生態学的(相関的)研究|【統計学・統計解析講義応用】
生態学的(相関的)研究
前に述べたように,生態学的研究は.個人レベルではなく集団レベルのデータを利用する。
例えば,ある研究では,冠助脈性心疾患(coronary heart disease.CHD)による死亡率と1人当たりのタバコの売上に関する米国の州の記述データを用いて,両者に有意な関連性があることを示した。
生態学的研究は,潜在的な危険因子と様々な疾患アウトカムとの関連性を探している間に,既に収集されている集団データを用いて.簡単に短時間で実施することができるため,有益である.
このような研究の主なデメリットは,個人データの利用ができないことと,多くの観察研究と同様に,危険因子を有する人が実際に疾忠を発症している人であるのかを知る方法がないことである.
これは生態学的錯誤(ecological fallacy)と呼ばれている.
さらに.生態学的研究では.他の変数による潜在的な交絡の評価が困難である.
例えば,特別な診断検査や予防的治療がより頻繁に実施されている集団は,ある疾患の発生率がより低いかもしれないが,その主な原因は,検査や治療によるものではない可能性がある.
そのようなケアをより頻繁にうける機会がある集団は,発生率がより低くなるような他の特徴を持っているかもしれない.
それらの限界はあるものの,生態学的研究は,その後さらなる疫学的デザインを用いて研究される関連性の発端となる評価として,価値のあるものである.
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