景気動向指数|【社会経済統計学・統計解析】
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景気動向指数
景気動向指数
景気動向を把握するためには,さまざまな経済指標が用いられる。
特に指数を用いた分析では,短期的な景気動向を把握することを目的としている。
なぜならば,たとえば,鉱工業生産指数は生産面,常用雇用指数は雇用面,消費者物価指数は価格面など,経済活動の各局面を端的な形で,その動向を示すからである。
むろん,短期指標には指数だけではなくて,大口電力使用額や商業販売額など,そのときの景気を反映する指標もある。
景気動向を把握するうえでの第一の問題は,経済活動の各局面を総合化したマクロ的な短期指標が作成できるかどうかということである。
マクロ統計の代表的な総合指標は国民経済計算(SNA)である。
しかし,SNAはその作成に時間がかかるので,短期的な動向把握には向かない。
したがって, SNAと同じような方法では短期的な景気動向指標は作成できない。
そこで,別の手法を開発する必要がある。
それには採用する統計データに依存するということもあり,試行錯誤が伴う。
したがって,作成された景気動向指標に関しては,後でSNAの動向と比較検討することが必要となろう。
第二の問題は,特に短期の景気動向に焦点を当てたとき,どの統計データ(一般に,時系列データが用いられるため,以下略して系列という)を採用するかということが重要なポイントになる。
月次データというだけで,使用可能な系列は制約を受ける。
むろん精度も確保しなければならないので,その制約はさらに強くなる。
さらに,景気動向に対して採用した系列が同じタイミングで反応するとは限らない。
その系列が景気に先行するのか,一致するのか,あるいは遅行するのかは,概念と同時に実際面でも十分に吟味する必要がある。
第三の問題は,どのように景気動向を表現するかという指数の作成技術上の問題がある。
景気動向指数は,デイフュージョン・インデックス(DI)とコンポジット・インデックス(CI)の二つの形で,これに対処している。
内閣府経済社会総合研究所が公表しているDIの採用系列とその変化の方向を示したデータによると、DIの目的は景気動向の局面の把握にあるので,生産,在庫,投資,労働,消費,企業経営,金融など,経済活動で重要かつ景気に敏感な系列が採用されている。
なお,採用系列については精度の維持ならびに向上を図るため,おおむね景気が一循環するごとに見直し,改訂を行っており,直近では2004年11月に第9次の改訂を実施している。
次にDIの作成方法について見てみよう。
まず,採用系列の各月の値(季節調整済)を3ヵ月前の値と比較して,増加(拡張)していれば「十」,変化していなければ(「保合い」であれば)「0」,減少(後退)していれば「−」を付ける。
そのうえで,先行,一致,遅行系列群ごとに,採用系列数に占める拡張系列数の割合(%)を求める。
ただし,保合い「0」の場合は0.5として計算している。
DIには二つの特徴がある。
第一は,拡張系列に焦点があることであり,第二は,各採用系列に同じウェイトがかかっていることである。
前者は景気判断に視点があり,増加ないし拡張の方向性を重視しているからである。
また,景気が良いか悪いかの判断は,50パーセントを一応の目安としている。
これは拡張系列の比重が高まれば,それは経済の各分野に景気拡大の方向が見られ,景気が良くなったと考えられるからである。
しかし,あくまでもDIは変化の方向だけであって,景気の強さ,スピードを示すものではない点に注意がいる。
さらに,景気動向の判断に当たっては,部門間の跛行性もあるので,「大半の部門に景気変動が波及している(したがってDIが100%あるいは0%に近い)ことを確認する」(『景気動向指数の利用の手引き』より。)ことが必要である。
これに対して,CIは景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定することを主な目的としている。
CIは個別指標の変化率を合成した指標であって,先行,一致,遅行の各系列の指数が公表されている。
CIでは,一致指数か上昇しているときが景気拡人局面,低下しているときが景気後退局面であり,また変化の大きさによって景気のテンポが表現される。
なお,月々のCIの動きには不規則な動きも含まれているので,後方3ヵ月移動平均などを求めてみるとよいであろう。
景気動向指数をもとに,景気の山,谷を定める景気堆凖日付が設定される。
内閣府経済社会総合研究所では,DIの一致指数の各採用系列から作られるヒストリカルDIに基づき,専門家の意見などを勘案して,景気基準日付を決定している。
なお,ヒストリカルDIは,最初に採用系列ごとに山と谷を設定し,次に谷から山にいたる期間はすべて「+」,また,山から谷にいたる期間はすべて「−」として,DIを算出したものである。
このように求めた一致指数の採用系列によるヒストリカルDIが,50パーセントのラインを下から上に切る直前の月が景気の谷,上から下に切る直前の月が景気の山に対応するとしている。
景気動向指数は,経済財政白書などさまざまなところで利用されている。
景気は経済活動全般の動きによって示される。
また,採用系列は,たとえば同じ雇用に関連するものであっても,景気に対する反応のタイミングに違いがある。
具体的に,新規求人数(除学卒)は先行系列,有効求人倍率(除学卒)は一致系列,常用雇用指数(製造業)及び完全失業率(逆サイクル)は遅行系列であり,単に各系列の時系列的な動向だけではなくて,景気全般との関係がわかる点が重要である。
これは,労働市場の分析にどの系列を選択すべきかを判断するときの参考になるであろう。
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