、こうした介入の有効性を確認するために厳格な方法論が求められますが、この研究はその基準を満たしており、エビデンスに基づく実践を支持するものとなっています。このように、看護研究の成果は、看護師が臨床現場で意思決定を行う際の重要な指針となり、患者ケアの質を向上させる役割を果たしています。また、この研究は、疼痛管理やコミュニケーションスキルの指導が手術前の介入として有効であることを示す初期のエビデンスとなっており、今後の研究でさらに詳細な検証が行われることが期待されています。マクドナルドらの研究は、看護師が患者の疼痛管理において果たすべき役割を明確にし、エビデンスに基づいた看護実践の重要性を強調しています。同時に、この研究は看護研究における量的研究の一例としても重要であり、数的なデータを基にした分析を通じて、看護介入の有効性を客観的に示すものです。このような量的研究は、看護師が日々の実践で患者のケアを改善するための具体的な方法を提供し、その結果として患者のQOL（生活の質）の向上にも寄与しています。この研究の結果は、高齢者の手術前ケアにおける新たな標準を確立するための基盤となる可能性があり、今後の臨床実践においてますます重要な役割を果たすことでしょう。また、この研究の意義は、単に疼痛管理にとどまらず、患者とのコミュニケーションの質を向上させることによって、全体的なケアの質を向上させることにもつながる点にあります。看護師は、患者が自分の痛みを効果的に伝えるためのスキルを向上させることで、より適切なケアを提供できるようになります。したがって、この研究は疼痛管理とコミュニケーションスキルという2つの側面から、看護介入の新たな可能性を示しています。さらに、この研究が示すように、看護師が提供する介入は、患者の身体的な痛みだけでなく、心理的な面にも影響を与える可能性があります。疼痛は身体的な不快感として現れるだけでなく、患者の感情や精神的な状態にも影響を及ぼすため、看護師が適切なサポートを提供することが重要です。この点で、マクドナルドらの研究は、看護師が患者の疼痛に対してどのように介入すべきかを示す貴重な指針となっています。