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比と割合の統計学【統計解析講義基礎】 | 統計解析 - Python・R・エクセルを使った講義で最速マスター

比と割合の統計学【統計解析講義基礎】

比と割合の統計学【統計解析講義基礎】


比と割合の統計学【統計解析講義基礎】

 

心臓が収縮するたびに、心臓内に充満した血液の何割くらいを大動脈の中へ送り出しているのかを示す指標があります。

 

6割以上が正常とされ、それ以下の場合は心臓の収縮機能が低下していると判定されます。それを「左室駆出分画」という医学用語で表します。

 

英語のleft ventricular ejection fraction(LVEF)の訳です。

 

このLVEF指標は、

 

LVEF=1回拍出量÷左室拡張終期容積

 

つまり、肺静脈から左心室に流入して充満した血液量(左室拡張終期の容積で表される)に対する左心室から拍出される血液量の割合で定義されています。

 

日本の専門書では、「左室駆出割合」、「左室駆出分画」という難しい訳語が使われていますが、「左室駆出率」と訳されることも多いです。

 

ここで率の使い方ですが、同じように、選挙の全有権者に対する投票に出かけた人の割合や、野球の全打数に対するヒットの割合に対しても、一般には投票率、打率と、割合でなく率が使われます。

 

実は率の使い方って、本来は違うのです。

 

長年使い慣れている言葉は別として、新しく医学の分野に登場した概念については、内容を正しく理解しておかないと混乱が生じかねません。

 

とくに似通った指標が多く使われる疫学、人口統計、臨床試験などの分野では、あらかじめ共通の理解がないと議論がかみ合いません。

 

比と比率

 

英語のratioに対応します。

 

例えば「性比」は英語ではsex ratioです。

 

もともと「比」は広い意味では一つの量Aをもう一つの量Bで除した商(A/B)ですが、医学ではもっと限定して、たとえばある集団の性比(=男性数/女性数)のように、分母のメンバーと分子のメンバーが共通でない(排他的)ことを要求することが多いのです。

 

17世紀にJ.グラント(J.Graunt)は、教会の洗礼の記録を焼く27万例調べて、出生時の性比が1ではなく、1.068と男児の方が多いことを発見しました。

 

現在でも出生性比は人種を問わず、ほぼ1.05前後になることが知られています。

 

比は対象集団の一方を基準にして、他方がその何倍であるかを知りたいときには便利ですが、それぞれが全体の何%を占めるかを知りたいときには、「割合」の方がわかりやすいです。

 

ところで、「比率」というのもありますが、比と率とは似ていて紛らわしいです。

 

しかし、「率」の内容はこれまで述べた「比」や「割合」と同じ場合が多いです。

 

いくつかの量をまとめた実用上便利な尺度を作り、指数(index)とよんでいます。

 

これもまた「比」のかたちをとる場合が多いです。例えば肥満の度合いを表す指標として、肥満指数(BMI)があります。これは、

 

BMI=体重(kg)/身長(m)2で与えられます。

 

割合

 

分子が分母の一部から成り立つようなかたちの比の一種を、とくに「割合」と定義しています。

 

英語ではproportion、fractionに対応しています。

 

男女の出生数を比較するにあたって、性比というかたちではなく、全新生児人口(男児+女児)に占める男児数とう割合での表示法が考えられます。

 

男子割合は男子数の全対象集団内の「相対頻度」(relative frequency)(たとえば%)ということもできます。

 

割合とか相対頻度は、分母と分子の次元が等しいので単位に次元がなく、その定義から値が0と1との間に限られるという特徴があります。

 

なお、英語では1人2人と数えられる対象に対してproportionが、また体積や重さのように数えられない対象に対してfractionが使われています。

 

冒頭で述べたLVEFや、体重に対する心重量などが後者の例です。

 

日本語では、いずれも「割合」が使われることが多いですが、冒頭の例のように、分画が使われることもあります。

 

胸部単純レントゲン像で、胸郭の幅に対する心臓陰影の幅の割合は、両者が排反でなく共通部分があり、前者が後者を含むので「心胸割合」と呼びたいところですが、昔から日本語で、「心胸比」、英語ではcardio ? thoracic ? ratioとして使い慣らされています。

 

比、比率、割合、分画、率の使用は、これまでみてきたように、定義よりも慣習や語呂に依存することが多いです。

 

利用に先立って、その内容を今一度吟味して混乱しないようにしましょう。

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