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保健医療のためのQOL測定値の重要性

比較臨床試験の多方面にわたる応用は，治療的な介入の有効性を判断するための基準を確立した．

これらの臨床試験は，その治療が健康を改善するのに有効であるかどうかの判定するために不可欠である．

しかし，コスト(費用)はどれくらいかかるか．それが資源を投資するのに最も有効な方法であるのか，患者個人や患者の家族，社会に対してこの治療を使用することの価値はあるのかについても評価しなければならない.

ＷＨＯは健康について，｢健康とは，単に疾患がないとか,病弱ではないということではなく，身体的にも，精神的にも．そして社会的にも，すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいう.｣と定義している．

これらの重要な決定においては.単に｢生命の量(長さ)｣だけではなく，｢生命の質｣を考える必要性について多くの議論があった．

慢性疾患や複合疾患，重症疾患に対する治療についての決定は，これが機能と健康関連QOLにどのように影響を及ぼすかに対して検討されなければならない．

現在その決定には，規制当局．製薬業界，立法者，患者個人による決定が含まれているが，これらの問題を解決するためには．それぞれに専用の尺度が必要となる．

そのための尺度は，患者によって価値付けられるものを測定しなくてはならないし，関連性，信頼性，妥当性，感度のあるデータを提供するものでなくてはならない.

この方法論の改善に，ＮＩＨはかなり尽力してきた(vmw.nihpromis.org).

健康関連QOL測定値の開発の方法論およびその応用については，未だ解決していない問題や難点が残っている.

以下に解決を必要とするいくつかの問題を示す．

健康関連QOL評価の多くは，複数の異なる領域を用いる．

これらは制限すべきか．定量化および評価の方法は，標準化すべきか．すべての領域を合計すべきか(できるか)，あるいは各々の領域を別々に解析すべきか．誰が評価すべきか一患者，介護者，医療専門家，家族，またはこのすべての人々か．健康関連QOL測定値はすべての試験に必要であるか．健康関連QOLは臨床試験の実施に組み込まれなければならないか．文化の利害は健康関連QOL評価にどのように影響するか．どのようにして，得られた情報を臨床実践，リスク，コスト，医療方針の評価の改善に反映させるか．

健康関連QOL測定値の使用は，過去10年の問により一般的になった．

すべての動向が．この傾向が続くことを示唆している.医療方針と同様に医療実践は，健康に関連する価値についての質問に解答するために集められたデータによって影響される．

臨床試験における健康関連QOLのさらなる適用に加えて，健康関連QOLの定量的測定は，臨床医と研究者に，患者の生活への疾患の総合的な影響を評価する際に助けとなる重要な情報を提供する.

定量的評価は，患者の日常活動における特異的疾患の相対的な影響を検討でき．患者の健康関連QOLへの特異的治療計画の影響を評価することができる.

例えば，転移がんにもかかわらず，緩和ケアによって健康関連QOLの個人的に望ましいレベルを維持する患者の能力(ability)は,臨床医に重要な情報を与えるであろう．

