研究デザインの形態の概要【統計解析講義応用】

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研究デザインの形態の概要|【統計学・統計解析講義応用】

研究デザインの形態の概要【統計解析講義応用】


目次  研究デザインの形態の概要【統計解析講義応用】

 

 

研究デザインの形態の概要

 

量的研究デザインは,数多くの次元でさまざまである。

 

互いに独立している次元もある.たとえば,実験デザインが,横断的か縦断的かというように.

 

一般に,量的デザインに共通することが1つある.それは,かなり構造化した傾向にあるということである.

 

典型的な量的研究では,研究者は,介入の性質,比較の性質,外生変数のコントロールにもちいる方法,データ収集の時期,研究の場と環境,そして参加者に与える情報を特定化し,すべて,1片のデータを収集する前に詳述している.

 

ひとたびデータ収集が進みだすと,研究デザインの変更はめったに行われない.

 

質的研究の研究デザインは,もっと流動的である.

 

質的研究者は,データが収集されるに従ってわかってくることに敏感に反応して,慎重に変更することが多い.

 

対象間と対象内デザイン

 

前述したように,量的研究デザインでは比較を行うものがほとんどである.

 

比較は,別々の集団間で行うことが多い.

 

たとえば,ハイリスクの女性における乳がんの罹患率をタモキシフェンが減じるという仮説を,タモキシフェン投与を受けた女性と,そうでない女性とを比較することで検証できる.

 

この例では,タモキシフェンの投与を受けた人々と,投与を受けていない人々は同じではない.

 

別の例では,男性と女性の痛みの耐性に関心があるとすれば,比較する集団は明らかに異なった人々となる.

 

このかたちのデザインを,対象間デザイン(between-subjects design)という.

 

対象間デザインをもちいた研究の例

 

ナンタイスースミスら〔Nantais-Smith et al., 2001〕は,母乳育児をした女性とそうでない女性を比較し,産後12か月の時点での血漿と乳頭吸引カロチノイドにおける相違を検証した.

 

同じ研究参加者での比較が望ましいこともある.

 

たとえば,看護介入の前後での患者の心拍数を研究したい場合や,2つの異なる体位で寝ている患者の下部背部痛を比べたい場合である.

 

これらの例は,どちらも対象内デザイン(within-subjects design)を要し,2つの状態,または2つの時点で,同じ人々を比較する.

 

比較の性質は,使用される統計学的検定のタイプに関係する.

 

対象内デザインをもちいた研究の例

 

ヒル,カーコフスキー,ガルシア〔Hill, Kurkowski, &Garcia, 2000〕は,授乳における早産児の吸啜パターンに,囗の支持(頬や顎の支持)がもたらす効果について検証した.
支持ありと支持なしの2つの条件下で20人の早産児を観察した.

 

時間の次元

 

ほとんどの研究は,ある一時点でデータを収集するが,以下の4つの状況は,複数の時点でデー夕収集を行う研究デザインに該当する.

 

1.時間に関係した過程を研究する:ある研究問題は,とくに時間経過とともに展開するような現象に焦点をあてる(例:治癒,学習,常習性,身体的成長).

 

2.時間の順序性を判断する:現象の順序性を判断することが重要な場合もある.たとえば,不妊の結果,抑うつにいたると仮定するならば,抑うつが不妊の問題に先立っていないと判断することが重要であろう.

 

3.時間経過に従って比較を展開する:時間経過とともに変化が生じたのかどうかを判断するために,研究を行うこともある.たとえば,10年問にわたって,10代の喫煙行動の傾向を描写することに関係する研究もあろう.もう一例としては,介入が,短期的にも長期的にも効果をもたらすかを検証する実験研究もあろう.

 

4.研究のコントロールを強化する:量的研究のための研究デザインでは,結果の解釈可能性を高めるために,複数の時点でデータを収集することもある.

 

たとえば,いくつかの介入の効果に関して2つの集団を比較するとき,介入前にデータを収集することで,研究者は,集団問のもともとの差を発見し,コントロールできる.

 

研究は,時間をどのようにあつかうかによって分類することが多い.主な区別に,横断的デザインと縦断的デザインがある.

 

 

横断的デザイン

 

横断的デザイン(cross-sectional design)は,ある特定の時点でデータを収集する方法である.

 

研究する現象は,データ収集の時点で把握できるものである.

 

横断的研究は,ある定まった時点での現象の状態や,現象間の関係を描写するのに適している.

 

たとえば,閉経期の女性の心理的症状が生理学的症状と同時的に相関するかどうかを判断したい場合である.

 

横断的デザインを,時間に関連した目的のために使うことがあるが,結果はあいまいかもしれない.

 

たとえば,横断的データを使って,過剰なアルコール消費の決定要因は衝動のコントロールが低いことであるという仮説を,心理テストで測定して検証しようとする.

 

しかし,アルコール消費と衝動のコントロールを同時に測定する場合,どちらの変数がもう一方に影響しているのか,またはどちらもが影響しあっているのかについてはわかりにくい.

 

横断的データは,次の2つの状況下での時間の前後関係を推論するのにもっとも適している.

 

@1つの変数が他の変数に先行しているということを示す証拠または論理的根拠があるとき(例:学齢期児童の罹患率への低出生体重の影響を調べるのに,低出生体重が先であるということに何ら疑問がないとき),

 

A分析を導き出すしっかりした理論的枠組みがあるとき.

 

継時的に展開するプロセスについて推論できるようなかたちで,横断的研究をデザインすることもある.

 

それは,測定法が,異なる人々の展開上の異なる時点で,そのプロセスを把握する場合である.

 

たとえば,看護学生の専門職意識が,4年間の大学教育をとおしてどのように変化するかを研究するとしよう.

 

学生が卒業するまで,毎年,学生からデータを集める方法があろう.

 

これは縦断的デザインとなるだろう.

 

他方,ある一時点で4つの各学年からデータを集め,4つの学年の回答を比べるという方法という横断的デザインをもちいることもできよう.

 

新入生よりも4年生のほうが,専門職意識について高い測定値を示したとすれば,看護学生は,教育経験によってしだいに専門的に社会化されると推論することができよう.

 

この種の推論では,4年生が,仮に3年前に調査されていたら新入生と同じように答える,または逆に,新入生が3年後に調査されたら4年生と同じように専門職意識が高くなっていたということを仮定しなければならない.

 

このように,複数の異なる年齢層の比較をするデザインを,層化(コホート)比較デザイン(cohort comparison design)ということがある.

 

このような場合の横断的デザインの主な利点は,実用的なことである.

 

横断的研究は容易であり,比較的経済的でもある.

 

しかし,横断的デザインをもちいて継時的な変化を推論するには問題がある.

 

上記の例でいえば,4年生と新入生は,4年間の教育経験とは関係なく,看護の専門性に異なる態度を示すかもしれない.

 

現代社会は,社会的にもテクノロジーの面でも驚くべき変化が起こっているので,年齢層の違う集団についての行動,態度,特性にみられる差を,コホート差,または世代の差という結果ではなく,時間経過による結果であると仮定するのは疑わしい.

 

変化を研究するためにデザインした横断的研究では,研究結果に対していくつかの説明が成り立つことが多く,それこそまさしく,優れた研究デザインが避けようとしていることである.

 

 

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