施設での臨床データ|【医療統計学・統計解析】
施設での臨床データ
臨床試験を依頼する側での品質管理と品質保証は重要である.
しかしながら,実際には,臨床試験を依頼する側だけが意識するだけでは臨床試験データに関する品質の確保は困難である.
やはり臨床試験データが発生する現場での品質管理と品質保証も必要であり,極めて大切なものであるということができる.
もちろん,施設での品質管理や品質保証に対して臨床試験を依頼する側か介入することは非常に困難である.
けれども,施設側の状況を充分に理解しておくことはとても大切なことであり,必要に応じて協力体制をつくり上げることも可能なはずである.
そもそも施設で発生する臨床データにはどのようなものがあるのだろうか.
医療の現場では,診察,検査,投薬など多岐にわたる医療行為が行われる.
実は,医師が実施する医療行為に伴って発生するデータは全て臨床データであると考えられる.
基本的にこれらの臨床データは,医師によりカルテに記載される.
また,臨床検査データやX線などの検査結果も適宜,カルテとともに保管されており,重要な臨床データの一部である.
さらに入院時などでは,看護師による患者の容態や処置などに関する情報は看護記録,すなわち俗に温度板と呼ばれるものに記録されて保管される.
患者の氏名,年齢,住所などの基本情報は患者のプライバシーとして保護されるべき情報であり,所有権が患者に属することは当然のことであるが,それ以外の臨床データの所有権は全て医療行為を行った医師や看護師に帰属し,患者はそのコントロール権を有すると理解すべきであろう.
つまり,医師や看護師がその患者に対する診療行為以外の目的でこれらの臨床データを勝手に使用することはできず,患者の許可を得て初めて学会資料などを作成することができると考えるべきである.
また,他院への紹介状の作成などにこれらの臨床データを添付する際にも,患者の同意の下,紹介状などが作成されているはずである.
たとえ明確に臨床データを他院に開示することの承諾を得ていなくとも,患者に紹介状を書きましょうということの同意を得たことにより,暗黙のうちに患者はほかの医師への臨床データの開示も承諾したことになると考えられる.
臨床試験に参加していただいた患者の情報についても同じことが言えるため,文書による同意(Informed Consent)取得時には「モニター,監査担当者,治験審査委員会及び規制当局が原医療記録を閲覧できること.その際,被験者の秘密は保全されること, また,同意文書に被験者又はその代諾者が記名捺印又は署名することによって閲覧を認めたことになること」および「治験の結果が公表される場合であっても,被験者の秘密は保全されること」を説明することが答申GCPでは義務付けられている.
臨床試験データとは,このように施設に存在する非常に多くの臨床データの一部を,その臨床試験のプロトコルに規定された範囲で選択的に取り上げたものである.
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