コホート研究とケースコントロール研究|【統計学・統計解析講義応用】
コホート研究とケースコントロール研究
コホート研究の短所
喫煙と肺がんの関係を知りたいとしましょう。
この関係を調べるためにコホート研究をすることを考えてみましょう。
はじめに、喫煙の有無でグループ分けします。
数年間追跡調査をして、肺がんが発生したかどうかを調べます。
すると、どのような集団を対象として調査をするのかにもよるので一概には言えませんが、ほとんどの人は肺がんになりません。
全体で1%もいないでしょう。
したがって、喫煙と肺がんの関係を調べるコホート研究をしようと思ったら、数千人では済まない規模で調査しなければならないことになります。
これはとても大変なことです。
お金も時間もかかります。
これがコホート研究の1つの短所です。
では、次に、喫煙と肺がんの関係を調べるためにケースコントロール研究をすることを考えてみましょう。
はじめに、肺がんに罹っている人(ケース)を集めてきます。
肺がんに罹っている人(コントロール)は、ケースの何万倍とかの人数ではなくて、ケースの人数に見合ったそれなりの人数を集めてきます。
それで、喫煙歴を調べればよいことになります。
よって、コホート研究ほど大規模に調査しなくてもよいことになりますね。
喫煙歴を調べればよいので、何年間も追跡調査をする必要もありません。
コホート研究と比べたら、ケースコントロール研究はお金もかからないし時間もかからないのです。
だったら、大変なコホート研究なんかやらないでケースコントロール研究だけすればいいんじゃないの、と思うかもしれません。
でも、ケースコントロール研究にも短所があるのです。
ケースコントロール研究の短所
今度は食習慣と胃がんの関係を知りたいとしましょう。
コホート研究もケースコントロール研究も、喫煙と肺がんの関係を調べるときと同様の方法で実施することになります。
ここで、ケースコントロール研究のデータ収集方法についてもう少しよくみてみましょう。
胃がんに罹っている人(ケース)と胃がんに罹っていない人(コントロール)を集めてきて、これまでの食習慣について調べることになります。
どうやってこれまでの食習慣を調べるか、については、過去の資料(記録)やインタビューに基づいて調べるしかありません。
これまでの食習慣に関する記録がある人なんているでしょうか。
ごく稀にはいるかもしれません。が、ほとんどの人にはそんな記録なんかありません。
だからインタビューして調べることになります。
でも、どれだけ野菜を摂って、どれだけ肉を食べ、魚を食べたかなんて、きちんと答えられる人はいますか?
ほとんどの人は答えられませんよね。
となると、曝露情報がどうしても不正確になりがちです。
曝露情報が不正確だと、当然のことながら研究結果も不正確なものになりがちなのです。
これがケースコントロール研究の1つの短所です。
一方で、コホート研究は、現在から研究を始めるので、曝露情報が不正確になる可能性が、ケースコントロール研究よりは低くなります。
まとめると、
コホート研究は、発生が稀な疾患には不向きであるが、曝露情報が比較的性格にとらえられます。
一方ケースコントロール研究は、発生が稀な疾患には向いているが、曝露情報が不正確になりがちだという欠点があります。
関連記事