基準変数の予測|【多変量解析・統計学・統計解析】
基準変数の予測
導出研究のあとで実際のまたは推定された交差妥当性の検証から,予測変数が適切に基準変数を予測したとしよう。
応用的状況における新しい被験者から得られた予測変数についての新しいデータを(たとえば。クライアント,両親,学生,就職希望者)回帰方程式に入れると、そうした被験者のまだわからない基準変数スコアを予測する。
もちろん,適切な予測であったかどうかは,その決定の結果生じる潜在的な結果も含めて、応用されたシーンにおいて分析者が決めることである。
これらの予測を目的としたMRC使用の手順について,文献に基づいて以下の例を示す。
説明は最小限に留める。結果を説明するために例を出しており. MRC分析の解釈は予測という目的に沿っているということをお忘れなく。
例1 : WAIS-R IQ の推定
Willshire. Kinsella. & Prior (1991)はMRCを使ってWAIS-RのIQスコアを基準変数とし. NARTとデモグラフイックデータ(年齢,性別,職業,教育水準)を予測変数とした方程式を導出、交差妥当性を検証した。
この調査の目的は,これらの指標が認知症の疑いのある人の知性が発症前の状態にあるかどうかを予測するために使えるかどうかの根拠を提供することであって,もしこの根拠が支持されるなら,臨床現場における最適な予測式を得ることであった。
ここではこの調査の一面だけを示すことにする。
というのは,複雑さを減らしてMRCを予測の目的に使うというわれわれの議論に関係のある点だけを強調したいからである。
基準変数と予測変数のデータは2つの被験者サンプルから集めた。
1つ目の群の被験者数は104名であり,もう1つの群の被験者数は49名であった。
使用されたMRC分析のいくつかについては,具体的な種類が明示されていなかったものの,連立または段階的なMRCがすべての場合において使用されたようである。
まず. Wilshireらは導出研究として,最初のサンプルから得たデータを使った。
このデータをMRC分析にかけたのだ。結果の回帰方程式は例2.1に示した通りである。
この式はある人のIQスコアを予測するのに特化しており,次のように計算を進めていくことができる。
@ある人のNARTスコアに0.7を掛ける。
A104.3からその積を引く。
B教育スコア(何年公教育を受けてきたか)に4.6を掛ける。
Cステップbの結果と積を足す。
重相関係数(重決定係数)はこの方程式と連動している。
これらは伝統的なα水準である5%水準で,統計的に有意である。教育スコアの線形結合を一方に,他方にIQスコアをおいたときの関係の強さを示しており。その値が0.68である。
さらにはIQスコアの分散の48%をNARTと教育スコアの線形結合によって予測可能であることを示している。
回帰方程式がすべての予測変数を使っていないことに注意しよう。
つまり,年齢,性別。職業は式にない。これらの予測変数が消えている。
なぜなら,IQの予測に対して統計的に有意な寄与をしなかったし. NARTと教育スコア以上の説明力がなかったからだ。
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