経済統計と分析手法|【社会経済統計学・統計解析】
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経済統計と分析手法
経済統計と分析手法
経済統計は、理論(すなわち仮説)の検証に不可欠である。
実証経済学で用いられる方法は、まず理論(仮説)を立てる。
たとえば、いま「消費支出Cは所得Yの正の関数である」という仮説を実証したいとしよう。
これは消費関数といわれる分野の一つの仮説であり、仮説設定は経済学の役割である。
しかし、このような仮説の立て方では、実証ベースにのらない。
関数形などの指定がないからである。そこで、実証可能なように、次のように定式化したとしよう。
C=α+βY+u
Cは誤差項(攪乱項)uをもつため、確率モデルとなっている。
したがって、uを除いたモデルは経済理論から導かれる確定的モデルであり、理論的仮説が一次式であることを意味している。
理論モデルを一次式だと仮定しても、実証分析で用いられるのは確率モデルである。
なぜならば、消費支出Cに影響を与える要因は、所得Y以外にもいろいろ考えられるからである。
それらを一括して、確率的な誤差項uとして処理したのが確率モデルである。
次に、理論モデルが確定したら、それに対応する経済統計(すなわち観察データ)を選択しなければならない。
確率的誤差項の影響を少なくしようと思えば、仮説のためによく管理された実験データが望ましい。
しかし、費用その他の点から一般の分析者にはこの種の実験データは使用できない。
したがって、一次統計と二次統計が経済分析の中心となる。
モデルの統計的記述は、大きく二つに分かれる。
第一は、YとCのデータ動向を中心に分析する場合である。
この場合は確率的な要素を含まないので、こうしたやり方は記述統計と呼ばれる。
第二は確率的な要素を考慮する場合で、こうした方法は推測統計と呼ばれる(統計的推測を行う)。
当然、後者の推測統計の方が望ましいが、それには最小2乗法など統計学の知識が必要となる。
またモデルは単一方程式とは限らないから、他の方程式の影響を受けるときはさらに複雑化する。
これらは計量経済学(または上級の経済統計学)といわれる分野の議論となる。
こうした計量経済学的なチェックを経て、観察データにより当てはまる仮説が採択されることになる。
一般論を離れて、統計データの性質の具体例を示そう。
記述統計的には、CとYの関係になる。
消費行動は家計の行動であるから、一次統計としては家計関係の統計から数値がとられる。
そのために、一般には「家計調査年報」が用いられる。
他方、家計のデータは二次統計である「国民経済計算年報」からも得られる。
平均消費性向は消費支出を所得で割ったものであるから、所得のうちどれくらいが消費に向けられたかを示す指標である(なお、1から平均消費性向を差し引いたものは貯蓄率といわれる)。
またYとしては可処分所得、Cとしては耐久消費財を含む消費支出を用いている。
家計調査の勤労者世帯における平均消費性向は変動を伴いながら低下し、その後上昇している。
その結果、両統計における平均消費性向の差は拡大している。
両統計は家計の分析によく利用されるにもかかわらず、最も基本的な平均消費性向(または貯蓄率)についても、こうした大きな差があるのである。
その主たる原因は、両者には所得(可処分所得)や消費支出の範囲、家計(世帯)の対象範囲に差がある(家計調査は勤労者世帯の値で、最近、高齢化で増加している無職世帯を含んだ値ではない)からである。
しかし、それだけでは説明しきれない差でもある。むしろこれは両統計の性質の差であり、両者とも事実を反映しているのであるから、両者を統合するような仮説設定が望ましい。
こうした統計データの性質の説明を中心に、代表的な指標の動向の分析、分析事例などを通じて、経済統計学の基礎を理解することが大事である。
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