臨床試験(Clinical Research)の定義|【医療統計学・統計解析】
臨床試験(Clinical Research)
人間は病気を克服するために多くの時間を費やしてきた.
遥か昔,病気の原因が定かでなかった頃には,呪術的な方法での治療なども試みられた.
しかしながら,時間の経過とともに,病気に対して実際に有効な様々な治療法が適用されるようになった.
このような治療法の発見は,多くの体験的な積み重ねから生まれてきたものである.
そして,治療法としての一つの手段が薬である.
たとえば,ある病気に対してある草を服用して回復したという事例が何度も積み重なって,その病気にはその草が効くのだという発見と評価がなされ,その草が薬草であると判断されたわけである.
もちろん,病気の原因の解明とともに,有効な治療手段として考えられる薬による治療は飛躍的な進歩を遂げることになった.
けれども,体験的な積み重ねだけでは本当に有用な薬物を適切かつ迅速に評価することは困難である.
系統的な検討により,初めて効率的に薬物を評価することができるのである.
このような検討は広く臨床研究(Clinical Research)と呼ばれる.
「臨床試験(Clinical Trial/Study)」とは臨床研究の一つの方法であり,系統的な検討によって,薬の候補物質が本当にヒトに投与して期待される有効性と安全性を示すことができるかどうかを科学的に検証するためのものである.
そして,臨床試験を行うことにより単なる事例の積み重ねにより得られる知見よりも遥かに速やかで適切な評価を行うことができる.
しかしながら,このような薬の候補物質に対する臨床試験は,人類の歴史に比べてそれほど長い歴史を持っているわけではない.
20世紀になってようやく,科学的な臨床研究が行われるようになってきたのである.
現在では医薬品は基本的に行政の許可を得て流通するようになっているが,世界的に見ても第二次世界大戦より前には医薬品販売の許可を得るに際して臨床試験が行政から要求されることはなかった.
日本において公式に臨床試験が行政から求められたのは「医薬品の製造承認等に関する基本方針」が1967年に公布されて以降である.
薬はヒトの健康回復に大きく寄与する可能性を持ったものであるが,副作用が絶対に発生しないということは考えにくく,使用方法を誤ったりすれば逆に悲劇をもたらしてしまうこともあり得る.
このため,慎重に薬の有効性と安全性が評価された上で,患者に投与されるべきである.
とくに安全性については医薬品を使用した直後だけではなく,次世代への影響なども含めて極めて慎重に検討し,過去に起きた薬害と呼ばれるような問題を繰り返さないようにしなければならないことを充分に認識しておく必要がある.
実際には,臨床試験の対象は薬だけでなく,ヒトにおいて新しい医療機器や治療法,外科手術といった手技などについても実施されるものである.
つまり,ヒトに用いられ有効性と安全性を評価するための科学的で倫理的な試験を「臨床試験」と言うのである.
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