質的データ活用で精度UP!新測定用具開発の最前線【ChatGPT統計解析】
研究や臨床で新しい測定用具を開発する際、質的データが活用されることがある。研究者は、臨床体験や先行研究を基に測定項目を作成するが、全ての構成概念や次元性を網羅するには限界があるため、個人的な偏りが生じることもある。そのため、多くの看護研究者が量的測定用具の項目作成に質的探究を取り入れている。例として、ベックとゲーブルは産後うつ病検定尺度(PDSS)を開発し、産後うつ病経験者への徹底的な面接から項目を構成した。このような質的探究は、特定の集団や状況における量的測定用具の問題特定にも寄与している。
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測定用具の開発
研究や臨床目的で,正式な量的測定用具を開発し検証するために,質的データを収集することがある.
新しい測定手段の必要性に気づいたとき研究者は,正式な測定用具への問いを,臨床体験理論,先行研究から導出することもある.
しかし,構成概念が新しい場合,こうした方法では,その構成概念の完全な複合性と次元性をとらえるには不十分かもしれない.
研究者の経験や知識の基盤がいかに豊かであろうと,この基盤は個人的であり,研究者の価値観や世界観によって偏っている.
よって,数多くの看護研究者たちが,厳密な量的評価にさらされる量的測定用具の問いを作成する基盤として,質的探究から得られたデータをもちいはじめた。
測定用具の例
ベックとゲーブル〔Beck & Gable, 2000〕は,産後うつ病検定尺度(Postpartum Depression Screening Scale: PDSS)を開発した.
これは,この気分障害について,新しく母親になった女性を検査する量的測定用具である.
尺度の項目は,産後うつ病を体験した母親たちとの徹底的な面接に基づいており.これは,クラウンデッド・セオリーと2つの現象学的研究方法で行ったものであった.
以下は,母親たちの言葉をもとに. PDSSの項目がどのように開発されたかという例である.
「私は,自分の考えにとても取りつかれてしまった.考えは休むことがなく,私はそれをコントロールできなかった」という言葉は,「心に絶え間なく入ってくる考えを,私はコントロールできなかった」という項目となった.
研究の測定用具を精錬したり,既存の測定用具の妥当性を査定するために,質的探究をすることもある.
こうした探究は,ある母集団に,またはある状況で,量的測定用具を利用する際の問題を特定するうえで,重要な役割を果たすことができる.
研究や臨床で新しい測定用具を開発する際、質的データを活用することは非常に重要な役割を果たしており、その意義は日々高まっています。測定用具とは、研究や診断において特定の現象や状態を客観的かつ一貫して測定するために用いられる道具であり、信頼性と妥当性が求められます。新しい測定手段の必要性が生じると、研究者は臨床体験や先行研究から得た知見に基づいて測定用具の問いを構成することが一般的ですが、これはあくまで既存の概念や理論に依拠する手法であり、すべてのケースに対応できるわけではありません。特に新しい構成概念が登場した場合、こうした伝統的な方法ではその構成概念の完全な複合性や次元性をとらえるには不十分となることが多いのです。たとえば、ある疾患や心理状態が新たに注目され、その特有の症状や影響を測定しようとする際に、従来の理論や先行研究からの視点だけではその現象の全貌をとらえることが難しい場合があります。研究者の豊富な経験や専門知識も確かに有益ですが、これらは個人的な価値観や世界観に左右されることが多く、無意識のうちに偏りが生じる可能性があります。こうした偏りを最小限に抑えるためにも、質的データを収集して、そのデータに基づいた測定用具の項目作成を行うことが望まれます。質的データは、インタビューや観察などの手法を通じて対象者の体験や感情、意識を直接的に収集するものであり、研究者の主観に左右されにくい、現象の「生のデータ」として重視されます。そのため、数多くの看護研究者や臨床心理士などが、厳密な量的評価にさらされる量的測定用具の基盤として質的探究のデータを用いるようになってきています。質的探究に基づくデータは、従来の量的データとは異なり、対象者の深層心理やその場の状況を含むため、より包括的な理解を提供します。このような手法によって開発された測定用具は、使用する母集団に適した内容や項目の選定が可能となり、また研究の信頼性を高めるために不可欠なものとされています。たとえば、ベックとゲーブル(Beck & Gable, 2000)は産後うつ病検定尺度(Postpartum Depression Screening Scale: PDSS)を開発する過程で質的探究の手法を採用しました。このPDSSは、新しく母親になった女性が経験する産後うつ病という気分障害に特化した量的測定用具であり、単に数値で判断するのではなく、対象者の体験に基づく詳細な質問項目が設けられています。この尺度の項目作成には、産後うつ病を経験した母親たちへの徹底的な面接が行われ、その結果を基にした質的データを分析することで、母親たちが産後うつ病の中で体験する感情や思考が詳細に反映されています。PDSSの開発過程ではクラウンデッド・セオリーと呼ばれる理論構築法と、現象学的研究方法が採用され、対象者の視点から見た産後うつ病の実態を正確に把握し、それを量的に評価するための項目に変換しました。たとえば、ある母親が「私は、自分の考えにとても取りつかれてしまった。考えは休むことがなく、私はそれをコントロールできなかった」という言葉を残した場合、この表現が直接、測定用具の項目として反映されることになり、最終的に「心に絶え間なく入ってくる考えを、私はコントロールできなかった」という具体的な質問項目が生まれました。こうしたプロセスによって、対象者の主観的な体験が客観的な測定用具の一部として取り入れられ、産後うつ病を正確に捉えるための一助となっています。このように、質的データをもとにした項目作成は、対象者の心理や状況を忠実に反映するため、量的データでは得られない洞察をもたらします。また、質的探究を通じて得られたデータは、測定用具の精錬や妥当性の査定にも活用されることが多いです。新しい構成概念や対象者の特性を反映した測定用具を精錬することで、より実際の状況に即した測定結果が得られるようになります。また、既存の測定用具を新たな母集団や異なる文化圏で使用する場合にも、質的探究が役立つことが知られています。質的データをもとに現地の価値観や文化的背景に合わせて項目を改良することで、対象者にとって理解しやすく、回答しやすい測定用具が提供されるようになります。例えば、異なる文化圏において同じ用具を使用する場合、項目の内容が文化的に適していない場合もあるため、こうした場合には質的探究によって対象地域や集団に適した用具へと改変するプロセスが求められます。このように質的データを用いた測定用具の精錬や妥当性の確認は、特定の母集団や状況において量的測定用具を用いる際の問題を特定するために重要な役割を果たしており、その重要性は看護学や臨床心理学、社会学など様々な分野でますます認識されています。
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