尺度についての方法論的または測定値の性質

第二の問題は，その尺度についての方法論的または測定値の性質(measurement characteristic)に関するものである．

例えば，死亡率のように単一の指標を使用する場合がある．

死亡は，その確認についてほとんど疑いがなく，通常は正確かつ完全に記録されることから，しばしば「頑健(hard)」なエンドポイントとされている．

しかし，死亡率を健康アウトカムの「ゴールドスタンダード」として用いることは，健康アウトカムの標的を切り替えたという事実を無視することになるだろう．

求められるアウトカムは生存率だけではない．

我々は.母集団が病気にかかっておらず．障害がなく，良好なＱＯＬであることを望んでいる．

このように，死亡率は，医療において多くの人が望ましいアウトカムとしていることを測定していないので，健康状態の変化に対する敏感な指標ではない．

総合的指標(composite measure)が，政策モデルを作り出すとの同様に健康変化を評価するために必要である．

測定値の特性については, AIMS (Arthritis Impact Measurement Scales, 関節炎の影響測定尺度). FLI(Functional Life Index)38のような指標で表される．

得られるデータは，各領域を個別にまとめた１つのプロファイルとして要約することができる．

疾病影響プロファイル(Sickness Impact Profile, SIP）は．この型（健康プロファイル型）の尺度の１例である.

第三の考慮すべき問題は，応答の「重み付け」の決定である．

測定値がいくつかの構成要素をもつ場合，相対的な値をそれぞれに割り当てる必要がある．

重みはデルファイ法あるいはコンセンサス方式を用いて研究者が割り当てる．

あるいは，高いスコアを得た項目の応答の頻度に基づいて重みを付けることもできるであろう．

また．回答者の選考に基づいて決めることも可能である.

SIPは，頻繁に用いられる優れた健康関連QOLプロファイルであり．健康関連測定値のためのゴールドスタンダードとなっている．

この指標の目的は，疾患が個人の行動（動作）に及ぼす影響を説明し，定量化することにある．

そして，患者の管理や医療プログラムの計画に用いられる医療アウトカムの測定に利用される.

SIPは，疾病に関連した行動の変化の記述(descriptor)を得るために，健康な人々．および病気の人々への面接（調査）によって作成された．

疾病(sickness)は，体調が良好な状態から病的な状態へ変化することによって，日常生活や感情が影響されることに由来する，

病気の個人の経験を意味する活動のカテゴリーが決められ，行動を説明する文言(statement)は各カテゴリーに基づき列挙された.

これらのカテゴリー（睡眠／休息，食事，仕事．家事，レクリエーション／余暇，歩行，移動性，整容，社会とのかかわり，覚度(alertness),情動行動(emotional behavior).コミュニケーション）が選択された．

カテゴリー内の文言には「突然笑う，突然泣く」，「歩く距離が短い，しばしば立ち止まって休息する」，「働いていない」などが含まれている．

回答者は，自分の状態を説明している文言にのみチェックした. 100人の審査員が質問をレビューし，各項目に相対的な重症度を表わす重みを与えた．

また．各々のカテゴリーは個別にスコア化された.

SIPスコアと，多くの疾患と他の健康指標の基準変数との相関は．ほとんどのカテゴリーで0.5であった．

また．信頼性（試験・再試験と内的整合性）は非常に高かったりした.