統計学における治療後の生存率【統計解析講義基礎】

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統計学における治療後の生存率|【統計学・統計解析講義基礎】

統計学における治療後の生存率【統計解析講義基礎】


目次  統計学における治療後の生存率【統計解析講義基礎】

 

 

統計学における治療後の生存率(survival rate)

 

胃がんで手術をしたけど、その後何年生きられるのだろうか。

 

これは誰しも心配するところである。

 

これに答えてくれるような治療成績が出てくるようになってきた。

 

1年生存率とか5年生存率という言葉をよく聞くが、それはどのような計算をするのだろうか。

 

ちなみに医学の業界用語では、1年生存率を「いっせいりつ」、5年生存率を「ごせいりつ」などと呼ぶことが多い。

 

100人手術をして、そのうち1年以内に20人死亡したら、1年生存率は80%になることは常識的にわかるだろう。

 

しかし、そう簡単でないことが多い。

 

それはなぜだろうか。

 

100人手術をするのだが、1年後に死亡しているのか生存しているのかが不明という症例が出てくる。

 

その病院をすでに退院してしまうと、その後来院することがなくなるためである。

 

このように、生死が不明になる症例のことを「打ち切りデータ」(censoring data)とよぶ。

 

それでは、100人手術して1年後に死亡していた人が20人、生存を確認できた症例が60人、残りの20人は生きているか死んでいるかが不明だとしよう。

 

このとき、1年生存率はどのようにして求めればよいだろうか。

 

最初は100人いて20人死亡したのだから、やはり80%でよいのではないか。

 

いや、不明症例が20例あるので、それは除いて80例中20例死亡だから、60÷80 = 75%ではないか。

 

どちらも不十分であることはすぐわかる。

 

すなわち、その中間が正しいに違いないのである。

 

なぜなら、分母は80-100人の間ということは確かだからである。

 

この場合、正しい1年生存率の求め方はどうすればよいか。

 

そこで登場するのが、カプラン・マイヤー法(カプランとマイヤーという人が開発した)というものである。

 

これは、死亡または消息不明が起きるたびに生存率を計算し、それを掛け合わすという方法である。

 

大腸がん患者25人に7-リノレン酸で治療したときの生存時間データがある。

 

このデータを少し改変して、次のように30人の生存時間データとした。

 

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+記号のついている症例は、その時点で「打ち切り」になったことを示す。

 

つまり、5+は5ヵ月までは生存確認されているが、それ以降はわからず、+が付いていないデータはその時点で死亡したことを意味する。

 

カプラン・マイヤー法で計算すると

 

統計学における治療後の生存率【統計解析講義基礎】

 

表を用いてこの計算方法を紹介する。

 

打ち切りが出るたびに生存数を減らす。

 

死亡例が出るたびに生存率を計算し、その手前までの累積生存率と順次掛け合わせる。

 

1ヵ月で打ち切り例が1例あったので、生存数を1例減じて29例となる。

 

5ヵ月でも1例減じて28例になる。

 

6ヵ月目では死亡例が2例あった。

 

現在の生存数は28例なので、生存率は、

 

   26÷28 = 0.9286

 

となる。

 

9ヵ月でも打ち切りなので生存数だけ減じる。

 

10ヵ月では死亡例2例なので、9-10ヵ月の間の生存率は、

 

   23÷25 = 0.92

 

になる。

 

10ヵ月時点での累積生存率は、

 

   0.9286×0.92 = 0.8543

 

となる。

 

このようにして得られた累積生存率をプロットしたのが図である。

 

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30例中17例死亡しているが、もし打ち切り例が1例もなければ常識的方法と一致する。

 

すなわち、13÷30 = 0.4333でよいが、このように打ち切りがあるとカプラン・マイヤー法で計算した生存率はずっと低く0.2076となる。

 

打ち切り例が大変多いこともあるが、常識的方法で計算したものはかなりずれている。

 

 

メジアン生存時間

 

ところで、「手術をしてあと何年生きられるか」(余命)というときに参考にする指標がある。

 

メジアン生存時間である。

 

これは、カプラン・マイヤー法による生存率曲線において、図の縦軸の生存率50%に対応する生存時間のことである。

 

この場合は15ヵ月であることがわかる。

 

すなわち、半分の人は15ヵ月以内で死亡するが、残り半分は15ヵ月以上生き続ける。

 

この中央値をふつう「余命」の指標として用いていることも知っておくとよいだろう。  

 

 

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