そのような患者と担当臨床医は．患者の生存期間を延長するために，次の２つの治療選択肢について検討する必要があるだろう．

すなわち，全体的なQOLに深刻な影響を及ぼすような治療選択肢と，生存延長には良いアウトカムを示さないが比較的良好な健康関連QOLを維持する治療選択肢である．

健康関連QOLは，医師のための臨床の意思決定を導き，患者の医学的意思決定の一助となるだろう．

保健医療において、QOL（生活の質）測定値の重要性は年々増しており、これは単なる治療効果の確認を超え、患者の生活全般における影響を評価するために不可欠な要素となっています。比較臨床試験の進展により、治療的な介入が健康改善に有効であるかどうかを客観的に判断するための基準が確立されました。これらの臨床試験は治療が健康を改善する効果があるかどうかを判断する上で重要ですが、その一方で治療に要するコストや資源配分の最適性、そして患者やその家族、社会に対しての価値も評価されるべき点として浮かび上がっています。治療の効果や意義を考えるにあたり、WHOの健康定義が参考になります。WHOは「健康とは、単に疾患がないとか病弱ではないということではなく、身体的にも精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること」としています。これは健康の定義において、単なる病気の有無だけでなく、個人の生活や社会的環境においてもバランスがとれていることが求められるとしています。こうした観点から、健康関連QOL（Quality of Life）の測定が重要視されるようになっており、生命の長さだけでなく「生命の質」を考慮する必要性について多くの議論が行われてきました。とりわけ慢性疾患や複合疾患、重症疾患の治療決定においては、治療が機能や健康関連QOLにどのような影響を及ぼすかが重要な検討項目となります。治療の効果がただ単に症状の軽減にとどまらず、患者のQOLをどう支えるか、または向上させるかが焦点となるのです。現在、このような医療判断には規制当局、製薬業界、立法者、そして患者個人がそれぞれの立場から関与しており、彼らが合理的かつ価値ある決定を下すためには、信頼できる尺度が必要とされています。この尺度は、患者が重視する生活の質や価値を測定し、かつその関連性、信頼性、妥当性、そして感度の高いデータを提供できるものでなければなりません。こうした方法論の改善には、米国国立衛生研究所（NIH）も多大な努力を注いできており、その成果の一例としてNIHが開発したPROMIS（Patient-Reported Outcomes Measurement Information System）が挙げられます。このシステムは患者自身の報告に基づいてQOLを定量的に測定するツールで、様々な疾患において健康関連QOLの正確な評価を可能としています。しかしながら、健康関連QOL測定の方法論とその応用には依然として未解決の課題や難点が多く残っています。例えば、健康関連QOL評価には複数の異なる領域が用いられることが多く、それぞれの領域の相対的な重要性や制限についての議論があります。測定すべき項目や尺度の標準化が求められる一方で、どの項目が患者にとって意味があるのか、またこれをどう評価するかについては明確な答えが出ていないのです。これに加え、健康関連QOL測定の際にはすべての領域を総合して合計すべきか、あるいは各領域を個別に解析すべきか、評価者は誰が適切か（患者本人、介護者、医療専門家、家族、またはその全て）といった問題もあります。さらに、健康関連QOL測定がすべての臨床試験に必要であるかどうか、そしてその結果をどのように臨床実践やリスク評価、コスト管理、医療方針の改善に反映させるべきかといった課題も存在しています。文化的要素も健康関連QOL評価に大きな影響を及ぼすことが指摘されており、同じ疾患であっても文化や社会的背景により患者が感じる価値や生活の質が異なるため、異なる国や文化圏での評価基準を統一することは難しいとされています。それにもかかわらず、過去10年にわたり、健康関連QOL測定値の利用は増加し続けており、医療方針や医療実践の中で健康関連の価値に関する質問に答えるために収集されたデータが大きな影響を及ぼしています。こうした健康関連QOLの定量的測定は、臨床医や研究者が患者の生活への疾患の総合的な影響を評価する上での重要な情報源となりつつあります。具体的には、患者の日常生活における特定の疾患が及ぼす影響を測定し、治療計画の効果がどの程度健康関連QOLに寄与するかを評価できるようになっています。例えば、転移性がん患者であっても、緩和ケアによって患者が自分にとって望ましい健康関連QOLを維持できる能力を持つ場合、臨床医にとってその情報は極めて有益であり、患者にとっても重要な判断材料となります。このような状況では、患者と担当する臨床医が共に生存期間の延長を目的とするか、それともQOLの維持を優先するかという選択を行う必要があり、全体的なQOLに大きな影響を及ぼす可能性のある治療方法と、延命効果は期待できないが比較的良好な健康関連QOLを維持する治療方法のどちらを選択するかが検討されることになります。したがって、健康関連QOLの評価は医師の臨床的意思決定を導き、また患者の医学的意思決定の一助となる重要な役割を担っています。患者が自らの価値観に基づき生活の質に配慮した治療選択を行うことで、治療の納得感や治療後の満足度が向上することも期待されます。このようにして、健康関連QOL測定は単なる生存期間の延長を目的とする従来の医療の在り方に新たな視点をもたらし、患者中心の医療を実現する上で不可欠なツールとなっています。