臨床試験データの品質の保証|【医療統計学・統計解析】
臨床試験データの品質の保証
臨床試験データの品質の確認とデータマネジメント報告書の作成が完了すれば臨床データマネジメント部門としての品質の保証は完了したと考えられる.
後は,第三者によりこれらの確認が成されればよい.
このため,臨床試験の完了後に行われる監査への対応もデータマネジメント部門の重要な役割の一つである.
臨床試験データに対するデータマネジメント部門自らの品質保証だけではなく,第三者により品質管理と品質保証のプロセスが適切に実施されたことを最終確認することにより本当の意味での品質保証が成り立つのである.
往々にして自ら実施したプロセス確認に対しては曖昧な部分が残る危険性があり,査察を受けることによって,これらを確認し問題がないという結果を得て初めて品質保証が完結するということである.
このように監査という第三者に全ての実施されたプロセスを示すためには,全ての業務について適切な記録が残されていなければならない.
いくら標準業務手順を定め,これに則って業務を行っていたとしても,人間のやる作業であり何らかの問題は必ずと言ってよいほど発生するものである.
とくに,このような時に取り繕って誤魔化してしまうのではなく,どのような問題が発生し,どのような対処をしたのか,さらに同じ問題が再び発生しないようにどのような対策を講じたのかということを,きちんと記録に残してあるということが極めて大切なことである.
無論,問題がなかった時は何も記録を残さなくてよいということではなく,問題がなかったことを確認できるような記録をポイントごとに残しておく必要性がある.
また,監査などに示す書類はむやみに清書し直して準備する必要はなく,実際に業務に使用したものを,そのまま示すことが肝要である.
なお,品質保証については最終確認の担当である臨床データマネジメント部門だけが責任を負うというものではない.
症例報告書について言えば,施設の医師などに直接記載や確認をお願いする臨床担当部門の方がその責任は大きい.
最初の症例報告書の記入段階できちんとしたものが作成されれば,当然,臨床データマネジメント部門での確認作業もスムーズになり,問い合わせなどの手間も大幅に削減することができる.
つまり,臨床試験に関連する全員が,臨床試験データの品質を保証しようという意識を持たない限り,真の品質保証は成し得ないのである.
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