数学的確率・経験的確率・ベイズ確率|理論的確率と多数回経験した事象から推定される確率【統計学・統計解析講義基礎】
数学的確率が理論的確率であるのに対し、経験的確率は多数回経験した事象から推定される確率。過去に経験した事象を将来予測に活用したものがベイズ確率
数学的確率とは
いわゆる確率といった場合には、数学的確率を指すことが多いといえます。
コインを投げて表が出る確率、裏が出る確率はいずれも1/2です。
また、サイコロを振って特定の目が出る確率は1/6です。
これらは、要素となる事象が同じくらいの確からしさで起きるとう前提のもとに成り立っています。
そして、これを否定する理由は全くありません(理由不十分の原理)。
これがいわゆる数学的確率です。
経験的確率とは
一方、経験的確率というものもあります。
先のコイン投げの例では、コインを一万回投げると、表と裏がちょうど5千回ずつ出るでしょうか。
それは滅多にないことですよね。
でも、表も裏も5千回に近い値にはなります。
4976回かもしれないし、5083回かもしれない。ちょうど5000にはならなくても、5000に近い値にはなりますよね。
この、4976/10000とか、5083/10000とか、多数回経験した事象から推定される確率が経験的確率です。
気象観測は長年行われていますので、過去のデータを多数調べることで、たとえば8月上旬に台風が何個上陸するかという平均値を得ることができます。
大規模な気候変動が起きない限りは、その平均値を使うことで、稲が被害を受ける確率を計算して災害に備えることができるでしょう。
プロ野球選手の数字にしても、過去の履歴データをもとに、打率の高い選手を先頭バッターに、送りバント成功率の高い選手を2番手に、長打率の高い選手を3,4番にといった、確率をベースとした作戦を立てます。
このように、多数回経験した事象から推定される確率のことを、経験的確率と呼びます。
経験的確率は、私たちには分からない未知の要因によってランダムに現れてくる現象から来るものです。
得られる数字も幅、つまり不確かさを持ちます。
しかし、そのような限界をもつ数値であっても、よく吟味して活用することはきわめて有用なことです。
経験的確率の考えをさらに深く掘り下げると、もっと積極的に過去の事象を将来予測に活用しようという立場も現れてきます。
ベイズ確率とは
じゃんけんを例にとると、相手が出す手は3種類のうちのひとつだから、どの手も1/3の確率で出ると考えるのではなく、相手の過去の実績から、「くせ」を判断して、より積極的に確率を評価していくという戦略を想定するとよいのです。
その場合、初手に関してはどの手も1/3という予測を行うものの、その後は成り行きに従って確率の値は変化します。
何回か行って、相手がグーを出すくせのある人であるとわかればそのくせも考慮に入れます。
このような立場にたって考えられた確率は、ベイズ確率と呼びます。
ベイズ確率は、近年のIT技術においてもスパム(迷惑)メールの判定に活用されるなど、近年になって大きな進展を見せています。
ベイズ統計の分野は、今新しい発展を見せ注目されている世界です。