経済統計と経済学的記述|【社会経済統計学・統計解析】
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経済統計と経済学的記述
経済統計と経済学的記述
経済現象は、統計数字(データ)によって表現される場合が多い。
ある全国紙(A紙とする)の朝刊を見ると、国内経済では東証株式市場、東京外為市場、金融・債券先物市場、社債・国債市場、オプション市場、短期コール・レートなどの市場、さらには商品先物市場、石油などの商品市場、卸売市場など、多種多様なデータが掲載されている。
国外の指標としては、ロンドンやニューヨークの外国為替市場、各国公定歩合、アジア商品市場などがある。
A紙は経済面に力を注いでいることもあって、超短期ともいうべき「日次」統計も豊富である。
しかし、これらの情報を見ると、これらが金融と価格関係に集中していることに気づくであろう。
これらは日常的な経済活動の状況を反映しているとはいえ、経済の局面はこれにとどまらない。
新聞紙上を見ても、年末・年始頃の経済見通し(マクロ的指標が多い)、3月下旬頃には各地域の公示地価、6月には企業の決算数値、サミットの頃には貿易収支、景気変動期には景気動向指数、失業率、鉱工業生産指数など、さらに予算期には各分野別(社会保障、福祉や防衛関係費など)予算が紙上を賑わす。
また人口動態、消費者物価指数、有効求人倍率、世帯の消費支出額や貯蓄額、住宅着工数など、いろいろな統計データが登場する。
こうした統計データは、各々独自の作成目的と作成方法をもち、かついろいろな利用方法が考えられる。
これらの統計データは漫然と眺めるのではなく、経済学的な視点と統計の性質からそれらを整理することが大切である。
また、経済学は、通常、ミクロ経済学とマクロ経済学に区分される。
もとより両者は相互に関係しているものの、変数間の関係の分析方法や個別経済主体の扱いなどが異なるため、一般に両者を区別してカリキュラムが組まれる場合が多い。
日本の国民経済計算は、国連のガイドラインであるSNA(A System of National Accounts)に沿って推計されている。
SNAは大きく二つの用途をもつ。
すなわち、第一は各種の一次統計の整備のために用いるという用途であり、統計相互間の位置づけや概念的指針を与える。
第二は、SNAの数値そのものを利用して、各種計量モデルや政策を評価するという用途である。
後者の用途のためには、分析理論に見合ったデータが要求される。その理論面の大きな柱としてマクロ経済学が考えらえる。
次に、統計データの統計的な面に注目してみよう。
統計データにもいろいろな切り口がありうる。その作成過程に注目すると、大きく一次統計(基礎統計)と二次統計(加工統計)に大別できる。
一次統計のうち、調査統計はある分析(使用)目的のために企画・調査された統計であり、統計の基本となる。代表例は国勢調査であり、人口の把握は経済分析の基本的情報を与える。
さらに、国勢調査は実際的にも選挙区の定数是正に使用されているし、また各調査統計(特に家計対象の統計)の標本設計のベースとしても不可欠である。
他方、業務統計は業務上の記録を統計化するものであり、利用にあたっては、業務の性格を理解しておく必要がある。代表例は貿易関係の統計であり、多くの統計情報を提供している。
これに対して、二次統計は基礎統計に関してなんらかの加工が施されたものである。
加工方法、加工程度は統計によって異なるものの、比較的定式化された加工統計には二種類ある。
第一は消費者物価指数や鉱工業生産指数などの指数統計であり、第二は国民経済計算などの社会会計上の統計である。
二次統計は分析目的に合わせて加工されるとはいえ、加工方法が確立していないものもあるし、加工の程度にも差がある。
国民経済計算におけるGDEデフレータ(物価指数の一種、GDPデフレータとも呼ばれる)は、消費者物価指数などを加工して作成されるから、それだけで加工の程度が高い。
経済分析では一次統計だけで事足りることもあるし、二次統計を使用しなければならない場合もある。
その意味からすれば、主要な二次統計はまとまっていた方が便利である。またその方が、加工方法の共通性も理解しやすい。
一次統計を分野別に、二次統計は別途まとめて整理しておけば、興味のある対象(統計データ)に経済学的な知識を適用しながら、その現実の動きを把握することが可能となる。
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