ベリフィケーションとバリデーション|品質保証・プロセス管理の概念【統計学・統計解析講義応用】
ベリフィケーションは結果の確認、バリデーションはプロセスの保証。品質保証・プロセス管理の概念として重要。再現性があるということが、バリデーションがベリフィケーションよりも大きな意味をもつ。バリデーションは継続的に行われる活動でなければならず、ベリフィケーションは必要な時に行えばよい
目次 ベリフィケーションとバリデーション|品質保証・プロセス管理の概念【統計学・統計解析講義応用】
ベリフィケーションとバリデーション
品質保証に関する概念として、Verification(ベリフィケーション)とValidation(バリデーション)というものがあります。
英和辞典を引くと、Verificationは「確認、照合、立証、検証、証明、検査」であり、Validationは「確認、批准、妥当性検証」というような記載があります。
工学領域では、考察の対象となる現実世界の問題を抽象化して概念モデルを作り、これを基に計算モデル(コード)を作成、コンピュータで実行して計算結果を得るとき、概念モデルと計算結果の差異を定量化する処理をベリフィケーション(Verification)、現実世界の問題と計算結果との差異を定量化する処理をバリデーション(Validation)と呼んでいます。
一見するとVerificationとValidationは同じ意味のように思えますが、Verificationはそれが正しい、あるいは正確であることを照合することであり、Validationはそれが正しいことを証明することです。
言い換えれば、ベリフィケーションはその結果だけに対する確認であり、バリデーションは継続的なプロセスに対する保証を与えるものです。
そして、バリデーションとして正しいことを保証するということの意味は、各段階で全て正しいことを実施したのだから得られる結果も正しいのだろうという考えでプロセス全体を通じての保証を行うということです。
このためには、定義・設計・証明・文書化ということが必要になります。
アメリカの連邦食品医薬品局(FDA)では、プロセスバリデーションを「特定のプロセスが予め定められた仕様や品質条件を満たす製品を、一貫してつくることを証明する文章を整備すること」として定義しています。
このようにベリフィケーションとバリデーションという言葉は違う意味を持っているので注意しましょう。
臨床試験データにおけるベリフィケーションとバリデーション
臨床試験データでは、ベリフィケーションとは読み合せなどにより症例報告書とコンピュータデータの整合性を確認し、間違いがないことを検査により確認することです。
この場合には、どんな過程を経てきたかということは問題にされないため、現在の状態が正しいことだけが確認され、別の臨床試験データについても正しいということを保証できる再現性はありません。
これに対して、バリデーションとは正しい臨床試験データを得るためにやらなければならない手順を定義し、その通りに間違いなく実施したことを証明することにより得られた結果が正しいとする、プロセスとしての保証をすることです。
このため、バリデーションの一つの行為としてベリフィケーションが含まれていることもあります。
このように、バリデーションされたプロセスに則って作業をする場合には、新たに得られた臨床試験データに対しても正しいことを保証することができ、再現性があります。
そして、再現性があるということが、バリデーションがベリフィケーションよりも大きな意味を持つのです。
また、バリデーションは継続的に行われる活動でなければならず、一度バリデーションが行われて終わりというものではありません。
すなわち、何らかの要因が変化した場合には再度のバリデーションを行うことが必須であり、ユーザーへの教育へ定期的な再確認も要求されます。
求める品質を持った製品が常に生み出されるようにすることがバリデーションの目的です。
品質保証とプロセス管理
品質保証においては、プロセス管理が常に行われるべきであり、ベリフィケーションは必要な時に行えばよいとされています。
ベリフィケーションでは必ず確認ミスが発生する可能性があり、全数検査をしてもエラー率を0にすることはできません。
エラーが発生する余地がある限り、ベリフィケーションは行うべきであるが品質保証としては不完全です。
さらに検査にはかなりの時間と労力がかかるため、生産性の低下からコストアップにつながる可能性があります。
このため、プロセス管理を行うことによる方法、すなわちバリデーションが求められています。
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