臨床試験データの品質の確認【医療統計解析】

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臨床試験データの品質の確認|【医療統計学・統計解析】

臨床試験データの品質の確認【医療統計解析】


目次  臨床試験データの品質の確認【医療統計解析】

 

 

臨床試験データの品質の確認

 

得られた臨床試験データを固定し,集計・解析に提供する前に最終的な品質の確認を行う必要性がある.

 

原則的には,データ固定を行った段階で臨床データマネジメント部門の全ての業務は完了することになるからである.

 

そして,臨床試験データマネジメントにおいて品質の確認を行うということは,作成された臨床試験データの品質を確認し,集計・解析を行うことに問題はないことを保証することである.

 

既にここまでの段階で,臨床試験データに対して,論理チェックの実行結果およびチェックリストに基づくレビュー,粗集計による確認,読み合わせによる確認,医師などへの問い合わせ,コンピュータデータの追加・修正などの必要なステップは全て終了しているはずである.

 

このため,この段階での品質確認はそれらを繰り返すということではなく,次のような二つのステップを行うということである.

 

まず第一に,上に示したようなデータ固定までに必要とされるステップが間違いなく実施されたことを,文書など,第三者にも示すことのできる明確な根拠を用いて確認することである.

 

この意味では,データレビューに用いたチェックシートなどがとても重要な意味を持つ.

 

このような目的では,決して,きれいに清書され整えられた書類に重みがあるのではなく,実際に活用した経緯が手に取るようにわかるような書類の方が遥かに重みがある.

 

さらに,このような作業経緯を明確に第三者に説明するために,各業務段階で担当者や業務を行った日程などを適切に記録する仕組みをつくり,これらを整理したプロセス管理表のようなものを作成しておくのも一つのアイデアである.

 

次に必要と思われることが,最終成果物である臨床試験データの確認である.

 

ただし,症例報告書のレベルから再度確認することはデータレビューの繰り返しが必要になってしまうため効率的とは言い難い.

 

そこで,ここでは必須であると考えられる,症例報告書は正しいものと考えた上でコンピュータ上に入力された臨床試験データとの整合性を判定する場合の例を考えることにする.

 

症例報告書とコンピュータ上に入力された臨床試験データとの整合性(Accuracy)は,読み合わせやサードエントリーなどの方法により判定することができる.

 

そして,一定の許容エラー率,たとえば0.3%というような基準を設定しておき,エラー率がこの許容エラー率以下であった場合には,この整合性判定に合格したと判断する.

 

残念ながら,このような許容エラー率に関する基準を,科学的な根拠を伴って定義することは非常に困難であり,各組織で妥当と思われる基準を設定するしかない.

 

一般に臨床試験データについては,エンドポイントなどの重要項目とそれ以外の項目で区別して許容エラー率が決められるべきであり,重要項目については100%の完全性,すなわち許容エラー率は0%を設定すべきであるという考え方もある.

 

そして,エラー率が許容エラー率を越えているような場合には,予めデータマネジメント計画書などで定義しておいた手順に従って処理を行い,再度,整合性の確認を行うというステップを整合性判定に合格するまで繰り返すことになる.

 

この時に,予め定義しておく手順としては,究極的にはコンピュータ上のデータを破棄し,再度入力からやり直すということが望ましいのかもしれないが,これは現実的であるとは考えにくく,大丈夫だと
自信が持てるまで全例の読み合わせなどによる確認とデータ修正を行った上で,もう一度,最終の整合性判定を行うということになると思われる.

 

なお,この最終的な臨床試験データの整合性判定においては,場合によっては全例を対象とするのではなく抜き取り検査でも構わない.

 

ただし,重要項目については常に全数検査を行うべきである.

 

また,エラー率が1%以下,とくに0%以下の場合にはエラー率を保証することは困難であると言われているので,注意が必要である.

 

ある組織では,最終臨床試験データにおいて文字変数と数字変数をそれぞれ1,000個ずつ無作為に抽出して確認し,それぞれが3個以下のエラーであった場合には合格というように設定している.

 

あるいはJIS Z9015-1として定義されている計数値検査に対する抜取検査手順第1部:ロットごとの検査に対するAQL指標型抜取検査方式という手法を用いることも考えられる.

 

これは,合格品質水準(AQL; Acceptable Quality Level)を指標とした抜取検査である.

 

たとえば,1症例300項目で150症例分の臨床試験データ,すなわち45,000個のデータに対して「なみ検査(Normal Inspection)」で合格品質水準を0.25%とした本手順を適用すると,必要なサンプル数は500個で,合格判定個数は3個以下のエラーということになる.

 

もし,この臨床試験データで4個以上のエラーが発見され,臨床試験データの全てを改めて確認した後に再検査を行う場合には,同じ水準の「なみ検査」を繰り返すか「きつい検査(Tightened Inspection)」に水準を上げることになり,なみ検査については同じ条件になるが,もし,きつい検査を適用する場合では必要なサンプル数が800個で,合格判定個数は5個以下のエラーということになる.
このような臨床試験データの最終確認に合格した場合に,データ固定が行われる.

 

そして,症例一覧表や有害事象一覧表を作成するとともに,最終的な症例の取り扱いを確認するために必要な場合には問題症例一覧表なども作成する.

 

問題症例一覧表を作成する場合には,問題項目別にどの症例が該当するかというリストを作成することが多いが,同時に症例ごとに問題項目が一瞥できるような一覧表も作成しておくとよい.

 

 

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