所得の種類と所得分配|【社会経済統計学・統計解析】
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所得の種類と所得分配
所得の種類と所得分配
労働需要(事業所)側からの所得の把握は、個人ベースでの賃金(給与)所得が中心となる。
労働共有(世帯)側から把握する所得は、家計調査のように世帯ベースが多く、収入(所得)についても一種類とは限らない。
世帯主の給与所得以外にも、事業や内職による収入、他の世帯員の収入等がある。
さらに、公的年金等の移転収入もある。
農家の場合も同様である。
農林水産省が実施している農業経営統計(指定統計)によれば、2003年における全国の販売農家1戸当たりの総所得の内訳は農業所得(14.3%)、農外所得(56.0%)、年金等(29.6%)である。
また、税務統計からも所得情報が得られる。
代表的な調査は国税庁が実施している民間給与実態統計調査(指定統計。報告書名は「税務統計からみた民間給与の実態」)である。
この調査の目的は、民間企業の年間給与実態を明らかにし、税務行政運営等の基礎資料とすることにある。
特徴としては、従業員1人の事業所から5000人以上の事業所まで幅広い対象を把握していることが挙げられる。
租税負担の検討等に目的があるとはいえ、事業所を対象としているので、統計調査の面から見ると、この統計は労働需要サイドの統計である。
労働需要サイドの統計は、家計所得の一部である給与所得が中心となる。
しかし、給与所得以外の所得も家計における各経済活動(消費、資産形成等)に大きな影響を与える。
したがって、家計の所得は世帯側からの調査が望ましい。
家計の収支バランスについては求められないものの、所得の種類や課税等が詳しく調べられている、世帯側からの統計に国民生活基礎調査(指定統計。厚生労働省が実施)がある。
全世帯、高齢者世帯および児童のいる世帯について、1993年から2002年までの1世帯当たりの平均所得金額の推移を見ると、全世帯の所得では2002年の総所得は589.3万円で、1993年を100とすると89.6と1割減少している。
これは、バブル崩壊後の景気低迷によるものだけではなくて、人口の高齢化が進み、全世帯平均に比べて所得が低い高齢者世帯の割合が増えてきていることも影響している。
特に所得分布(分配)は世帯の属性に大きく依存する。
それを全世帯の所得五分位階級における高齢者世帯と母子世帯の所得分布で見てみよう。母子世帯では、第1五分位に全体の58%が入っている。
また、高齢者世帯も第1五分位に全体の48%が入っており、これらの世帯ではやはり低所得層に分布する割合が高くなっている。
所得分配(分布)の状況や所得格差の変化は、今後我が国の家計動向を見るうえで大変重要である。
所得分配(分布)が集中している程度を数値で把握する方法として、これまで各種の不平等度尺度が利用されてきた。
その一つにジニ係数がある。
ジニ係数はローレンツ曲線との関係で示される
ジニ係数はローレンツ曲線との関係で示される数値である。
横軸に世帯の相対累積度数をとり、縦軸に低所得からの所得の相対累積度数をとると、曲線が得られる。
これをローレンツ曲線という。
すべての世帯が同一所得ならば、世帯で累積しても所得で累積しても同じであるから、ローレンツ曲線は45度線になる。この45度線を均等分布線という。
一方、所得が1世帯に集中しているときは、ローレンツ曲線を利用して、集中度(または不平等度)尺度として、ジニ係数が定義される。
このジニ係数を使って、わが国の所得格差の状況を見てみよう。
まず、総務省が5年ごとに実施している全国消費実態調査の結果を用い、OECDで採用されている国際的な枠組みに沿って、等価世帯人員で調整した可処分所得(等価可処分所得)を計算する。
等価可処分所得とは、世帯当たり所得が同水準であっても世帯人員によって1人当たりの効用水準が異なることを考慮して、世帯の年間可処分所得を等価世帯人員で調整したものである。
この等価可処分所得によりジニ係数を計算すると、1999年の総世帯では、0.273となっている。
年代階級別にみると、30歳未満が0.222、30-49歳が0.235、50-64歳が0.277、65歳以上が0.308と、年齢が高くなるほどジニ係数が高く、所得格差が大きいことがわかる。
したがって、人口の高齢化も全体の所得格差の拡大に影響しているものとみられる。
この等価可処分所得によるジニ係数は、国際的な基準に沿っていることから、諸外国の結果と容易に比較することができる。
その結果を見ると、各国の調査年はやや異なるが、我が国の所得格差は、スウェーデンやベルギーなどより大きいものの、アメリカやカナダより小さい。
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